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ちょっと早い学年末
勤務している図書室の利用者は少ない。
だが大学の学期末試験の最終日が近づくと少しずつ利用者が増える。
その日が返却期限日となっていて、資料の返却や貸出延長のために学生が訪れるからだ。
そしてその日が過ぎればまた利用者は減る。
減る、というよりもゼロの日が多いのが例年なのである。
なんせ、その次の日からはもう春休みなのだから。
それが、今年はちらほら人が来る。
中には今年度最後だからと挨拶に来たと話す学生もいるのだ。
入ってくるなり
「返却ボックスに本返したんですけど」
と常連のB学科 3年Mくんが言う。
それは一週間以上前のことだったので、なんでそんなことを言うのかしらと思いながら
「ありがとう。見ました。ちゃんと処理しておきましたよ」
と言うと
「…今日でもう今年度最後なんで」
と照れ臭そうに話す。
それを言いにわざわざ⁉
私、ちょっとびっくりした顔をしてたのかもしれない。
彼は「それだけです」と照れ笑いしながら去っていった。
他日、B学科の一年生 TくんとKくん。
Tくんは開口一番
「今年一年ありがとうございました。おかげで数学の成績が随分あがりました。まだ出てないですけど」と笑う。
春休みも部活があるらしく冗談交じりに
「試合見に来てください」
と言われて思わず
「行きます、行きます」
と食い気味に返答したら
「その前にもっと試合に出るようにならなきゃだけど」
と躱されてしまった。
でもその日一日なんだかいつもよりもっと元気でいられた。
彼は去年の春に来て以来図書室の雰囲気をとても気に入ってくれて、一緒に来た Kくんを始め多くの友人やサークル仲間にこの場所のことを紹介してくれた。
そのたびごとに私が Tくんにお礼を言ったら
「じゃあもっと連れてきますね」
だって。なんて素直!
その中には同じ理系学部だけでなく文系学部の学生もいる。
彼らの中にも図書室を気に入ってくれる学生がいて、自習をしにしょっちゅう利用してくれ、そのうちの一人 M くんもまたいろいろな友達を連れてきてくれた。
わざわざ今年度最後だからと挨拶に来てくれた学生の皆さん。
去年もその前も学位授与式の日に卒業生が挨拶に来てくれたことはあり、それもとてもうれしかったが、学年末の節目に、ということはなかった。
こちらこそありがとう。
そういえば先々週はこの春に卒業して社会人となった Fくんが
「半休を取ったついでに来ました。大学には割りと来るけど、図書室が開いている時間じゃなかったから」
と顔を出してくれた。
彼もまた低学年の時は毎日のように図書室に来てくれて、学年が上がって忙しくなっていっても節目節目に顔を出してくれた忘れがたい学生だ。
ほんとうにありがたいことだ。
もし何もなければこの職場であと2回、年末を迎えることができる。
今年1年だった Tくんたちの卒業まではいられないけど、元気でがんばろう。
それに4月からまた新入生もやってくるしね。