ネタ番組の寿命

 10月15日からレギュラー番組として、毎週金曜日20時に放送されることになった、TBSのネタ番組「ザ・ベストワン」。過去数回の特別番組を経てレギュラー化されるという、お決まりのパターンだ。始まったばかりで言うのもなんだが、筆者はこの番組が長く続くとは、正直あまり思わない。

 番組スタッフは、どれくらいの期間この番組を続ける予定なのか、訊ねてみたくなる。僕の予想はもって2年。それ以上続けば大成功だと思う。早ければ1年で終わる可能性もなきにしもあらずだ。

 短期間で終わりそうに見える理由はわかりやすい。かつてフジテレビで放送されていたネタ番組、「爆笑レッドカーペット」に瓜二つ。出演者やスタイルも含め、共通点がかなり多いからだ。

 実力派の売れっ子芸人を毎週出し続けることは、事実上不可能。そうすると、必ずいつか、番組として息切れを起こす。出演者のクオリティは突如下がることになる。放送時間を埋めるために、本筋とは異なる企画を行なったりする。

 ネタ番組として始まったはずなのに、ネタを披露しない。番組としての評価は、その瞬間、下げざるを得なくなる。一度離れたファンはそう簡単には戻ってこない。

 「ザ・ベストワン」が具体的にどうなるかはまだわからないが、ジリジリと右肩下がりに陥りそうな様子は、なんとなく想像できるのだ。

 ついでに言えば、4月からレギュラー放送されているテレビ朝日「お笑い実力刃」も、雲行きが怪しいムードを感じる。ネタ番組として始まった同番組だが、気がつけば、ネタを見ることが少なくなった。ツッコミ芸人を集めて、街中の写真にツッコミを入れる企画に変わっていた。

 ゴールデンタイムにネタ番組を続けることは、今や至難の業。あの「エンタの神様」でも、レギュラーで続いたのは7年間だが、これでもよく頑張ったと思う。レギュラー終了後は年に数回、不定期に放送されているが、本来はこれくらいがベスト。知名度が高いネタ番組として、いまなお放送を続けることに成功している。

 「笑いの金メダル」、「ザ・イロモネア」などは、華々しいスタートを切ったものの、レギュラー放送はあっという間に終わった印象だ。ネタ中心だった番組から、気がつけば、色々なことに手を出した結果、特徴がよくわからない番組になっていった気がする。番組開始当初がすでにピーク。そこから徐々につまらなくなっていった。そのまま静かに終わってしまったという感じだ。

 一方で、ネタ番組と一口に言っても、終わりにくい、余力がありそうな番組もある。

 テレビ東京「にちようチャップリン」、フジテレビ「ネタパレ」。この2つのネタ番組には、これまで述べたような匂いは全く感じない。むしろ、まだあと何年も続きそうなムードを感じる。

 ともに30分程度の深夜番組だ。視聴率がそれほど求められているわけではない。早い話、ゴールデンタイムの番組より、プレッシャーは少ないわけだ。まだ世に出ていない芸人、知名度の低い芸人を出しても、全く問題ない。むしろ、そうした芸人が面白いほど、番組の評価は上昇する。少々つまらなくてもオッケー。そうした番組としての気楽な立ち位置が、比較的長い期間続いている理由だと思う。

 TBSラジオ「マイナビ Laughter Night」も、個人的には良いものに見えてくる。テレビとは違い、ラジオで頼れるものは喋りのみ。ここで面白い芸人は、喋りがイケていることと同義だ。ニューヨーク、空気階段、オズワルドなど、このラジオ番組で活躍した芸人を見れば一目瞭然。このご時世、ラジオでネタを披露する番組はかなり新鮮だ。そしてそれなりに面白い。視聴して損はない、寿命が長そうな番組に見えてくる。

 「ザ・ベストワン」は、そうした深夜のネタ番組に比べると、辛い立場に置かれている。常に100の面白さを求められるからだ。70でも合格点の深夜番組とは事情が違う。面白さが80くらいに落ちれば、視聴者は自然に遠ざかるだろう。100を出し続けることはどんな番組でも不可能。90を維持するのも難しいと見る。

 個人的な意見を言えば、わざわざレギュラーにする必要はなかったのではないか。年に数回の特別番組の方が、そのスタイルに合っていたのではないかと僕は思う。

 派手に始まった「ザ・ベストワン」だが、果たしてどんな最終回を迎えるのか。できれば変な終わり方は見たくない。惜しまれながらも舞台を去るような、美しい最後を迎えてほしいものである。

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