
34【日本2024 Day 12:11月23日(土)天明鋳物 若林鋳造所@佐野市】
道の駅に立ち寄った後に伺った先が
1846年(江戸時代末期)創業の
天明鋳物の若林鋳造所の六代目の
若林美延(みのぶ)さん。



伝統工芸にもお茶にも疎い私ですが、
「天明鋳物」の言葉だけは聞いたことが
あるほど有名な「天明鋳物」。
「ここです」
と着いた先は、まさに古色蒼然とした
の鋳造所兼住居。
古いとは思ったけれど、まさか本当に
江戸時代の建物とは驚くばかりです!
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そろそろと引き戸を開けた中は、土間に
なっていて、備えられている長椅子に
座って、六代目のお話を聞かせていただき
ました。

自らお茶を入れて佐野の名物の味噌饅頭を
持ってきてくださった若林さん。
厚みのある素敵なお湯飲みに目を留めて
聞いてみると、
「私が作ったものなのです。焼きものを
やっていました。」
と、20代に数年、沖縄・那覇の
壺屋焼窯元育陶園で六代目の高江洲忠氏に
師事していたとのこと。

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その出会いというのも、東大寺の仕事をなさって
いたお父様(五代目秀真さん)がクリスチャンで
お茶の先生もしていた沖縄の牧師夫妻と出会った
と言うユニークなもの。
そのご縁で、1ヶ月のつもりで行った沖縄に
30〜40人の職人さんたちに混ざって焼きものの
修行をすること5年。
土間の片隅には、絵付けをされたシーサーは
美延さんの作品。
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毎日、ろくろを回しながら、焼きものを習得
している時に師匠に言われたのが、
「毎日作り続けていくと、物を見る目が良くなって
いき、「差」がわかるようになる。
作り続けて10年目から個性も出てきて
売れる商品が作れるようになる。」
「神は細部に宿る」とよく言いますが、
結局のところ
「どの程度の「差」がわかるか」が
神の領域。
素人目には一緒でも、その道のプロには、
違いが一目瞭然なわけです。
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沖縄での焼きものの修行の後、今度は、
京都の伏見で京釜師 三代目河田松寿のもと8年間、
茶の湯釜の製作を学び、河田家が築き上げてきた
独自の茶釜修理技法を学んだ後に、ご実家に戻り
お父様に師事しながら現在に至ります。

天明ではなく、「天命」鋳師と、「命」とするのは
天明の前に天命と言われていた地名によるもの。
自分の天命とはなんだろうと一歩を踏み出した
私がお名刺をいただいた時に真っ先に目に入った
「天命」鋳師の文字にご縁を感じました。
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茶の湯のメッカである京都で学んだ茶釜の
作鋳や修理。
美延さんのスタイルは、京都と天命の
ミックスだそう。
畳に無造作に置かれたいくつかの茶釜は
表面がツルツルしておらず、ざらざらボコボコ
としたその波の打ち方に力強さを感じます。
好みの色を出すために「漆」を
焼き付けているとのこと。
金継ぎのワークショップの通訳を通して
漆について学んだ私は、ここでも「漆」の
言葉が出て驚きました。
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美延さんの鋳師となり、後継者問題が今はない
若林鋳造所ですが、佐野一帯の1000年の歴史の中、
70軒はあった鋳造所も今は、若林さんのところを
含めてたった4軒。
高い技術を持っているご父子を見込んで
修理に持ち込まれる釜は500年も前のもの
だったり、他では修復できないものも多数
あるそうです。
新しい取り組み方として、3Dプリンターで
鋳物の型を作る会社もできている中、若林さんの
ところは、江戸時代からの砂を使っての昔ながらの
鋳型にこだわっています。
砂で作る鋳型は一度使ったら取り出すときに
壊してしまうので、同じものは作れません。
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案内していただいた車道に面した昔の母屋から
庭の奥に入ると鋳造所や他の建物が続いていて
実際の鋳造所には、江戸時代に敷き詰められた
砂が一面に堆積していて、鋳型として使われる
出番を待っているようでした。
鋳造所の左奥には、形が残ったままの鋳型が
大小並んでいて、正面奥には、2トンもの
鉄を溶かすことのできる巨大なこしきが威容を
誇っていました。







鋳型を作るための木造の「馬」と呼ばれる
ものや、見慣れないものが点在している
鋳造所に、実際の作業をしている様子は
どんなだろうと、昔に思いを馳せていました。
寝泊まりする職人さんたちも多くいたと言う
話から往時が偲ばれます。
鋳造所の右側の扉から入るコンクリート床の
作業場の方では、錫を流し込んでおちょこを
作る実際の作業を見せていただきました。




材料や温度、近隣の小学生向けの体験会
など、さまざまなお話を聞きながら、
目の前の小さいフライパンに錫が溶かされ
金属型に入れられたと思ったらあっという間に
おちょこができるのは魔法のようでした。
小型の鐘を鳴らしてくださったときは
動画を撮らせていただき、澄んだ高い鐘の音が
響くのをありがたく聞かせてもらいました。

「天命鋳物伝承保存会」を設立した五代目、
鋳造道具や資料など1453点は
栃木県指定有形民俗文化財にされたなど
後世に残すために活発に活動を続けている
のも素晴らしいです。
「神様にまつわるもの」があちこちに
目に付く、中川鋳造所。他県へお出かけ中で
五代目にお話を聞くことはできませんでしたが、
今度お話伺える機会があることを願いながら
鋳造所をお暇しました。

素晴らしい作品も載っているHPをどうぞご覧ください。
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若林鋳造所
弘化3年(1846年)創業
代表 若林秀真
〒327-0016 栃木県佐野市大祝町2398
TEL/FAX 0283-22-0454
受付時間 9:00〜17:00(日曜定休)
事業内容 鋳物の製造 古釜の修理
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