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東日本大震災が導いてくれた命をつなぐお互いさまの街 ペイ・フォワード記事Vol.59


【お互いさまの街が生まれたFUKUSHIMA】

〈ハグさんの誕生日にお互いさまの街の原点を振り返る〉


お互いさまチケットについての研修会が10月25日金曜日に福島市で開催されます。

この日は、お互いさまチケットの考案者の故BLTカフェオーナー、吉成洋拍さん(愛称ハグさん)の誕生日。彼がこの世に生まれ、「お互いさまの街ふくしま」のコンセプトを残してくださったことに感謝を捧げる日となります。そのことを記念して、今回の記事では「お互いさまの街ふくしま」の原点を深掘りしていきたいと思います。

〈東日本大震災が揺さぶった価値観〉


日本は地震災害の多い国。だからこそ、そこから「ボランティア」が急速に拡大したり、「防災の三助(自助・共助・公助)」の考え方が浸透したりしています。

東北に住む私にとって、2011年に発災した東日本大震災は忘れられない経験です。揺れと放射線の問題の二重苦を味わった福島のみなさんも複雑な心境、苦しい経験だったと思います。そんな福島について、ハグさんが残している言葉があります。

放射能という言葉と福島が結び付けられて世界一同情にあふれた街になってしまった。だからこそ今度は「福島を世界一感謝に溢れた街にしたい」

ハグさんのインタビューより


ハグさんの想いをまとめた記事はこちらです↓

福島第一原子力発電所で起こったことで、世界中にFUKUSHIMAの名前が(ハグさんの先のインタビューの言葉を借りれば)「世界一同情にあふれた街」として知れ渡りました。同情に加え、偏見や誤解も受けたでしょう。しかし、そこから「福島を世界一感謝に溢れた街にしたい」と決意を新たにしたハグさんにはどのような想いがあったのでしょうか。実はこれはハグさんのある体験が元になっています。

〈一杯の豚汁は生き残った人だけが味わえる感謝の味〉


ハグさんが避難所での炊き出しボランティアをしている最中に体験したエピソードをご覧ください。

このおばあちゃんとの出会いで,ハグさんは繋がれたいのちの大切さ,何がなくても生きていることへのありがたさや感謝の気持ちを心の奥深くまで感じたのではないでしょうか。その後ハグさんはNPO法人チームふくしま(以下、チームふくしま)のメンバーと「福島ひまわり里親プロジェクト」を立ち上げ、理念「For you For Japan」のもと、福島を「同情の街から尊敬の街にする」と突き進んでいました。そして「No one left behind」誰ひとり取り残されない社会を念頭にいつも地域の方と関わっていらっしゃいました。

https://youtu.be/rWOA8_dxGPM


【福島ひまわり里親プロジェクト】と【お互いさまの街】は根っこが同じいのちの活動


〈福島ひまわり里親プロジェクト、スタート!〉

東日本大震災が発生し、大きな地震と津波の影響を受け福島第一原子力発電所で事故が起こりました。この事故により、発電所から放射性物質が放出し世界中でニュースになりました。この影響で「福島県はキケン」と福島県で育った農産物を買わない人が増えたり、福島県への観光客が激減したり、大きな打撃を受けました。また,お菓子をつめる仕事をしていた福祉作業所で働く障がい者の方も影響を受け、仕事がなくなり、生活に困ることになりました。そこで立ち上がったのが「福島ひまわり里親プロジェクト」(以下、ふくひま)です。
ふくひまは、全国の人々が里親となってひまわりを育て、採れた種をまた福島に送ることで福島県の雇用創出、絆づくり、防災教育につなげる取り組みです。

雇用創出:多くの人がひまわりの種を注文することで、種の袋づめや発送作業が福祉作業所で働く障がい者の方の仕事になります。

絆づくり:全国の人たちがひまわりを育て、種を福島県に送ることで全国と福島県で「つながり」が生まれます。さらに,ひまわりを見るために、福島県に観光する人が増えます。

防災教育:震災から得た経験や教訓を、多くの人に伝え続けることで,災害から自分の身を守り、未来の命をも守ります。


福島ひまわり里親プロジェクト紹介動画はこちらです

〈福島ひまわり里親プロジェクトの多様な取り組み〉

ふくひまでは具体的には次のような活動をしています。

ひまわり甲子園

2013年から開催している、里親さんと福島県内の参加者の交流イベントです。「福島を、日本を元気にしたい」という想いで、ひまわりをシンボルにして、全国・福島県でひまわりを育てる中で起きたエピソードの発表を行っています。

ひまわり結婚式

全国から送られた種が開花した約3万本のひまわり畑の中で、結婚式を開催しています。2024年は続婚式が実施されました。

種の寄贈

全国の里親さんから送られた種は、福島県内の学校・非営利団体などに寄贈されています。

本の寄贈

震災経験を元にした絵本『ぼくのひまわりおじさん』の寄贈や、この本を多言語へ翻訳した動画の配信をしています。


私も友人にお願いして、『ぼくのひまわりおじさん』をフィンランド語やマレー語に翻訳・吹き替えをしてもらいました。

~アッリによるフィンランド語の動画~

https://youtu.be/vPEdqCn5px8?si=ww00uhsLu7N_UdyB


~ハムザによるマレー語の動画~

東日本大震災というつらい体験をした福島の人だからこそ気づいたこと、学んだこと、乗り越えたことが沢山あります。チームふくしまはそれを伝えることを使命、役割という思いで活動されています。私はそれを学ばせていただきたいという思いで福島の皆さんと関わらせていただいています。

〈「お互いさまの街ふくしま」の誕生〉



ハグさんはチームふくしまで副理事⻑を務め、東⽇本⼤震災以前から福島の経営者として福島や⽇本のために尽⼒していました。「お互いさまの街ふくしま」とは、そのハグさんの行っていた数々の取り組みの総称で、困ったときはお互いさまを体感するための社会の仕組みです。「お互いさまチケット」「みんなの倉庫」「コミュニティフリッジひまわり」「お互いさまアート」など多様な取り組みがあります。


「お互いさまチケット」を導⼊している店舗では、⾒知らぬ誰かの為にチケットを購⼊することで、チケットを利⽤する⽅が無料で⾷事が出来たり、サービスを受けたりできる仕組みです。福島県内が「困ったときはお互いさま」の気持ちで溢れてほしい、という想いから始まりました。県内100店舗の導⼊を⽬指しています。そうすることによって、いつでも支え合える社会の仕組みと人々の心持ちが育っていくと考えているのですね。

〈福島から世界へ〉


OTAGAISAMAが国際語になり、世界中の人が困ったときはお互いさまの精神で支え合うように。そんな想いをいつも語ってくださるチームふくしま。その原点はやはり,東日本大震災の際に世界中の人が東北を支えてくれたことでしょう。実際にシリアと福島の恩送りが新聞に取り上げられ、OTAGAISAMAの文字が紙面を飾りました。


近年は、新たな理念「For you For Japan」「For you For next」のもと「福島ひまわり里親プロジェクト」から派生したひまわり防災検定を実施し、いのちの大切さを次世代に伝えています。また、防災検定を台湾の日本人学校でも実施するなど、福島での経験を世界の人たちに継承しています。これは福島から世界への恩贈りでもあり、一個人から未来の人類への恩贈りでもあります。世界のどこにいても皆大きないのちの源からやってきたという一体感、共有の感覚、支え合いの精神が浸透していくのが分かります。

これまでのチームふくしまの取り組みを振り返ることで、すべてが壮大な恩贈りの流れとなって未来に向かって動いているということが浮き彫りになってきました。それぞれ独立した活動だと思えていたものは、実は地中にしっかり根を張ったひまわりの花びらのひとひらひとひらだったのですね。


〈お互いさまの街ふくしまの成り立ちとこれまでの流れ〉


これまでのチームふくしまの活動の流れをまとめてみました。


2011年3月11日 : 東日本大震災発災
    ハグさんとおばあちゃんとの出会い【一杯の豚汁】

2011年5月~ 福島ひまわり里親プロジェクト

2019年~「お互いさまの街ふくしま」

2019年6月1日 : お互いさまアート アートの売上を児童養護施設に寄付
2020年2月24日 : お互いさまチケット
2020年9月 : BLTこども食堂 子どももむかし子どもも参加
2021年2月7日 : みんなの倉庫 誰でも置いていけるしもらっていける

2021年5月12日 : ハグさん逝去 

2022年2月3日 : コミュニティフリッジひまわり 安心安全保証の食料品・日用品支援
2022年3月11日 : ひまわり防災検定 次世代の命を守るいのちの教育

2024年10月25日 : お互いさまチケット研修会(ハグさんのお誕生日に)


これまでの活動をふりかえってみると、東日本大震災を契機に日本中・世界中からご支援をいただいた福島が、地元との、全国との、全世界との繋がりを大事にしながら大きな大きな恩贈りをさせていただいていることが見えてきたのではないでしょうか。
その流れの最先端、10月25日のお互いさまチケット研修会に参加していただき、福島の今を感じ取っていただけたら幸いです。




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