W杯GK分析(グループリーグ編)
さて、グループリーグを振り返る。
印象に残ったGKはふたり。コスタリカ代表のケイラー・ナバスと、スイス代表のヤン・ゾマーだ。両チームはグループEで対峙した。
彼らにはいくつか共通点がある。ひとつは「GKの世界基準に届かない体格」だ。
185cmと183cm。どちらも世界基準では大きいGKとは言えず、日本の選手と同じくらいの体格だ。
しかし彼らには「体格を補って余りある反応の良さ」がある。これも共通点。至近距離でもことごとく止める。
そして最後の共通点は「高い準備の質」だ。これが、彼らと他のGKとの差を示すものとなる。
というわけで、果たしてどんな「準備」を行なっているのか、動画を交えながら解説していきたい(ここから動画がたくさん登場するので、通信料が気になる方はWi-Fiのあるところでご覧になってください)。
準備の質
「準備の質」というとき、それは何を表しているのか。
簡単に言えば「相手よりも先にいるべき場所に移動している」ことだ。「常に先手を取る」と言ってもいいかも。
「どこにボールが来そうか」という予測と、実際のボールと相手の移動に先立ってポジションを取る。
「ゴールに張り付いてるだけじゃないんだぜ!」というのを今からお見せする。
丸で覆われてるのがゾマー。味方DFライン(最終ライン)と呼応して上下動を繰り返しているのがよくわかる。ボールの位置が後退したら上がる。逆に前進してきたら下がる。
何のためかというと、DFライン裏に相手がボールを供給してきた時に対応するためだ。ゴールに張り付いてると、ボールに飛び出しづらくなるので、DFラインと一定の距離を保つと、飛び出すタイミングが測りやすい。
しかし今回のW杯、戦術カメラという素晴らしい視点でサッカーを見られるというので、GKの目線からいろんなことが語れる。普段のテレビだと長い間GKを見るということがなく、ボールがない時にGKがどんな準備をしているのかがわからない。だけど、今回はGKの動きが常に見られる。ありがたいことです。
スイスvsブラジルのワンシーンから。縦の視点によって「GKがどれだけ上下動を繰り返しているか」がわかる。さらに「常に先手を取り続けている」こともわかる。
ポイントは「姿勢を変えず」「ボールの移動と相手のボールの持ち方によって立ち位置を上下動させている」こと。よく観察してみましょう。
何も実際にボールへのアクションが起きる場面だけではない。準備は常に重要。それを彼ら2人は示してくれる。