エコ設備のお話です(その2)(不動産ライターの、のりべぇ第34回)
前回に続き、エコ設備のお話です。
本題に入る前に、前回のフォローから。
少々くどいお話になってしまいますが、前回は少々辛辣な内容になってしまいました。ですが、本文内でも触れた通り、太陽光発電パネルが嫌いというわけではありませんし、家庭用発電システムとしては熟成の領域に入りつつある機器だと思います。まあ、あえて「お願い」があるとしたら、今後の発電効率の向上を期待し、儲かるという観点から導入するではなく、家庭用のシステムでも十分電気は作れる、賄えることを踏まえて導入してほしい、という2点です。
それでは今回の本題。
では、改めて今回の本題に入りましょう。今回はエコキュートとエネファームです。仕組みは大きく異なりますが、どちらも代表的なエコ設備です。今回はまず、それぞれの仕組みからご説明させていただきます。
空気の熱でお湯を沸かす「エコキュート」
まずはエコキュートのお話から。エコキュートは、ヒートポンプ技術を使い、空気の熱でお湯を沸かす装置を指します。正しくは「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」です。この正式名称を使って、もう少し説明しましょう。
まずは自然冷媒から。冷暖房機器は、冷房の場合も暖房の場合も、冷媒を使って冷気・暖気を作り出します。一般的に冷媒は、水素・フッ素・炭素からなるHFC(代替フロン)を用います。それに対し、エコキュートでいうところの自然冷媒は、二酸化炭素を使用します。まずはここが異なる点で、環境にやさしい、空気中に存在する二酸化炭素を使用するところがエコなポイントです。
次に、ヒートポンプです。電気の力でポンプを動かし、冷媒を圧縮。その際発生する熱を利用するというものです。エコなポイントは、この圧縮の過程での消費電力と発生する熱の関係。比較の対象として挙げられるのは電気給湯機なのですが、おおよそ電気給湯器の3分の1の電力で済むという点です。
そして最後の給湯機ですが、「給湯器」ではない点にご注意ください。給湯器は、ヒーターで直接加熱する仕組みでお湯を沸かす装置です。ただ、給湯機も給湯器も、最後はタンクにお湯を貯蔵する点では共通しています。特にエコキュートは、この貯めるタンクも熱をできる限り逃さない構造となっており、作ったお湯を高い温度で溜め込みます。これがエコキュートの仕組みです。
エネファームはつまり、「家庭用燃料電池」です。
エネファームは一言で言えば、家庭用燃料電池です。正式名称は「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」です。エコキュート同様、この正式名称を使って説明してまいります。
まずは家庭用燃料電池から。家庭用はともかく、燃料電池というのは、燃料となる水素と、空気中の酸素を反応させて発電する仕組みです。少々乱暴な例えですが、理科で習った、水の電気分解の逆、みたいなものです。
家庭用の場合は、ガス(都市ガス/プロパンガス)から水素を取り出し、それと空気中の酸素を反応させて発電します。蛇足ですが、燃料電池自動車(FCV)は水素をタンクに充填し、上記の仕組みで発電させます。そのため、車は電気モーターで動きます。一方、水素自動車はガソリンや軽油の代わりに水素が燃料。車はエンジンで動きます。
エネファームに戻りましょう。上記の仕組みで発電を行うのですが、エネファームの場合、発電の際に生じる熱を給湯に活用します。エコキュートと大きく異なる点は、電気とお湯の両方が発生するという点です。実はこの、発電の際に生まれる熱を活用する仕組みがコージェネレーションシステムです。コジェネと略されることもあります。
でもねぇ、どちらも普及率はイマイチ。どうして?
もう、見出しの通り。実はエコキュートもエネファームも、普及率を見るとイマイチ。どちらもエコな設備なんですけどね。ただ、どうもエコ設備というのは、前回の太陽光発電パネル同様、まだデメリットもあるんです。ここではそのデメリットについてまとめてみます。
デメリットその1 「導入・メンテナンスコストが高い」
実は太陽光発電パネルと同じくらい、おおよそ200万円前後(機器により異なります)。もちろん補助金も出るのですが、太陽光パネルと大きく異なるのが、メンテナンスコスト。エコキュートもエネファームも、お湯を貯めるタンクがありますから、このタンクのメンテナンスが、本体同様にかかります。水を扱うだけに、洗浄は重要。一方、太陽光発電パネルは、パネル表面の清掃は必要だとしても、ある程度メンテナンスフリーなところがありますので、この差は大きいかもしれません。
デメリットその2「売電はできない」
まあ、当然と言えば当然なのですが、太陽光発電パネルとは異なり、売電はできません。そもそもエコキュートは発電装置ではありませんし、エネファームも売電できる場合もありますが、お日様が出れば勝手に発電する太陽光発電パネルとは異なり、必要な分だけ発電するのがエネファームなので、そもそも売電には向いていません。
デメリットその3「お湯は(基本的に)そのまま飲んじゃダメ」
これはあくまでも法令の問題。それとメーカー側も注意事項として挙げているのでやむを得ませんが、せっかく作ったお湯も、主に使えるのはお風呂や洗面、キッチンでの食器洗いの時。直接お湯を飲まないでください、という注意書きがされています。ただ、これは水道法の関係。一般的な消毒成分である塩素が抜けてしまうからなんだそうです。それ以外にも、タンク内に残る水が長時間にわたると、衛生的に難ありという理由から。しかし、やかんなどで沸かせばちゃんと飲めるそうです。仕組み上は十分キレイなお湯です。また、水に関してはタンク経由ではないため、普通に飲めます。
それでもすごい!と思える理由。
デメリットばかりを書きますと、なんだ、これじゃあ役に立たない設備じゃないかと思われそうですが、もちろんそんな設備、あるわけがありません。その理由を挙げてまいります。
エコ生活≠ガマン生活。快適にエコしましょ。
だいたい、エコってやつはとかくガマンを強いることが多いもの。そりゃ、エネルギーを使わなきゃエコになるかもしれませんが、そのためにガマンしてたらストレスが溜まって本末転倒。その点、効率よく急騰できるエコキュートや、発電すればどんどんお湯ができるエコキュートというのは、エコな生活にありがちな、ガマンを強いられることがなく、快適にエコ生活を満喫できる点がポイントです。
エコキュートは、実は太陽光発電システムとの相性がGood!
「エネファームは発電するけど、エコキュートは発電しないから要らない!」と思われた方はぜひご注目を。
エコキュートは主に、安価な夜間電力を使用します。しかし、太陽光発電パネルで発電した電力を使えば、電気を購入せずに(あるいは非常に安価に)給湯ができるわけです。電気もお湯も、自前で用意できたら結構なエコですよね(詳細は施工会社さんにご相談ください)。
災害時は「心強い」水タンクになる。
なんとも心強いお話…。エコキュートのタンクは370リットルないしは460リットルが主流。エネファームの場合は小さくて25リットルからですが、エコキュート並みの370リットルというタイプもあります。いずれにしても、停電時には給水タンクから直接供給できますので、大きな貯水タンクを備えているようなものです。前述の通り、飲み水として使うには再びやかんなどで再沸騰させる必要があるものの、災害時には心強い水貯蔵タンクとなるのはうれしい設備です。
「完全な製品」はないエコ設備だけど、日々進化しています。
前回の太陽光発電パネルにしろ、エコキュートやエネファームにしろ、これぞエコ設備の決定版!なんていう完全な製品はまだありません。反面、日々進化する設備です。今後の進化が楽しみです。
とはいえ、これから家を建てたい、あるいはリフォームしたいという方にとっては、いつが導入のタイミングかと思われるでしょう。結論は一つ。家を建てる、リフォームするタイミングがすなわち、エコ設備を導入するすタイミングです。現状の設備でも十分、エコな生活を満喫できます。導入の際はぜひ、施工業者さんなどとご相談ください。
主な発電系エコ設備はここまでなんですが、次回はまとめとしてお送りしようと思います。次回もお楽しみに!