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内尾紀彦のKOE BLOG-竹中雄大さんの歌の上手さの分析-

こんにちは!そらいろ耳鼻咽喉科センター北駅前院 院長の内尾紀彦です。
今日は「竹中雄大さんの歌の上手さの分析」というテーマでお話ししたいと思います。最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


Novelbright 竹中雄大さんの圧倒的な歌唱力

皆さんはNovelbrightのボーカル、竹中雄大さんの歌声をご存知でしょうか?
彼の歌唱力は本当に素晴らしいですよね。

  • 高音域でも換声点を感じさせず、声量が落ちない

  • 語尾のフェイクも抜群に安定している

その圧倒的な歌唱力で、2023年8月には「千鳥の鬼レンチャン」で10レンチャンを達成しています。採点用の歌い方で「人に聞かせる」歌い方をするには、非常に高度な歌唱技術が要求されます。本当に素晴らしいですよね。実は竹中さん、口笛の世界大会でも2度優勝しているんです。口笛と歌、この二つには何か関連があるのでしょうか?今日はその点について考察してみたいと思います。

口笛と呼吸法

口笛を吹く時の呼吸法は、医学的には「口すぼめ呼吸」と呼ばれます。これは、ストローで息を吸うように口をすぼめます。
つまり、口笛の世界選手権に出場するための日々の練習が、呼吸法の訓練になっていた可能性が考えられます。

喘息持ちでも歌える理由?口すぼめ呼吸の秘密

一方で、竹中さんは気管支喘息を抱えており、喘息が原因で声が出なくなったという報道もありました。
喘息は、

  • 気道の腫れや炎症により気管支が狭まり、声帯に十分な空気が届かないため声が枯れる

  • 慢性的な咳や呼吸困難が声帯にストレスを与え、声帯白板症や声帯結節を引き起こし、声が出にくくなる

  • 吸入ステロイドの副作用で声帯が萎縮し、嗄声が起こる

といった影響を及ぼすことがあります。
しかし、口笛で使う「口すぼめ呼吸」は、実は喘息の治療にも用いられる呼吸法なのです。

喘息治療にも使われる「口すぼめ呼吸」とは?

口すぼめ呼吸(Pursed Lip Breathing)は、気管支喘息を含む慢性呼吸障害を持つ患者さんに推奨される呼吸法です。
この方法では、息を吐く際に唇をすぼめることで気道内圧を保ち、気道の閉塞を防ぎ、肺の空気の流れを改善します。具体的な手順は以下の通りです。

  1. ゆっくりと深呼吸をする

  2. 唇をすぼめる(ろうそくの火を吹き消すように)

  3. 唇をすぼめたまま、ゆっくりと息を吐き出す(吐く時間は吸う時間の2~3倍を目安に)

  4. 呼吸が落ち着くまで繰り返す

この呼吸法は、発作時や呼吸が苦しい時に呼吸をコントロールし、落ち着かせる効果があります。また、日常的に練習することで呼吸筋の効率が上がり、息切れの軽減も期待できます。

口すぼめ呼吸は歌の土台作りをサポート

口すぼめ呼吸は、直接的に歌が上手くなるテクニックというよりは、歌唱に必要な土台を強化するトレーニングと言えます。その理由を詳しく見ていきましょう。

口すぼめ呼吸の基本

口すぼめ呼吸とは、呼気時に唇をすぼめて息を吐き出す呼吸法です。主にCOPD患者さんの呼吸リハビリテーションで用いられますが、健康な方にも様々なメリットがあります。

歌唱における土台作りへの効果

  1. 呼吸コントロールの向上:呼気をコントロールする能力が向上することで、歌唱時に安定した呼吸を維持しやすくなります。これは、歌唱全体の安定感を高める土台となります。

  2. 肺機能の改善:口すぼめ呼吸を含む呼吸トレーニングは、肺機能を改善する効果が期待できます。肺活量が増えることで、より長く安定した歌唱を支える土台が作られます。

  3. 呼吸筋力の強化:呼吸筋が強化されることで、歌唱に必要な息の量をしっかりとコントロールできるようになります。これは、力強い歌声やロングトーンを支える土台となります。

  4. 呼吸の効率化:肺の中の空気を効率的に入れ替えられるようになり、歌唱中の呼吸が楽になります。余計な力を使わずに歌えるようになるため、表現力向上への土台作りにも繋がります。

  5. リラクセーション効果:口すぼめ呼吸にはリラクセーション効果があり、歌唱時の緊張を和らげる効果が期待できます。リラックスした状態で歌うことは、良いパフォーマンスを発揮するための重要な土台となります。

実践方法

口すぼめ呼吸の正確な方法や定義は厳密に決まっていませんが、一般的には以下の方法で行います。

  1. リラックスした姿勢で座るか立つ

  2. ゆっくりと鼻から息を吸う

  3. 唇をすぼめ、ゆっくりと均一に息を吐き出す

  4. 吐く時間を吸う時間の2倍程度にする

注意点

口すぼめ呼吸は歌唱に必要な土台作りには役立ちますが、歌唱技術そのものを直接的に向上させるものではありません。歌が上手くなるためには、正しい発声法、音程練習、表現力の向上など、別途専門的なトレーニングが不可欠です。
つまり、口すぼめ呼吸は、あくまでも歌唱力向上をサポートするトレーニングの一つとして捉え、日々の練習に取り入れていくことが大切です。

以上のことから、竹中さんが喘息持ちでありながら素晴らしい歌声を披露できるのは、口笛の練習によって培われた「口すぼめ呼吸」が、歌唱の土台作りに貢献している可能性が考えられます。

今後も、歌手の皆さんの役に立てる医師でありたいと強く思う今日この頃です。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回の記事もどうぞお楽しみに!

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