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世界とわたしとの つながりを取り戻す ペイ・フォワード記事Vol.47

わたしはひとりじゃない!

私の世界に 色を与える言葉

皆さんは、日頃自分が考えていたことや実行していたことを、誰かが他の言葉で説明しているのを目にしたとき、「私がやっていたことはこういうことだったのか。」とやけに納得した経験はありませんか。誰かも私と同じことを考えている、そしてそれが言語化され、体系化されていることに気付く驚きと喜び。その瞬間、自分のしていることの輪郭がくっきりと浮き立ってくるように感じると共に、世界の大きな流れと自分の生活の結びつきが強くなったような氣持ちになります。

先日私はまさしくこの体験をしたのです。

女性の視点から世界をみつめる

先日福島県楢葉町で「グラスルーツ・アカデミー東北in福島」という合宿に参加しました。

大好きな友人が描いた印象的な絵


人生で初めて足を運んだ楢葉町。会場の「天神岬スポーツ公園展望の宿天神」からは、太平洋の絶景が見渡す限り広がっています。この景色と温泉と地元の方の温かい思いやりに癒やされながら二泊三日の合宿を終えました。

東日本大震災以降、放射線の課題があった楢葉町のホームページでは、モニタリング結果を確認することができるため安心です。この日も大勢の方がキャンプを楽しんでいました。太平洋に夕日が沈む頃、テントから漏れてくる明かりと地元の方たちの笑い声が、震災をたくましく乗り越えてきた福島の方たちのしなやかさを伝えてくれました。

今回の合宿を企画してくれた特定非営利活動法人ウィメンズアイさんは、そのひとらしさのねっこをエンパワーすることを大切にしています。

「グラスルーツ・アカデミー東北」(以下、アカデミー)は、東北3県(宮城、岩手、福島)の次世代を担う女性たちが集い、他者から学び、自分の経験を他者への貢献とし、みずからの成長につなげる場です。2019年に初めて参加してからというもの、自分の生き方や活動を見つめたいときに参加させていただいています。女性の視点や立場で何ができるかを女性同士で考える機会はとても貴重で、集いの後は互いを「シスター」と呼び合う、優しく温かく強い心のつながりを感じられる関係ができあがっています。


互いの魂の声を聞き合ったシスターたち


パワーウィズ Power With

今回のアカデミーのテーマはパワーウィズ。このキーワードは、アメリカ西海岸バークレーにお住まいのジョアンナ・メイシーさんの『ACTIVE HOPE アクティブ・ホープ』、『カミング・バック・トゥ・ライフ 生命への回帰 つながりを取り戻すワークの手引き』に出てくる言葉です。

この本に出会ったのは、私が2019年にアカデミーに初参加したときの講師の一人、齊藤由香さんがきっかけです。彼女はジョアンナさんの近所に住み、彼女から多くの学びを得ているアクティビストです。アクティビストとは、よりよい世界になるために足下から活動を行っている人のこと。その活動の大小に関わらず、自分なりの行動に移していれば誰しもがアクティビストです。

その齊藤由香さんが2019年のアカデミーで実施してくださったのがジョアンナさんが生み出した「つながりを取り戻すワーク」の一部です。

私はこのワークを初めて受けた際に、とても深いところで自分自身の魂や、これまでの人間社会を培ってくれた人たちや、これからの社会を引き継いでくれる未来の人や、花や、動物や、宇宙や・・・多くの力と繋がった感覚になりました。これこそが今回のテーマの「パワーウィズ」つまり、「つながる力」なのです。

「つながりを取り戻すワーク」のスパイラル

このワークでは何とのつながりを取り戻すのだろう?と興味を持たれた方には、是非とも受けていただきたいです。これは、「腹落ち体験」の最たる物です。先ほど、私のワーク初体験の際の感覚について触れましたが、私はワークを通し何か大きな物とのつながりを感じ、勇氣が湧き起こってきました。『アクティブ・ホープ』の中では、「つながりを取り戻すワーク」について「私たちが人とのつながりや、より大きな生命の織物とのつながりを取り戻すのを助ける」、そして、「私の内側にある資質を伸ばし、外側では他者とのつながりを構築することを助ける」と紹介されています。ではワークはどのような内容かというと、4つのステップを踏み、らせん状に上昇していくと考えられています。

1 感謝の気持ちを感じる
2 世界に対する痛みを大切にする
3 新しい目で観る
4 前に向かって進む

「つながりを取り戻すワーク」のスパイラル 『アクティブ・ホープ』より

アクティブ・ホープ、積極的な希望

『アクティブ・ホープ』の中で、「アクティブ・ホープ、積極的な希望とは、自分が望むものを実現する過程に積極的に参加すること」と定義づけられています。先ほどの「つながりを取り戻すワーク」のスパイラルの4つの段階は、アクティブ・ホープを構成する三つのステップでもあります。

ステップ①「現実をしっかり認識すること」(スパイラル1・2に該当)
ステップ②「ものごとがどんな方向に動いて欲しいのか、どんなことが大事にされるようになって欲しいのかという意味で、自分の望むものを確認すること」(スパイラル3)
ステップ③「自分自身を、あるいは自分が置かれた状況をそういう方向に動かすために行動を起こすこと」(スパイラル4)

今回のnoteの冒頭で触れた、「私がやってきたことに言葉(概念)を与えられることで世界に浮上してきた感覚」は、このアクティブ・ホープの3ステップの過程を学ぶ中で生まれたのです。

自分を癒やすことと世界と癒やすこととは同時に起こる

アカデミーの中で何度となく話された、大切な概念。それは、「世界の痛みを自分の痛みとして感じ、世界を癒やす行動を取ることで自分自身も癒やされる」ということです。
もちろん、自分自身が幸せになることは世界が平和になるための第一歩ともいえます。でも、自分だけが幸せになったことは、世界が幸せになったことと同義にはならない気がします。やはり、世界の幸せに向かって自分ができる範囲で行動することが、自分自身の幸せにも繋がっているように思えるのです。世界のいろいろな悲しい、恐ろしい、苦しい、怒れる出来事が、自分の行動で少しでもよくなることで、そのことによって傷ついていた自分の心も癒やされていく。
それは『アクティブ・ホープ』の本文の言葉を借りると「与えると同時に受け取る」に他ならないでしょう。

私たちは誰もが地球上の違った場所に暮らし、それぞれが異なった関心や技能、経験を持っているので、心配に思うことも違うし、反応の仕方も違う。したがって、私たち一人ひとりがその人なりの方法で世界を癒やすためにできることをする。それがアクティブ・ホープがもたらす贈り物だ。(中略)何かの役に立つということは、私たちをとても生き生きさせる。自分の人生がより意味のあるものに感じられるのだ。つまり、アクティブ・ホープを実践するとき、私たちは何かを与えるだけではなくて、同時にさまざまなものを受け取るのである。

ジョアンナ・メイシー/クリス・ジョンストン共著『アクティブ・ホープ』より

この発想は、私が「お互いさまの街」を通して学びを深める中でずっと感じてきたことと重なり、心から共感できることでした。

私が深く感じ入った概念がもう一つあります。それは先ほどの「与えると同時に受け取る」の発想の根底を支える、システム理論という考え方です。

「自己」を定める枠組みを広げてみる

ジョアンナは『アクティブ・ホープ』の中で心理学者マリリン・ブルーワーの言葉を引き合いにしています。「自己というものの定義が変化すると、それに従って、何が自分勝手で自己中心的なことかも変化する」という考え方です。
ジョアンナの支持するシステム理論において、私たちはさまざまな大きな輪の一部です。彼女は個人としての自己を、「家族/グループ」のレベル、「コミュニティ」のレベル、「人間社会」のレベル、「生物の織物」のレベルという順に入れ子のようになっていると捉えます。その多様な層の中で生きる自己を、他者と区別してしまうと、その人の行動は「自分を助ける利他的行為」か、「他者を助ける利他的行為」か、というどちらの立場に立つかを選択することになってしまいます。しかし、私たちは自己の多様なレベルの層の中で存在していると認識したとき、つまり、ジョアンナの言葉を借りると、「つながった自己」を認識し「自己という輪を拡げ」たときに、「愛、友情、忠誠心、信頼、人間関係、帰属意識、目的意識、感謝、霊性、助け合い、人生の意義など、人々が人生において最も大切と考えるもの」の多くが生まれるのだと言います。

個人の幸福、コミュニティの幸福、そして地球の幸福が、私たちの自己概念と関係している

『アクティブ・ホープ』より

私はこの発想こそが「恩贈り」や「お互いさま」の原点だと確信しました。「つながった自己」、つまり、自己を大きなうねり・エネルギー・社会・世界の営みの一部と捉えたときに、いかなるものも個人の所有物として占有することは不自然に思えます。同時に、個人がないがしろにされることは世界をないがしろにすることと同じことにも思えます。それよりも、私はこんな世界に憧れます。自分の持っていないもの・ことを知っていて他の者(物)の助けを求めたり、自分の持っているもの・特性を自覚して他の者(物)のために活用できたときに喜びが倍増する世界。この考えの行き着く先は、シンプルに「困ったときはお互いさま」なのかも知れません。

参加者が大切にしてる物をオルター(祭壇)におき三日間の研修中見守ってもらいました

「行動」について想いを深める

自分が行動をするとき どんな視点に立つか

前章では、どのような視点に基づいて思考を行動に移すかが世の中をよくしていく鍵となる、という話を続けてきました。これはアカデミーで学んだ、大切な学びの一つです。「つながりを取り戻すワーク」の4段階も、アクティブ・ホープの3ステップも「行動」に移すことを重視しています。本章では、この「行動」ということに焦点を当てて、学びを深めたり展開したりするのに役立ちそうな考え方を集めてみました。

行うことは 祈ること

私は日々の生活そのものが祈りだと捉えています。一つ一つの行いに対して、想いを込め、心を込め、できるだけ丁寧に行うこと。これは、祈りという心の中の目に見えない働きが、目に見える層に浮上してきた物だと思うからです。
ある日、行うことは祈ることだと実感したことがありました。その日は朝の日課で、玄関の掃き掃除をしていました。玄関の外をはいていたところ、いつもおしゃべりをするお隣のおばあちゃんもちょうど掃き掃除をしていました。ほうきのこすれる音が、こちらからとあちらからと聞こえてきます。

サッ サッ サッ

サッ サッ サッ

サッ サッ サッ

サッ サッ サッ

この時に、「ああ、この方も心を込めて朝のお勤めをされているな。私と同じで、氣持ちのいい朝を迎えられているのだろうな。これは言葉のない、祈りの時間、ほうきを使った二人の祈り合わせだな。」と心底思えたのです。

また、「日々の子育ては祈りと同じ」ということは直感的に納得のいくことかと思います。子どもと接するとき、そのふれあいの先には、この子どもに健やかに満ち足りて生きてほしい、という祈りを込められずにはいられません。このように、日常の行為には祈りが込められていると私は捉えています。

作業(さぎょう)のもとは作業(さごう)

仏教には、「作業(さごう)」という言葉があるそうです。

https://www.otani.ac.jp/yomu_page/b_yougo/nab3mq00000085yl.html

作業を「さぎょう」と読んでしまうと、流れ作業という言葉もあるように、なんとなく目の前を通り過ぎていくような、せわしない、心のないもののように思えてしまいます。ところが、この言葉のもとの使われ方は「さごう」と読んで「どのようにするか」に重きをおくものだそうです。行動の中に心や想い、普遍的な目的があるかが、何かを行うときに大切であるということを教えてくれます。

想い(目的)をもった行い

「なんのためにするか(目的)」や「どのようにするか(方法)」は、「何をするか」とは違った次元の話です。これまでシンクタンク(Think Tank)という問題解決を図るための考察や研究の蓄積が重視されてきましたが、近年ドゥタンク(Do Tank)という実践家たちが連携しネットワークを形成しながら具現化することに注目が集まっています。思考レベルのものを具現化する過程で、「なんのためにするか(目的)」や「どのようにするか(方法)」には「心」が関係してきます。実行者の心意氣、想い、信念、願いがはっきりとしているからこそ、行動に継続性や勢いや波及効果が乗っていくのだと私は考えています。ここ最近のnote記事でも取り上げている、元モスフードサービス専務田村さんの「感情的YES!」。これはつまり、頭の中での思考に、「そうだ!このためにやりたいんだ!」という想いが合わさったときに、「本人の内なる力」、「つながる力(パワー・ウィズ)」が己の内側から湧き上がってくるものだといえます。

調和に導く知性


視点や認識を変えてみることで、もしくはそれらが成長し視座が高くなったり、物事の捉え方が深く長期的になることで、世界の見え方や自分ができる・やりたいと思える行動が変わってくるとことは多々あります。以下の記事もその一つと言えそうです。複雑さに対応する「適応的知性」を利己的知性・環境順応型知性・自己主導型知性・自己変容型知性という4つの段階で現したこの理論は、自分の行動を世界の調和に向かわせるための指針となりえるのではないでしょうか。


まとめ~のりぱぁ、深い場所でのつながりを取り戻す~

つながりを取り戻した自己は、より大きな存在となる

私が今回のアカデミーに参加して「つながりを取り戻した」のは、自分自身の魂が大いなる存在と繋がっているという感覚です。私の真なる幸せと、過去・現在・未来の個人・社会・自然全ての幸せが相互に影響し合っているという壮大な感覚。それでいて、勇氣と希望に満ちた感覚でもあります。
この「感覚」はなかなか言葉にしづらいですが、noteでペイ・フォワード記事を書いてお互いさまの街を拡げることへ意欲が増しているの私の「行動」からその「感覚」の意味を読み取っていただけたらなと思っています。

最後に、つながりを取り戻すワークをしてくれた齊藤由香さんから私がいただいた言葉をシェアします。私が最近、「お互いさまの街」を広めていて、占有ではなく共有の概念を浸透させていきたいのだと伝えたときの齊藤由香さんからのメッセージです。

のりぱぁ(筆者のこと)、のりぱぁが目指している「共有」の概念は今の経済の感覚と全く異なる物だよ。今やっていることを続けていくと、世の中の価値観が180度変わるよ。

齊藤由香さんからもらった勇氣の出る言葉

この言葉に私がどれだけ勇氣と自信と希望をもらったか、言い尽くせません。私は腹を割って魂で語り合ったシスターたちとのつながりを胸に秘めて、自分の信じる、自分も世界も幸せな社会の創造に向かって行動をしていきます。

慈愛に満ちた齊藤由香さんからの励ましの言葉は宝物

写真提供 しおりの表紙と二冊の本の写真以外は、蒔田志保さんから提供していただきました。

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