寄付について語り合う場をつくろう ペイフォワード記事Vol.9
寄付について語り合う機会
前回の記事で、なぜ日本人にとって今寄付に馴染みがないのかということを考えました。そして、寄付について考える機会を持てれば、寄付についての理解が深まる、ということが分かりました。今日は、寄付について語り合った経験から得た考えをまとめようと思います。
なにごとも体験から!
先日仙台のペイフォワードカフェ「Awesome Cafe」に福島県の浪江町から友人が遊びに来てくれました。初めて会った時に、ペイフォワードの話題を出したら、とても興味を持ってくださり、もっと知りたいと言ってくれて、仙台のペイフォワードカフェを体験するためにわざわざ足を運んでくれたのです。
一聞は百見に如かず。よく知られていることわざですね。それをバージョンアップさせて私の先輩が言っていた言葉がこれ。
「一見は百験に如かず」(いっけんはひゃっけんにしかず)
人の話を聞くよりもまずは自分の目で見る。そして、みるだけではなくて、自分がそれを実際に体験してみる。その体験の積み重ねから理解していくと腑に落ちる、というのですね。私の気に入っている表現です。すうみんとあややはこの日、ペイフォワードカフェを体験し、その想いをシェアしてくれました。その前に、初めてペイフォワードカフェについて知った時の話し合いの様子をシェアさせてください。
ペイフォワードカフェでチケットを利用してもらうには?
私はペイフォワードカフェを広めたいと常々思っているので、行く先々でペイフォワードや恩送りについて話題に出しています。ある集まりですうみんとあややに初めて会った時も、私が長らく考えていたペイフォワードに関する疑問に考えを出しらい、議論を深めました。そういえば、あれがキフカッション(記事Vol.8参照)だったのですね。
ペイフォワードカフェの存在を初めて知った人も、それがどんなものか想像しながら意見を出してくれました。その場にいた人たちの視点はとても情愛に溢れていて、前向きなものばかりでした。
例えば、「どうしてチケットを使いづらいとおもってしまうのだろう?」という疑問に対してはこんな意見が出ました。
次に、「どうやったらペイフォワードカフェのチケットが使いやすくなると思いますか?」という話題についてはこんな意見が出ました。
自己愛が、他者からの愛を受け取ることにつながる
こんな話をする中で、「そもそも、ペイフォワードカフェが本当に必要な人に届いているのだろうか?」という核心をついた話題に入って行きました。
ペイフォワードカフェをしていると、経済的に困っている人にペイフォワードチケットを利用してもらって支援したいのだけれど、本当に困っている人にはなかなか届いていないのではないか、ということが必ず話題になります。私はこの疑問に対して、「ペイフォワードカフェが本当に必要な人ってどんな人?」と問いなおしたいと思います。この話題の一つの突破口として、この日のキフカッションに出てきた重要だと思われる内容をシェアします。
つまり、誰かの愛を受け取るということと、誰かのために自分のできる範囲で何かをしてあげられるということはセットなんですね。まずは他者からの愛を受け取ること。そうすると、自分の善の面が刺激されて、使命を果たしたくなる、という意見が出ました。
私もついつい人に甘えるのを遠慮してしまうことがあります。こういうことは自分でやるべきではないか。相手の迷惑になるのではないか。悩むくらいなら自分でやった方がいいのではないか。など、色々な理由を考えて、人にお願することや頼ることから遠ざかることがあるのです。人との関係性を築くことと向き合うのなら、「私は与えられ、生かされていることに感謝します。だから私のできることで与えさせてください。」という感謝と謙虚さが必要なのでしょう。
こう考えると、「ペイフォワードカフェが本当に必要な人ってどんな人?」という疑問に対して、私は「わけへだてなく、だれでも」と答えたいと思います。もちろん、経済的に困っている方に食という面でサポートしたいという気持ちになるのは当然のことだし、現実問題として直視したいことです。私が言いたいのは、ひとつのペイフォワードカフェだけで経済的に困難な人にたどりつくことは難しいので、共感者を増やすということがペイフォワードカフェの大切な役割だと思うのです。この恩送りのコンセプトに共感し他人に優しくしようとする人が増えることで、経済的に、もしくは精神的に困っている人たちにきちんと届く多様な支援の方法が、じんわりと、でも着実に広がっていくのではないか、ということです。多様な人がいていいように、多様な支援の方法があってしかるべき。だとすれば、その支援の方法について語りたくなる拠点としてペイフォワードカフェが機能することも重要でしょう。
ペイフォワード精神を自分のフィールドで形に
これまで考えたように、ペイフォワードカフェは、どんな人でも他の人の愛とつながっていると実感できる場であり、経済的・精神的に困っている人に着実に支援を届けるためのアイディアを生み出す場であるといえます。
今回福島県から体験に来てくれたすうみんやあややも、地元に帰ったらこのような居場所づくりをしたいと言ってくれています。彼女たちの感じたペイフォワードカフェのよさを、自分たちらしくアレンジして形にしてもらえたらこんなに嬉しいことはありません。
ペイフォワード「カフェ」とはいうものの、ペイフォワードの精神はカフェだけで実施されるものではないのです。福島市のハグさんは、お互い様チケットが利用な場所を100件にしたい、と言っていました。美容室でも、タイヤ屋さんでも、子ども食堂でも、何にでも適用できます。
だからこそ、まずはこのペイフォワードカフェで実際に体験してもらい、その精神を感じとっていただきたい。そして、自分の生活の範囲に落とし込むとどのような形に変容できるかを考えてもらえればと思うのです。
もちろん、ペイフォワードカフェが経済的に困難な人のためにどのようにアプローチしていくかは継続的な試行錯誤が必要でしょう。今後私がペイフォワード・恩送りの現場を作っていく時に重要な視点として常に持ち続けたいと思っています。
さて次回は、実際に経済的に困っている人に直接届けるペイフォワードを実践する福島県の取り組みについてご紹介いたします。