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食品パッケージのデザインをした話

「25年もデザイナーをやっていたんだから、たまにはデザインに関する話も書いておこう」と、ふと思った。

数年前、あるお客様から商品(冷凍商品)のパッケージデザインをリニューアルしたいと依頼されました。

それまでのパッケージは酷く悪いわけではなかったのですが、いかんせん存在感が薄すぎた。それと個性がなさすぎた。

これでは完全に埋もれてしまうな…
商品の良さが伝わらないな…
商品力だけで売れてるんだろうな…
という印象。

聞けばデザイナーじゃなく、梱包資材屋さんが作ったものだという。
それっぽく情報が羅列してあるだけで、デザインされたものではないと感じた。
パッケージを見た限り、余白という概念も知らないようだ。

現状よりも良くすることは非常にイージーな仕事だ。

だが、私は常々お客さんに感動と喜びを提供したいと思っているので、その商品がもっともっと売れるように私が力になろう……!
そう思った。

商品パッケージをデザインまでに至る工程

まず、その商品のデザインをするために、最初に自分がやったことは、商品を実食することからはじめました。

お客様からサンプルは支給されたけどお断りして、自分でお金を払ってスーパーマーケットへ買いにいきました。

その商品のことを知らないのに、良い商品など作れないし、客としてその商品のことをどう感じるのか?
自分の感じたあらゆる印象もデザインをする上で重要なのだ。

食べてみたら、とても美味しい商品であることでわかった。
そして、他の商品との違いや個性も感じられた。
人気の理由もわかった。

マズかったらお断りしようと思いましたので安心。

次は商品の製造現場へ出向きました。
商品の製造に関わった人から直接話を伺い、その商品への理解を深めました。
実際に作る様子も見学することで、気持ちが昂ります。

私が感じた疑問点なども伺ったりして、自分が感じた商品の個性の秘密も知れた。

さらに社長さんとお酒を飲みに行って、会社や商品への理解を深め、熱い想いを知った。

仕事のことはもちろん、仕事以外でのこと、社長なのかを知ることで、何かデザインに影響を与えるかも知れないのです。

私は「会社=社長」と考えているので、ここも重要な業務だ。

この社長さん、なかなかのコワモテで私が酒を飲んで話をしたいと言ったら、驚いていた。
そんな誘ってくる人、ノリボーイさんが初めてですと言って喜んでいた。

どんな商品でどんな強みがあるのかがわかったところで、競合商品のことを調べ始めました。

もちろん競合商品も自腹で買って実食。

競合商品と比較することで、どこをアピールをすべきかがクッキリと見えてきました。

他社の商品パッケージを全て並べて腕を組み
「オレが手がけるデザインは、良いデザインになるだろうな……!!」
とまだ作ってもいないのに早くも確信。

次はスーパーマーケットの売り場へ出向きました。
1つのスーパーだけじゃなく、いろいろなスーパーの冷凍食品の売り場へ行きました。

他の商品と並んだ時、どういう風に見えるのだろうとリサーチしておきました。

果たして、ここまでやるデザイナーって世の中にどれだけいるのかな?

たぶん、こんなに一生懸命やるのはオレだけだろ!
などと若干、自己陶酔気味になってた。

どんな風にデザインしたのか?

ここでパッケージのデザインに着手‼️

ようやくかい❗️
とツッコミを入れられそうですが、ここまでちゃんとやらないと本当に良いデザインは作れないと考えます。

ぶっちゃけ、全ての仕事をこの熱量でやるわけではありません。
数万円だったら、それなりの仕事になります。

この仕事は、けっこうなギャラをいただくので、かなり泥臭く真剣にやりました。

  • 興味を持ってもらえる強いキャッチコピーを考案

  • 目立って瞬発力のあるデザイン

  • わかりやすいデザイン

  • 田舎なので、洗練されすぎていないデザイン

  • 売り場で埋もれてしまわない周囲と比較した時の関係性を考慮したデザイン

長く親しんでもらえるようなキャラクターのイラストまで描いた。
もちろん頼まれてもいない。

デザインをする前に、いろんなことをしっかりやっているので、作る時間はわりと短時間で済みました。

プレゼンしたところ、大喜びされてほぼ一発でOK。
想像以上の完成度で感動したとも言ってもらえました。

ちなみに食品パッケージは面倒なことに保健所のチェックも必要で、保健所とのやりとりもこなす。
成分表示など、けっこう決まりがうるさいんですよね。

そういうのは決まりきったことなんで難しくない。
言われた通り修正して晴れて納品。

その後の商品の売れ行きは?

あのパッケージに変えたら、すごく売れるようになりましたよ!

と社長さんから嬉しい言葉をいただけた。

正確な数字までは教えてもらえなかったけど、以前の数倍売れるようになったという。
(実際は社長さんが販路を拡大したのが大きいと思いますが)

おそらく年間1億円以上売れてると思います。
またスーパーマーケットや道の駅など、交渉する際にもちゃんとしたパッケージだと話がうまくまとまりやすいと聞いた。

自分が関わったことで売れるようになったという感覚は、とてつもない快感をもたらしてくれます。

しっかり取り組めば、そういうデザインワークができるようになります。

💡成功したポイントは…

  1. 「見栄えを美しいものにするだけで良い」という短絡的な発想をしないこと

  2. 広い視野で商品とマーケットとの関係性を把握しておくこと

  3. エンドユーザーの気持ちを深く考えること

それができると…
情報に付加価値が生まれパワーを与えるデザインを作ることができるようになります。

そして、デザインに価値を感じてくれるお客さんからの依頼であることも仕事を成功するのに重要なポイントです。

だって10万円以内の予算で、こんな仕事やれますか?
ってことなんです。
現実にはそういう仕事ばかりです。

なお、自分がやったこういう仕事をしていれば、AIが作るデザインと差別化できます。

🐰結論
商品はパッケージ次第で売れ行きが変わっていきますので、ケチらずに、ちゃんとしたデザイナーにそれなりの対価を払ってつくった方が良いです。


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