ショートショート 絵本作家
何度もダメと言われた。僕の描いた絵本は全く何かわからないらしい。いくつも出版社を訪ねたが、遂に一つも僕の絵本を出してくれる出版社はなかった。
ベンチに腰を掛けると、魂が抜けそうなくらい深いため息が出てきた。
それと同時に、僕の絵本が鞄から飛び出した。生暖かく強い風が吹いていた。春風だ。
こども「これ、なに?とんできたよ。
あ、絵本だ!」
僕はよろめきながら声のする方へ向いた。
僕「拾ってくれてありがとう。絵本は好きなのかい?よかったら読んでみて。」
こども「すき!よむ~」
ページをめくる音、こどもの息遣い、何となく楽しんでくれているみたいだ。
こども「この絵、わかるよ!怖い気持ちだ!」
僕は呆気にとられた。
僕「伝わるのかい⁉」
僕はずっと外の世界を見たことがない。視力がないのだ。
それでも、絵本を描いていたのは小さい頃に母が絵本を読んでくれたからだ。
母が、絵を見れない僕に一生懸命伝えようとしてくれるのがとても好きだった。だから、僕は僕の見てる世界を一生懸命伝えようとしていたのだ。
こども「うん!けど、よめないからよんで~」
僕「きもちのかたち みの ことは作・絵 うれしいきもちはこんなかたち…」
こども「さくらだ~うれしいね」
桜って嬉しい気持ちと似てるのか。