サンタさんのこと
子どもたちが小さいころ、いつか聞かれるのではないかと思っていた。
毎年、枕元にプレゼントを置いてくれているサンタさんのこと。
近所には同じ年ごろの子どもがほかに7,8人いて、
25日の朝はみんな外に飛び出してきて、
サンタさんから何もらった?と話すにぎやかな声が
うちの中まで聞こえてきた。
うちの子どもたちはそれには加わらず、
家の中でそれぞれがもらったものを見せ合うのが常だった。
ところが長女が小4の時だ。
25日に子ども天文教室があった。
市が主催する小中学生向けの理科教室で、その年は記念事業として
プラネタリウムを制作していた。
長女も市内のいろいろな小中学校の生徒とそれに参加していた。
その、子ども天文教室にサンタさんからもらった本を持っていくという。
私には何となく嫌な予感がしたが、そのまま送り出した。
帰宅した彼女は無口だった。
もう、本を手に取ろうとしなかった。
思いが壊れたのだと思った。
私は特に何も聞かなかったし、何も言わなかった。
サンタさんのことを聞かれることは、子どもの誰からもなかった。
けれど、もし「サンタさんていないんでしょ」と聞かれたら、
こう答えるつもりだった。
「サンタさんかどうかはわからないけど、
おとうさん、おかあさんと同じように
あなたを見て、気にかけている人は
必ず世界にいるよ」って。
誰かはわからないけれど、
自分のことを心配し、応援してくれる人が必ずいるということが
サンタさんを通して
幼かった子どもたちにずっと伝えたかったことだ。
そういう存在がいると信じることは、
ときに励みになり、
ときに自分を律してくれ、
ときに本当に姿を現してあなたを、私を助けてくれるから。
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