コミュニティフリッジで直接の支援を可能に ペイフォワード記事Vol.10
この食糧を届けたい人がいる!
ペイフォワードカフェの取り組みをみていると、「食料で困っている人に本当に届いているのだろうか?」という相談を受けることがあります。今回はこの観点に対して正面から取り組んでいる、NPO法人チームふくしまによる「コミュニティフリッジ ひまわり」をご紹介します。
↓こちらは、初代「フリッジ」の公式紹介動画です。
「フリッジ」とは英語で「冷蔵庫」の意味。「コミュニティフリッジ ひまわり」(略して「フリッジ」)は、日本で初のアパートの一室を利用した「お互いさま倉庫」です。このコミュニティフリッジの特徴は、利用者も支援者も登録制になっているということ。現在、どちらの登録も100件ほどあります。なぜこのような仕組みを取り入れているのか、どんな方が利用されているのかを知るために、2代目「フリッジ」を取材させていただきました。
↓2代目「フリッジ」がオープンした際に朝日新聞に掲載されました。
安全・安心な利用を可能にする工夫
防犯対策ばっちり
「フリッジ」では、利用者の方のプライバシーを守り、安心して利用していただくための工夫がなされています。まず、入口の鍵は携帯電話のアプリを利用して解錠することになっています。また、室内にも防犯カメラやモニターが設置されています。密室の状況になるので、どんなことが起こっても対応できるようになっているのです。
他にも、利用者が人目を気にしなくていい工夫も。秘密はこちらの朝日新聞の記事からどうぞ。
支援者の登録はなぜ?
このフリッジには様々な種類の食品が集まってきます。全体の8割が現物の寄付で、残りが現金での寄付だそうです。現物での提供であるがゆえに、異物混入などに問題がないことを証明するひとつの手立てとして、支援者の登録をしてもらっています。
どんなものが提供されているの?
部屋に入ると、大量の食糧が何段にも重ねられている棚があります。奥の方にお菓子コーナーも。子どもたちが喜んでくれている様子が目に浮かびます。大きな冷蔵庫と冷凍庫もあり、お肉が提供されることもあります。
また、食料だけではなく、ジャージや中古のランドセルの提供もあります。会社で支援者登録をしている場合、自社製品をご提供くださることが多いそうです。
こんな方にご利用いただけます!
「フリッジ」の利用者として登録できるのはこのような方です。
・福島県在住で、児童扶養手当、就学援助等を受給されている親子
・福島県在住で、奨学金を受給されている学生
このような要件に当てはまる場合、下記の申込フォームから登録することで、利用が可能になります。
わが子優先の結果起こる、女性特有の問題
働いてはいるけれど、それだけでは家族を養うのに十分ではない家計状況では、わが子にかかる費用を優先し、自分にかかる経費をかなり切り詰めていらっしゃる場合があります。例えば女性であれば生理用品。男性にはあまりピンとこないかもしれませんが、「生理の貧困」というものが世界的にも顕在化してきています。同じ女性としても、女性としてなくてはならない必需品と言えます。東日本大震災当時も、生理用品が不足し不便だったそうです。しかし、日常的に生理用品代を切り詰めている方がいらっしゃる現状に心が痛みました。だからこそ、この生理用品の提供はとても意味あることだといえます。
参考 yahooニュース
「生理の貧困」ってなんだろう――言えない、買えない 問題の背景は (2022.12.22閲覧)
男性が寄付のために生理用品を買いに行ったところ、その種類に驚いたそう。女性にしか分からない悩みもあるのですね。では、このような当事者にしか分からない悩みをどうやって知ることができるのでしょうか。
利用者のニーズをくみ取る工夫
実は、利用者さんがどのようなことに困っているか、どんなものを必要としているかを記入するノートが準備してあります。そこには、感謝のメッセージや、こんなものがあると嬉しいという利用者さんの等身大の声が書き連ねてあります。「利用者さんに喜んでいただけるものをご支援させていただいている。」とこの「フリッジ」を管理していらっしゃる山田さんは語ります。
就学にかかせないランドセルや、学校指定の柄のない白ソックスや黒ソックスも置いてありました。校則などによって学校で必要な物も多種多様なので、利用者さんの声を反映して物資を提供しているようです。
どんな物資が届いたか、どんなイベントを開催するかはこちらのfecebookページを「いいね!」して最新情報を手に入れてくださいね!
利用者と支援者の繋がりは いのちをも繋ぐ
利用者さんがリクエストやメッセージを書くことができるノートの他にも、コミュニケーションツールが置いてあります。それは、利用者とフードプレゼンテーターのお互いへのメッセージが残せるメッセージボードの存在です。この場に来た利用者さんが、支援者さんの自筆のメッセージを見ることで、その存在をしっかりと受け取っていただけるのではないでしょうか。
一方で、利用者の方の中には、こまめに手紙を書いてくださる方も。お子さまがお菓子を手に取って目を輝かせていたと教えていただきました。このように、対面で合うことは叶わなくても、リアルな繋がりを感じることで、死なずに生きようと決意してくださった方もいらっしゃるそうです。
この施設を管理している山田さんは、お話の端々で「ご支援させていただいている」という表現をされていました。支援する側、支援される側、というふうに立場に優劣をつけるのではなくて、人間として心でお付き合いさせていただいてありがたい、という気持ちが感じられました。
年越しは心穏やかに迎えたいもの。現在寄付が減少気味です。皆さんのできる範囲で年末に寄付をして、新年を笑顔で迎えられる人を増やしませんか?
いつか誰かの役に立ちたい
「食」から「職」への橋渡し
この場を運営するにあたって最も大事にしていることは、利用者さんに「食」への安心を感じてもらった上で、「職」にも繋げてもらうことだそうです。
利用者さんのメッセージの中には、「今は支援してもらっているけれど、いつかは支援できるようになりたい」というものも見受けられます。だからこそ、自立するための就職情報は大事な要素といえます。そして稼いだお金で恩送りができた時に、この「フリッジ」で生まれた絆がより強固になり、また次のいのちを救うことになるのです。
子どもたちに学ぶ機会を!
「フリッジ」の今後の展望として、子どもの学びへのサポートも実施していくそうです。子どもたちがもっと学びたい!もっと理解したい!という気持ちになった時にそれをサポートすることができれば、子どもたちが自分の力で何かを乗り越えようとする態度も育まれていくのではないでしょうか。子どもは地域全体の宝。子どもたちや学生さんたちの可能性に寄り添い、親御さんたちも自分自身を大事にできるきっかけがこの「フリッジ」には溢れているように感じました。
「フリッジ」の原点「みんなの食糧庫」
この「フリッジ」と対となっているのが、BLTカフェの店頭に置かれている「みんなの食糧庫」です。(Vol.3とVol.6でも触れています。)「みんなの食糧庫」では、いつでもだれでも物資を置いて行ったり持っていったりしていい。これは、「お互いさまの街 ふくしま」の仕掛け人、ハグさんが始めた取り組みです。
ハグさんの思い描いたのは、お互いさまの街 ふくしまに、ペイフォワードの取り組みをする場所を100か所にすること。100か所が100か所の特徴を持つことで、利用者の様々なニーズに応えたり、利用者や支援者という垣根なく交流できたりする可能性が広がります。今回は、「みんなの食糧庫」とは真逆の発想の「フリッジ」をご紹介しました。
ペイフォワードカフェなどを利用して、自分でも何か始めてみたいと思った方はたくさんいらっしゃるでしょう。「フリッジ」のように、必要としている人に直接届けることができる仕組みもあるのです。今後も様々なタイプのペイフォワードの仕組みをご紹介していきます。それをご自身でできる範囲の形に落とし込んで取り組んでただけると、いのちの物語が続いていくと確信しています。
もっと知りたい場合は「コミュニティフリッジ ひまわり」で検索してみてくださいね。
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