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じむ つづき2

彼の名前はジム。当時27歳。
見た目全く典型的なオーストラリア人でね、目の上の額との間のとこがでててさぁ、すごい野性味のある顔してんの。

後で聞いたらフルネーム、ジム・クルーズだよ。
そ、それって、、、っていったら、もうそれ以上言わないいでっていわれちゃた。

うんざりするほど言われていたんだろうねぇ。

チェックイン待ちで、なんで一人なの?とか言う話をしてて、今思えば私の危うさっていうか、そういうのがわかったのかな。
しきりに心配だな~、っていってた。

でね、ときどきホテルの部屋に電話くれたのね。
今日は何してたの?
不自由はなかった?
暇にしてない?


なんかちょっとかちんときた。
暇なわけないじゃない!みたいな(笑)

やっと緊張がとけて、英語も使ってみたりして、結構楽しんでたんだ~。外国のスーパーマーケットも、ドラッグストアも、公園も、市役所も、すべてへーへーふーーーん、と見て回ってた。クラブにバーにも一人でどんどん入っていった。ケアンズ、本当に安全な町だったんだよ。

今ここまで書いて思い出したんだけど、そういえば、当時わたし3年もつき合った彼氏がいたんだった。15歳からだよ。

でもね、あのスカイダイブをした日、ね。
なーんかあってみる気になったのよね。


あったま痛くて少し寝てた。そしたら電話がかかってきてね、ちょっとおいでって。

寝てすっきりして、もう6時くらいだったかな、なんか中途半端な時間で。これで一日おわるのもったいないなって。

フロントまでおりていったらね、すううごい格好なの!
なぜかTシャツもジーンズもびりびり!
またくるまがぼっこぼこ!50歳くらいじゃねーの?って言う車。運転席の床に穴空いてて道路見えてた。

マニュアルなのに、座席に左足乗っけたまま運転すんの。
あーあの姿、まだ覚えてるよ。

車をみてぎょっとしてる私にね、
「今日はどうしてたの?」ってきくから、
スカイダイブやって興奮しすぎて頭いたくなっちゃってさぁ、
っていったら、
「うっそ!おれも!今夕焼けダイブしてきたばっかなんだよ!
あれすっげえよね!まじで!なら、おなかあんまりすいてなくない?俺も興奮しててさぁ!」
えーうそぉ!

とりあえずひとしきりダイブの話。
しかしすごいとこいったねぇ(ダイブの会社ね)、なんて言われて(笑)

自分のお家の近くの、パスタ屋さんに連れて行ってくれて。

小さなログハウスでね、手作りのお惣菜バーみたいのがあってね、
10種類以上のパスタがあったの。おいしかった。何回もいったんだ。
はじめていったときにね、小さな女の子が近寄ってきて、自分の目尻を指でニーーーンと横にのばして、「なんでこのひと(わたし)こーーんな目してんのぉ?」って聞きにきた。
しつれいな(笑)。英語はなせなくても、だいたいいってる事はわかる。それに1週間でだいぶしゃべれるようになっていた。

そしたら間髪入れずに、ジムが、
「そういう事はいっちゃいけないよ、これは彼女の個性なんだ。僕は彼女の目は美しいと思うよ。」みたいなことを、早口の英語で言ってくれた。彼女のいってる事も、彼がいった事も、私がわかってないと思ってるみたい。

にっこり笑って話を戻して、何もなかったことにしてくれた。

特のこのエピソードに意味はないんだけど、なぜか印象的でよく覚えている。

世界中色んな国を働きながら回っていて、今はちょうどオーストラリアに帰ってきて、家を買ったとこだって言うじゃありませんか。

家?

そう。今はやりたい事やってるけど、ファミリーができたとき、家を持ってない男は男じゃないでしょう?

ふーん。

旅しながらも貯金して、頭金をためて、ローンを組んだんだって。

今まで何の将来設計もないだめな男とつき合っていたので、だいぶこの辺で好きになってたような気がする。
とにかくしっかりしてたのよ、いろんなことが。
その行動力に惚れた。
家持ちってとこじゃなくてね(笑)

お家までついてくっていうのはさ、そういうの覚悟してるでしょうが。
でもね、連れて行きたいとこがあるって。
車に乗って、真っ暗、ホーントに漆黒の暗闇のなかを30分くらい走る。途中ワラビーが飛び出してきたり、色んな動物がいて。

なんかぐるぐると山を登っている。
体験した事のない暗さ。
ちょっと怖かった。

おねがい、しばらくこっちみないで。

え?と、振り向いてしまう。

あーーー!もう!頂上まで内緒にしたかったのに!

運転席の向こうに、とんでもない星空が広がっていた。
感受性のつよい18歳。
フリーズしましたわ。
話しかけられてもしばらく聞こえなかった。
頭の後ろにドンっ!と来るような衝撃だった。

私はあの景色を18歳で見れた事を本当に幸せに思う。

感動してハラハラ泣いちゃってる(かわいーなー!!私!)私に、どうしてなくの?とおろおろするジム。

ありがとう!ってとりあえず抱きついてみる。
なんだ、うれしかったのか。
ってほっとしたように笑うから、感動したのともうごちゃ混ぜになって、すきーー!!!ッと思っちゃったのよねぇ。

あぁ、思い出し切ないわ。。

その場はキスだけ。
手をつなぎながら山道をドライブして、彼のうちに戻った。
家具は冷蔵庫だけ。
ひーーろいフラット。

汚くなりようがないシンプルさ。
そこが、家族がいるいい意味で雑然とした場所になる事を想像した。
そこに自分がいる未来を想像した。

でも、いつもの私の悪い癖。
自分がワンオブゼムな気がしてならない。

昼間は、いいや、私も楽しければ、と思う。
夜は、今の間だけじゃいやだ、と思う。

その翌日、ホテルを引き払って彼のうちにいった。

彼は結構忙しかった。

でもその合間にサーフィンに連れて行ってくれたり、ツアー帰りの私を迎えにきてくれた。どこへいっても、人気者のキム。また違う女つれてるよ、なんて雰囲気はどこにもなかったけど、こういう事をしょっちゅう繰り返してても不思議じゃないもの。あれだけ日本語が巧ければ、ね。


つづく


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