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新規事業でどのビジネスモデルを選べばいいのか迷っています

「新規事業のアイデアをいくつか見つけました。
このような場合、どのようにして選べばいいのでしょうか?」
(仕出し弁当会社社長 30代 男性)

「富山のくすり売り」というビジネスモデル

ビジネスモデル候補がいくつもあるなんて
いいじゃないですか!

本業の潜在力が大きいんですね。

情報がないので
具体的なアドバイスができないから
一般論として聞いてください。

ぼくは
コンサルの現場で
ビジネスモデルを考えるフェーズ(ステージ)で
いつも「富山のくすり売り」の話をします。

「富山のくすり売り」は
江戸時代後期に生まれたビジネスモデルです。

行商人が地方の各家庭を訪問して
さまざまなくすりがいっぱい詰まったくすり箱を無料で置かせてもらいます。
各お宅には自由にくすりを使ってもらいます。
その後、期間をあけて各お宅を訪問して点検し
それぞれの家庭が使用した分のくすり代金をもらいます。
使った分のくすりを補って
またの訪問を約束して帰ります。

このビジネスモデルにはこんな特長があります。

顧客の抱えていた「課題」を解決している

地方に暮らすフツーの人々は
江戸や京都大阪など大きな町に比べて
医者が少なかったり衛生面から
健康不安を強く持っていました。

でも、いつ必要になるか分からないし
使わないかもしれない
なおかつ消費期限もあるくすりです。
そもそもそんなに経済的な余裕はありません。
す。

「富山のくすり売り」は
「くすりを家庭に常備できない不安」という
地方に暮らすフツーの大多数の人々の課題を解決して
「常に手元にくすり品がある安心感」という価値を提供しています。

競合優位性がある

当時、多くの商売は人の多く住む町を相手にしていました。
富山のくすり売りは
いなかの庶民に向けて
後払いで定期的配送という使いやすさで
選ばれるのが当たり前という状態を作りました。

もうお分かりですね。
今の言葉で言う
「フリーミアム」と「サブスクリプション」で
圧倒的な競争力を作りました。

持続性を確保している

ぼくは近ごろ、この「持続性」にものすごくこだわります。
30年コンサルをやってきた中で
一時的に向上しても
そのあとつまづいた会社をとってもたくさん目にしてきました。

ぼく自身も何億円も投資を受けながら
結局それをつぶしたダメ社長でした。

リカバリーは
若いときならいくらでもできますが
年をとってからのリカバリーはつらいですよお。

「持続性が見えないなら手を出すべからず」
今のぼくの金言です。

で「富山のくすり売り」です。
帳簿すなわち顧客名簿の「懸場帳(かけばちょう)」を命の次に大事にしたそうです。
その中には
どんなくすりを使ったか、だけでなく
家族のライフステージ、
持参したおみやげへの反応
お悩み相談健康相談などなど
そのお宅のありとあらゆる情報が詰まっていたそうです。

商売を通じて
データやノウハウなど
何かを蓄積していくビジネスは
続けるほどに持続性が高まります。

そしてお客さまとの関係性の強いビジネスほど
事業拡張の可能性が大きいです。

実際に富山のくすり売りは
縁談や白山参りの仲介など
くすり売りを越えたさまざまなお役立ちをしました。

エコシステムを活用している

ぼくは最近エコシステムの重要性も強調します。
エコシステムの視点で見てみたら
富山のくすり売りはきちんとエコシステムでした。

そもそもくすりをめぐって
製造会社と販売会社が手を組んでます。

それだけでなく、富山藩のおすみつきのもと、
立山信仰の畏れ多い
霊峰立山のふもとで作られる、
効験あらたかな越中富山の反魂丹という
地域ブランドを前面に立てました。

なるほど
富山藩の力を使って作った
ブランド商品を持ってたということです。

これは富山藩とエコシステムを作っていたから
作れたブランドです。
(というよりこのエコシステムのオーナーは富山藩だったんでしょう)

また、くすり売りに出向く者は
ふだんは農家でした。
それなのに読み・書き・そろばんができて
言葉づかいや立ちいふるまいなどもできました。

これは、富山藩で草の根の寺子屋における実業教育が盛んであったおかげだそうです

いいビジネスモデル作りには
良質なパートナーのそろったエコシステムが不可欠だという
証拠です。

収益性が高い

あえてこれを最後にもってきました。
ビジネスですから儲からないと手を出してはいけませんが
儲けが薄くても
やりたいビジネスってありますよね。

ここは社長さんそれぞれの個性や人生観による判断です。

ぼくは
意気に感じれば儲けは後回し
という主義ですけど

儲けが先という考えも当然あっていいですから
そういう考えも尊重してます。

でもって
富山のくすり売りの話です。

くすり九層倍(くすりくそうばい)という言葉があります。

仕入れ値の9倍もの値段を付けて売っている、
それくらいくすりは儲かるよ
ということです。

ぼくはくすり製造会社やくすり販売会社の仕事をしたことがないので
みなさんと同じくらいしろうとですけど
きっとそんなもんでしょう。

くすりの原価の多くが
研究開発費分で
原材料そのものは
そんなに高くないんでしょう。

ということは
富山のくすり売りの
くすりの製造原価は
とっても低いわけです。
仕入原価も
販売者がたっぷり利益を取れるような
価格設定だったことでしょう。

ビジネスでは
製造原価や仕入れ原価をどこまで下げられるかに
徹底的にこだわらないとなりません。

くすりとはその点で
とても好ましい商材だということです。


あなたなりのものさしを持ってください

今回はビジネスモデルを評価する
ぼくなりの視点を5つあげました。

ぼくの話はどれもすべて
実際のコンサル現場の経験から出てきたものなので
それなりの自信はあります。

でもたった30年ぽっちの
ほんとに限られた数の経験しかないという
限界があります。

ぼく自身の感性も
10代の人からみたら
お話にならないくらい
年よりじみていることでしょう。


だから
最後は
ビジネスモデルを見極める
あなたなりのものさしを持って
ご自分のビジネスモデルを見極めてください。

そうやってプロフェッショナル社長を目指していってください。

応援しています。


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