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反省を伝えて学んでもらう恩贈り 恩贈り記事Vol.105
私が勤めている高等学校は、今年の三月でその一一七年の歴史に幕を下ろします。昨日は、閉校記念講演会ということで、元プロサッカー選手の平山相太さんに来校していただき、高校生のためにメッセージをいただきました。今日はその中で感じた恩贈りのお話です。
平山さんの演題は「高校生の皆さんへのメッセージ~プロサッカー選手を振り返って~」。先日、元プロ野球選手の銀次さんの話も聞いた時のことを記事にしました。やはり、一つの物事を突き詰めた方の言葉は深みがあります。
https://note.com/noriko_c_o/n/n927c5ba1fd4f
ですから、プロのスポーツ選手のお話を聞くことは、生徒のとっても私にとっても楽しみなものでした。
元プロサッカー選手のふたつの反省
平山相太選手が、自身のプロサッカー選手時代を振り返った時の反省はふたつあるそうです。ひとつは、サッカー選手としてのキャリア設計。そして、もうひとつが、自分を信じる力だそうです。
ひとつめのキャリア設計について。実は、大学を中退してオランダのサッカーチームでプレーしていたときに、その先に何をしたいか考えていなかったそうなのです。それで、チームのオーナーとそりが合わなかったときに、他の選択肢もあったはずなのに日本に帰ってきてしまったのだそう。何かを始めるときに、先を見据えて、それに紐付けて考えるようにすべきだった、という反省です。これを果たすためにはこれが必要だ、という逆算思考や、大谷翔平選手が使ったマンダラシートをおすすめしていました。
もう一つの、自分を信じる力についてです。強い想いを持っている人と、目標のない人では、一日を比べただけでも行動の質が違います。それが365日だとしたら、雲泥の差になってしまいます。平山さんは、サッカー選手の長友 佑都さんや本田 圭佑さんを例に挙げ、世界のチームで活躍する、とか、絶対ワールドカップで日本を優勝させる、と目標が明確だった彼らが、どのように練習に励んでいたかを教えてくれました。
このふたつの反省を教えてくれた後に、平山さんが語った言葉が私の印象に残りました。
これを18歳のみんなに教えたから、今後の人生に役立ててください。
私は、この言葉こそが恩贈りだと感じました。それはなぜか、という話の前に、ちょっと補足説明を。
『不合格体験記』の価値!?
私が今でも記憶に残っている高校時代のエピソードがあります。私が受験生になったばかりの頃、先生方が、先輩たちの受験期の工夫や努力をまとめた『合格体験記』なるものを配布してくださいました。そして、それを配る時におっしゃっていた言葉が今でも記憶に残っています。
「本当は、『不合格体験記』の方がためになるんだけれど、それを描いてもらう訳にはいかないからね~。」
そうなんです。成功するのには、その人にぴったりの方法があるはずで、それは十人十色。成功した人のやり方が自分に合うとは限らない。
(ちなみに、私としては、たくさんの成功者にお会いして、その成功の秘訣を集めて、その中で自分に合う方法を探す方がいいと思っていますけれど・・・)
一方で、発明王トーマス・エジソンの言葉に「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまく行かない方法を見つけただけだ。」というものがあります。私はこの言葉をこんな風に読み取ってみました。多くの人が、こうしたらうまくいかなかったよ、という、うまくいかなかった体験を集約して、そうでない方法をためせば、うまくいく方法にたどり着くかもしれない、ということです。
それが、あのとき先生が言っていた「こんな勉強方法や生活スタイルでは大学に合格しなかった・・・、という不合格体験記があればいいのにね。」ということなのでしょう。同じ轍を踏まないようにするためですね。
そうはいっても、自分がうまくいかなかったと思っていることを人に伝えることって、とても勇気がいることではないでしょうか。
反省を人に伝える勇気
失敗したことを他の人に伝えることに、抵抗がある人は多いのではないでしょうか。(私もまだできないことがあります。)何か困ったことや失敗があったときに、「よし!ネタになる!」と思って、それを面白おかしく表現できる芸人さんは、失敗を笑いに変えるプロだなと思います。いや、芸人さんではなくても、人から見たら失敗と思われることを、エジソンのような発想の転換で前向きに思えればいいのですよね。
話を平山相太さんに戻します。彼は、自分がプロサッカー選手だったことに、こうしておけばもっと違う未来が待っていたかもしれない、と思っているのです。もう取り返せないことに、様々な想いがあるかもしれません。でも、それを「後悔」ではなくて、「反省」として、生徒や教員、来場者に伝えてくださいました。
プロサッカー選手にまでなった方でも、「もっとこうすればよかった」、と感じることがあるのか、と思うと、それを自分の生き方の参考にしてみよう、という人が少なからずいるはずです。これは、自分の生き方から得た学びを他の人に伝えて、よりよい生き方をしてもらおうとする、この姿勢こそが大きな恩贈りだと、私は感じたのです。
失敗も含めた先人からのバトン
最後にもう一つ、エジソンの名言を紹介します。
「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから成功なんだよ。」
と、いうことは、自分の失敗から誰かが学んでくれれば、それは成功と言えるかも!先人たちが、いろんな失敗をしても諦めずに、この時代に繋いでくれてありがとう!失敗から何かを学んで成功に変えて見せます!失敗もしながら、ね。