蓄熱と調湿
KANSO建築の日本モデル棟、2020/2021年冬の施工風景です。
「断熱」偏重の現代建築の発想から頭を解放し、自然のマテリアルが持つ高い蓄熱性能(吸熱と放熱)と調湿(吸湿と放湿)を軸にした建築コンセプトです。それによって最大限のローテクを実現します。
結果的に断熱性能は高いですが、蓄熱と調湿を求めた結果です。
中のマテリアルの蓄熱効果を上げるため、南側のサッシのガラスは、断熱性能を落としてG値(日射熱取得)が高いものを使っています。
蓄熱と言っても、その容量やスピード、持続性は、マテリアルによって大きな違いがあります。
ミネラル系の土やモルタル、石やコンクリートは、素早く熱を吸収し、素早く放出します。陸上で言うと「短距離走者」です。
それに対して木材は、ゆっくり熱を吸収し、ゆっくり放出します。「長距離走者」です。
夏の熱気を緩和するには、前者の短距離走者のミネラル素材が有効です。
冬場日照時間が少なく、3、4日太陽が照らない日があるときは、後者の長距離走者の木材が有効です。
秋田のモデル棟は、元祖KANSOのスイスのモデルと同様に、躯体の外壁と天井には木をたくさん使い、「持久力のある蓄熱体」にして冬に備え、床は、コンクリートの上に吸熱性を高くするため「黒色」の土モルタルの仕上げにし、中の仕切り壁や内壁の一部は、モルタル仕上げの部分と、現地の火山岩のプレートを貼った壁にし、「瞬発力のある蓄熱体」で夏のオーバーヒート防止を試みます。
冬はG値の高い窓から太陽光をたくさん入れて、黒い土床で熱を素早くたくさん吸収させ、そこから放出される二次的熱放射エネルギーは、長距離選手の木材にゆっくり吸収され、室温に合わせてゆっくり放出されます。
夏場は、屋根のヒサシで日光の直射を防ぎ、白いカーテンで紫外線を反射させます(シャッターもブラインドも必要ありません)。
スイスアルプスの元祖KANSOと同じように、暖房も冷房も機械換気もなく機能するか。2021年5月より、その実験をはじめています。
www.kanso-bau.com
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