祖母の迷子。大切な人の老い。
81歳の祖母が迷子になった。
お盆になると祖母はお寺参りに出向く。自転車で2、30分程度。毎年、祖母ひとりで出向いていたお寺。今年、祖母はついにお寺に辿り着くことが出来なかった。
その日、祖母は朝8時に家を出たのに、お昼を過ぎても帰ってこなかった。祖母の携帯に電話をしても一向に出ない。お寺に確認しても「祖母はまだ着いていない」とのこと。猛暑の夏、5時間以上も経過している。いよいよ警察に捜索願いを出そう・・・という段階で、母の携帯に祖母からの着信が入った。
「ローソンにいる」と電話越しに話す祖母。お寺に向かっている自覚はあるものの、迷子になったことはわかっていない。母はひとまず祖母に「ローソンの店員さんに電話を繋いで」と説得。家からもお寺からも遠く離れたローソンだった。お店の方に事情を説明し、母が迎えに行くまで祖母を保護してもらい、ことなきを得た。
私はその時、祖母が迷子になったことを知らず、全てのことが終わって数日経って初めて母から一部始終を聞いた。祖母に何もなくて、本当に良かった。まずはそう思って、すぐ、哀しさが込み上げた。
祖母にはしばらく会えていない。数ヶ月前に祖母の家に行ったきりだ。その時もかなり久しぶりに祖母の顔を見たけれど、ひとまわり以上小さく丸くなっていて、髪も真っ白で、優しい声だけはそのまんまだったけれど、言葉が出るスピードがゆっくりだった。そして今回とうとう祖母は迷子になった。
老いが進むスピードは早くて、怖い。私が自分の生活に必死で、毎日をなんとかこなして、あっという間に日々が過ぎていく中で、確実に祖母の老いは進んでいた。そんなことは当然だ。わかっている、だけど、ちょっと待ってほしい。自分じゃなくて身近な人の老いを受け止めることは、思っていたより難しい。それがたとえ、81歳の祖母であっても。
大好きなおばあちゃん。その手を両手で包みたい。私は幸せに暮らしているよと伝えたい。
そして、祖母にそれが出来る日常が続いていることが、私は嬉しい。祖母は運が良かっただけだ。でもとにかく無事に帰ってきてくれて、本当にありがとう。
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