アトツギに想うこと
アトツギや事業承継というタグで少しずつイベントに参加したり、SNSで発信していると、少しづつ繋がりが増えてきた。
▼7月に参加したイベント
ツギノジダイ[中小企業の日 All Meetup]
中小企業や事業承継を支援するパートナー団体とともに、コロナ影響下での経営の現状や、経営改善事例、支援活動などを紹介します。後継ぎ同士がヨコのつながりを持てる1日にできたらと考えています。
▼8月には#東京せがれさんの「#東京せがれラジオ」に出演
https://open.spotify.com/show/41yN61cptMvcwASqrnqJnO
特定のタグで発信していると、人って繋がっていくもんだなと最近よく思う。
なぜアトツギにかかわっているのか
僕は家業のある家に生まれたが、社会人になってからずっと札幌で会社員をしている。兄が家業に入っていたから後を継ぐことなど考えていなかった。
家業は北海道むかわ町でしいたけ工場を運営する会社
元請け企業からのオーダーに対し、菌床を栽培~出荷するという事業を行っていた。しいたけ販売も。
転機になったのは、2018年。
家業に入っていた兄が病気で急逝した。
”家”が止まった。
兄にそろそろ家業を引き継ごうとしていた矢先の出来事で、親としては、これからどうしていくのがいいのか相当悩んだと思う。
結果として、親が選んだのは2年後の家業をやめることだった。
ここから僕も事業承継を自分事として考えることとなる。
家業をやめる
2018年の不幸から2年後に家業を終わらせるため、元請け企業との調整を始めた。オーダーの量を減らし、製造や出荷の負担を減らす。当然収入は減るが仕方がない。
2年後に借金完済の目途がついていたというのもあり、そこまでがんばればなんとかなるということで気持ちを保ち、続けることができた。
一方で僕は、家業をやめるという親の想いを聞いたものの、本当は息子に気を使い、継いでくれと言えないだけで、本心は継いでほしいんじゃないか。だとしたら、継ぐのが親孝行ではないかと考えるようになる。
親はどう思っているのか、時々会うときに探るがわからない。同時に会社員を辞めてできるか?収入は?家族は?子供の教育は?事業としての将来性は?とか自問自答し悩んでいた。
「継がないでくれ」
2019年10月
悩んだ挙句、親に「継がせてくれないか」とやっと伝えた。
すると「頼むから継がないでくれ」
親から言われたのはそんな言葉だった。
元請けからのオーダーも減り収益も期待できない、人もいない、そんな中で「お前が苦労している姿を見たくない」それが親としての本心でした。
だったら家業を終わらせる手伝いをしよう
僕の中でも覚悟が足りなかったとは思う。そんな気持ちを見透かされたのだろう。「継がないでくれ」と言われたことで、”継がない”決心がついた。
じゃあ、何かできることはないか。どのように終わりを迎えたら親は幸せなのかと考え、それが、家業の売却だった。
元請けが気にかけてくれて紹介も何社かあった。が、なかなかうまくいかない。僕ができることは都市部の情報やネットワークを駆使して還元することだと考え、知り合いの司法書士へ連絡し、
事業引継ぎ支援センターを教えてもらった。
事業引継ぎ支援センター
事業引継ぎにまつわる、あらゆる相談をお受けしています。
民間機関を活用してM&Aを実行する際のセカンドオピニオンとしても活用いただけます。
問い合わせすると、工場がある場所は「宅地」か「農地」かと聞かれる。
農地だとどうなのか聞いてみると「農林水産省の管轄となり、経産省の管轄である私たちにはわかりません」との返答。農水省の問い合わせ先も教えてくれない為、仕方なくネットで探すも、農水省のサイトには事業承継の内容は見当たらず。
結局は「宅地」だったため、事業引継ぎ支援センターを利用できることになった。
親は地元で元請けからの紹介を活用、僕は都市部で公的機関を活用というやり方で買い手を探した。
2019年から約1年の間に3社ほど視察にきたが、うまくいかず。4社目でやっと話しが進み、2020年5月無事に家業を売却、親も納得するかたちで終わらせることができた。(元請けからの紹介で売却)
家業を終わらせる手伝いをして思ったこと
①地方には圧倒的に情報が少ない
・公的機関があることを経営者は知らない
・元請けや知人に頼らざるを得ない
・会社の評価、売却の適正がわからない
・事業の転用や事業の可能性に気づかない(あきらめている)
②人材がいない
・働ける人材が少ない(若者も高齢者も)
③ロケーションの問題
・移動の問題、輸送や物流の問題がある
地方にはこれらの課題があり、解消していかなければいけないと気づかされた。
アトツギ北海道
事業承継問題に直面した中で、自分と同じように課題にぶつかっている人がいるだろうと思い、そういったアトツギの背中を押すことができたらいいなと思いイベントを行った。
最後に
僕は事業承継問題に直面し継がない選択をした。
継ぐことだけが正解ではないと思う。継がない選択をした人にも自分なりの家業との向き合い方があり、それぞれが想いを持っている。
自分の経験は些細なことかもしれないが、これを読んで少しでも参考になればいいと思うし、後押しになればいい。