第15話 いよいよ起業、勝負する業種の選び方
35歳からの起業。ただ、辞表を出すときは起業することだけ決めていて、何を生業としていくか決めていなかった。別れる仲間のためにちゃんと引継することを優先していたため、業務の合間で考えられる程度だった。退職後にしっかり考えようと思っていた。
そんな形を取れるのも理解ある妻のおかげだ。もし結婚後に起業する可能性があるなら、子供が生まれても、奥さんが仕事を続けられるように応援しておいた方がいいと思う。
さて、何をするか?の話に戻る。
多くの場合、今までいた業界の仕事で起業するのがほとんどだ。ただ、やってきた財務関係の仕事だと、どうすれば成り立つかイメージ出来る、たとえば、スタートアップのベンチャー企業の上場に向けた、財務部門のお手伝いはすぐ事業に出来る。しかしそれだと、いわゆる「独立した方が自由だし儲かる!」というパターンでしかないと思った。そもそも、お金が目的なら銀行を辞めていない。
そこで「起業したいけど何を生業として起業するか?」を迷っている方のためにも、どう考えていって、造園会社を起業することに至ったかをお話しさせていただき、少しでも参考にしていただけば幸いである。
「どんな会社を作りたいか?」と自問したのが最初の一歩だった。
「いい会社を作りたい」
当たり前でしょ! と笑ってしまうような答えだが、それがシンプルな答えだった。
では、「いい会社とは?」
「いい人材が集まっている会社」だ。
では、「いい人材が集まるには?」
「お金だけでなく、やりがいのある仕事ができる会社」だった。
では、「やりがいとは?」
「お客様の喜んでいる顔が見れる仕事」
では、「お客様の喜んでいる顔が見れる仕事とは?」
「会社相手でなく、エンドユーザーの喜んだ顔が直接みれる個人相手の仕事」
ここまでで、「個人相手の仕事」というところまでたどり着く。
次に、「どんな業種にするか?」という切り口で考えた。
そう考える背景はこうである。
35歳からの全くの異業種での起業は、始めた業種がうまくいかないからまた違う業種!と学び直す時間がない。また、本業以外に手を出すと失敗するリスクが高いことを、父の失敗や、銀行の融資担当のときに見てきた。なので、まずはどの業界でやっていくかを決めようと思った。
ソフトバンクの孫社長は、「土俵選びで勝負の半分は決まる」と言われている。
優秀な方がひしめいている業界での勝負は勝てる可能性が低い。そのころはIT起業ブームだったので優秀な人が目をつけているし、前職のコーポラティブハウスの会社にいたときに出会った若手建築士は、本当に優秀でしかも超努力家ばかりだった。
そこで考えたのが旧態依然としている業界だ。漠然とした言い方になるが、企業運営が進んでいる業界の当たり前の仕組みを、旧態依然としている業界に持ち込めば、新たに参入してもチャンスがあるのではないか?と考えた。
次に、また別の切り口でも考えた。そうは言っても、これから伸びそうな業種は何か?とも考えた。その点では、コーポラティブハウスの会社にいた時に出会ったお客様方を思い出した。コーポラティブハウスは仕組みが斬新なので、新しい時代を作っていくクリエーターの方が入居者として多かった。
その方々は、自由設計なので、インテリアは個性的で超かっこよかったが、観葉植物やベランダガーデニングも盛んに取り入れられていた。そうか! 時代を作っていくクリエーターの方が植物を注目しているなら「インテリアの次として植物は注目されていくかもしれない」と考えた。
早速、本屋に行って、グリーン業界の仕事に関わる本を買い込んで調べ始めた。グリーン業界と言っても色々ある。お花屋さん、植木屋さん、造園屋さん、観葉植物をレンタルする貸植木屋さんというのもあることを知った。
「グリーン業界」
見てきた「個人相手」「旧態依然としている業界」「新しい波の可能性」という3つの切り口の交差点にある仕事だと思った。
コーポラティブハウスの会社で、社外取締役をお願いしていた藤原和博さん(知らない方は是非検索をしてください)に退職のご挨拶でお会いした際に言っていただいた言葉も、グリーン業界に決める後押しになった。
「もし河越が金融関係の会社を起業するならまた会いたいと思わないが、グリーンの仕事をするなら、また会ってみたいと思う」
と言われた。
さあ、業界が決まった。
今度は、グリーン業界のなかで、何の仕事をするかだ。