#2 内部監査部門に集う人々 ~金融機関の場合 前編~
こんにちは、のりのりです。これまで3社で15年ほど内部監査の仕事をしてきました。今回は、主として金融機関の内部監査部門で働く人のバックグラウンドやキャリアについて、これまでの経験からお話します。
内部監査部門への異動、転職に興味のある方、内部監査ってどんな人がやっているのか?」疑問を持つ方に参考になればと思います。
なお、銀行に限らないので、行内ではなく社内と記載しています。
内部監査人になる人
CIA(公認内部監査人)資格が最近また注目されているようです。Xを見ていると会計監査人資格をお持ちとか有名コンサルティング会社出身の方とか、CIAだけではなく、CFE、CISA等の複数の資格を短期間に合格されているとか、すごい方々が目につきます。
CIAの資格取得というと、いくつかの学校が有名で合格体験記や転職体験記が掲載されています。
そうした話とは別に、出身者の経歴に注目すると、内部監査人は金融機関(銀行、証券、保険等)の出身者が多いということはあまり語られていません。
詳しくは、日本銀行の内部監査体制の整備(2019年9月)を見ていただければと思いますが、これまで日本の金融機関では内部監査の整備が、それも、IIAの基準(IPPF)に沿った体制の整備が進められました。
結果として、
CIA(公認内部監査人)の有資格者の半数以上が金融機関出身者
金融機関において内部監査部門は大きな部門
と言われています。私は、メガバンクではありませんが内部監査部門が数十人~100名超えの大所帯の金融機関出身です。メガバンクでは有価証券報告書等を見るとわかりますが、行員3万人に対して、400名以上といった具合です。
金融機関の内部監査部門で仕事をする場合はもちろん、一般の事業会社で内部監査の仕事をする場合でも、金融機関出身の内部監査人と会う可能性は高いです。
では、そんな金融機関の内部監査部門に集まってくる人はどんな人達でしょうか?
内部監査部門に集まってくる人
社内異動・公募で内部監査に
大手の金融機関の場合、内部監査部門に異動する人の年齢は比較的高いとはいえど、20代、公募で手を挙げて異動する人もちらほらいます。人事ローテーションの一環であるため、支店業務や本社の様々な部署を一度経験して内部監査部門に配属されます。
中堅社員はどちらかというと本社系(管理部署)の業務をされていた方が多いです。管理職になる際に一度他の部署を経験させるという意味で、元々の業務の専門性を生かしつつ業務管理や社内の様々な部署への知見を深めるという意図もあるようです。
さらに、年齢高め、管理職経験者の方。元々金融機関には「検査部」という部署で営業店等の業務品質のチェック、指導を行っていました。その検査の担い手になる実務に詳しい営業店の管理職経験者は多く内部監査部門にいらっしゃいます。いわゆる「支店長の上りのポジション’」と言われた所以です。ただし、内部監査の高度化を進める中で、検査的な業務は2線部門(コンプライアンス部門、事務統括部門等様々な管理部門)に移管されており、どんどん少なくなっています。
最後に、内部監査部門長や部長、担当役員等の監査部門の上級の管理職につく方々。社内の異動の場合、部門長、役員の登竜門として内部監査部門に来られる方がいます。組織全体を見回すことができるポジションとしての役割です。
転職で内部監査の専門職と転入
銀行では、中途採用される内部監査人もいます。内部監査の専門職として入行、入社するのはどのような人達かを並べて書いてみます。
CIA(公認内部監査人)、CISA(公認情報システム監査人)の資格保持者
一番多いのはCIA、CISAの資格を既に保持している人、さらに、銀行、保険等の業務経験者、コンサルティング会社等で金融業界を担当されていた方です。逆に、内部監査をやりたくてCIA資格を先に取る人はほとんどいません(いままでに会ったことはないです)。求人では、「〇〇資格があれば尚可」と記載されていますが、あくまでの監査の実務経験を優先しつつ、ある程度経験を積んでいたら資格は持っていて当たり前といった雰囲気でした。
コンプライアンス、リスク管理、システム企画・開発関係、支店長経験者等
内部監査対象の実務経験ということで、金融関係のコンプライアンス、システム企画・開発、営業店の支店長等に従事されていた方の転職者も一定程度いらっしゃいます。リスク管理業務出身の方は少ない印象です。
コンプライアンスについては、AML/CFT関係のニーズが高く、他の金融機関の本社部門で経験を積まれた方。システム関連は、ITに関する監査の比率が高まっていることから、金融機関以外の業界出身者の方も多いです。営業店の支店長等の経験者は、営業店監査の中心にメンバーになりますが、行内からの異動者や再雇用者が多いこと、こうした監査を検査として2線の部署に移管しているので、最近は少ないです。
公認会計士は?
基本的には、CIA等の保持者と同じなんですが、ちょっと別枠で記載します。転職者の中には、公認会計士資格をお持ちの方はいますが、基本的には少数です。監査は当然できるとして、プライベートの事情や事業会社への就職といった視点で転職される方が多い印象です。
また、必ずしも金融機関と何らかの形で仕事をされたことがある人も少ないですね。。。財務部門等にはいらっしゃるようですが。
転職してくるにあたって、内部監査や金融機関での実務経験等はあまり重視されず、公認会計士という資格で高評価を得られる(悪い意味ではないです)印象です、強い!!
内部監査部門に集まってから…
金融機関の内部監査部門の特徴
金融機関の場合、内部監査部門が比較的大きいため、部門内で担当が細分化されています。業務監査であっても、本社、営業所、海外事業所等に分かれたり、J-SOX、リスク管理等専門性の高い分野の専門チームがあったり、監査企画という形で部門運営や監査計画、内外へのレポーティング等を専門に行う部署があったりします。それぞれのバックグラウンド等を基に内部監査部門での配属先が決まります。社内でも転職で入ってくる人の割合が大きい部署です。
社内で異動してきた人の場合
社内の文化、人間関係、組織構造や業務プロセスを知っていることは圧倒的な強みです。ただし、内部監査業務についての知識やスキルを持っていることはまずないので、社内での研修やOJTで学んでいくことになります。
ただし、内部監査規定で1年程度は自身が配属前に関わった業務の監査に携わることはできません。この規定のとらえ方には色々あり、営業店の監査であれば、前配属先でなければよいという考え方が基本です。本社系の部署にいた場合、例えばコンプライアンス部門にいた場合、コンプライアンスの監査はできないのか?ということになります。その場合は、勉強期間として内部監査の研修を受けつつ、他の部門の監査にトレーニーとして参加したりといった形で調整をしていきます。
その他、往査に制限があるなど、監査業務につくのが難しい場合、「監査企画」という担当もあります。年間監査計画の策定や監査規定の改定等の担当ですが、往査が多い監査チームのバックオフィスとして事務全般を行っていたりします。
中途採用の人の場合
何といっても中途採用者は即戦力です。会社紹介のような簡単な研修の後、実際の監査に監査担当者として放り込まれるケースがほとんど。社内の組織構造や業務プロセスについては、配属先で説明を受けながら、また、過去の監査調書等を確認しながら身に着けていきます。
ただ、大手の金融機関の場合は、既に監査の方法が整っているので、過去に監査を行った経験があれば、キャッチアップはほとんど時間はかからないと思います。
というわけで後半に続きますが…
ここまでつたない投稿をお読みいただき、ありがとうございます。
思ったより長文になってしまったので、前半、後半と分けて記載します。後半では、金融機関での内部監査の種類や内部監査部門の後のキャリアについて、書いていこうと思います。
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自己紹介はこちらです。
https://note.com/noriko_kamiyama/n/n249bd2256f95?sub_rt=share_pw