「ブエノスアイレス」と「グランドマスター」のあいだ
この映画は、観た方もそこそこいらっしゃるのだろうか。
「ブエノスアイレス」「花様年華」のウォン・カーウァイ監督が初めてカンフーを題材に取り上げ、ブルース・リーの師匠としても知られる伝説の武術家イップ・マンの物語を描く。
(上記ホームページより引用)
"Shang-Chi"観てトニー・レオンにハマり、予告編なりインタビュー動画なりその他もろもろYouTubeを漁っていたが、ちゃんと映画を観ようと先週末から試行錯誤。
なんとか観ることのできた「ブエノスアイレス(”Happy Together”)」のメイキングドキュメンタリーである「ブエノスアイレス 摂氏零度(”Buenos Aires Zero Degree: The Making of Happy Together”)」は、昨日言及した。
若干マイナー過ぎたかな。笑
そして今日は「グランドマスター("The Grandmaster")」の感想を書いておくことにする。
色彩?
全体的に黒い。
そもそもポスターも黒い。
イップ・マン@トニー・レオンの衣装が黒い。
チャン・ツィイーだって負けてないくらい黒い。
見ての通りモノクロではないのに何故か、くっきりぱっきりとした”黒”がとても印象に残った。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のように。
この前に、前述の「ブエノスアイレス(”Happy Together”)」のメイキングドキュメンタリーを観ていたがため、その色彩の落差にはっとした。
「ブエノスアイレス(”Happy Together”)」、別に陽気な話では全くない。英語タイトルとのギャップも激し過ぎやろ。ってくらい。
ざらっとしたじめっとした陰のある色味ではあるものの、カラフルはカラフルだった。アルゼンチンはブエノスアイレスという土地柄なのか。
「ブエノスアイレス(”Happy Together”)」(1997年)&「ブエノスアイレス 摂氏零度(”Buenos Aires Zero Degree: The Making of Happy Together”)」(1999年)、そして「グランドマスター("The Grandmaster")」(2013年)のあいだには15年近い開きがある。そもそも、こんなテイストでカンフー映画は撮りませんな…
(逆に撮ったらどーなんのか興味が湧いた、たった今)
ストーリー?
カンフー映画なので、
ラスボス倒してみんなハッピー!とか、
数多いる強敵を倒して俺がテッペン!とか、
単純明快な物語なんかなと思ってた。それこそ"Shang-Chi"みたいな。Marvelお得意のわっかりやすいやつ。
ウォン・カーウァイが、そんなの撮る訳ありませんね。
1930年代の中国が舞台であり、登場人物の台詞なり、差し込まれる字幕なりで時系列が語られるものの(日中戦争勃発の辺りは心が痛まないこともなかった、日本人として)、この映画ではあまり、物語って重要ではないのかな、と。
あたかも、美し過ぎる戦いのシーンを寄せ集めたミュージックビデオのよう。
なのでこういう、戦闘シーンだけを切り取った数分程度の動画が成立するんだろう。
音楽?
「ブエノスアイレス 摂氏零度(”Buenos Aires Zero Degree: The Making of Happy Together”)」では、通底するAstor Piazzollaのバンドネオン、アルゼンチンタンゴの調べにやられていた。終始。
けれど、「グランドマスター("The Grandmaster")」の音楽って?
今までリンクはってきた動画を見直すと、打楽器をベースにした(これはこれで自分の好みだ、一応打楽器奏者のはしくれとしては)アクションシーンに寄り添うような音楽が流れているけれど、正直全く意識に上らなかった。それよりも、
冒頭、豪雨の中で戦うときの雨の音、水滴の音、
拳を交えるときの音、
衣擦れの音、
そういう効果音が何よりも雄弁に、それぞれのシーンを彩っている。
最後は完全に与太話だが、トニー・レオンとチャン・チェンのシンクロ率に腰を抜かした話を書き残しておこうか。
「ブエノスアイレス(”Happy Together”)」もそうだし、
「レッドクリフ」もそう。
ていうか、ジャパンプレミアにおふたりとも来てらっしゃる…
金城武とトニー・レオンに脚光が当たり過ぎてるけども。
そして「グランドマスター("The Grandmaster")」もそうだし、
「2046」、キムタクがウォン・カーウァイ作品に出演したこちらにも…
え、そういうもんなの?
そんなに業界狭いの?
更に、今年たまたま立て続けに観た映画に出演されている。
トニー・レオンは"Shang-Chi"
チャン・チェンは"DUNE/デューン 砂の惑星"。
同じ映画ではなかったが、観たタイミングのせいであたかも同じ映画に出てたかのような錯覚に陥った。
中国語で恐縮だがこのようなサイトも。
"奥斯卡"という単語がみえるので、今度のアカデミー賞にふたりともノミネートするか否かってニュースだろうか。
20年以上、最前線で活躍されているアジア系役者の気概を垣間見た。これからもますます、素敵な作品を届けてもらいたい。
さて、次は何を観ようか…
いや、何を観ることができるか、かな。泣
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