Mリーグ一、華やかに見えるBEAST X に期待する

 Mリーグの新シーズン(2024-2025)が始まって2週間が経過した。

 筆者がMリーグを開幕からキチンと見るのは今季が初めてのことなのだが、ここまでの試合を見ていて思うのは、どの試合も確実に「面白い」ということだ。程度の差こそあるが、つまらない試合はひとつもない。全ての試合に見どころは存在する。そんな面白いモノをこれから半年間、コンスタントに味わえると思うと、自然とワクワクした気持ちになる。

 以前もこの欄で述べたが、全9チームのなかで筆者が最も注目しているチームは、今季がMリーグ加入2シーズン目となるBEAST Xだ。麻雀プロ以外の顔を持つ有名人を2人(鈴木大介選手[プロ棋士]、中田花奈選手[タレント])擁していることも注目するに値する大きな理由だが、それも含め、やはりこのチームの活躍が今後のMリーグ繁栄の鍵を握るとは筆者の見解だ。そう簡単に負けて欲しくないチーム。Mリーグを全体的に眺めても、なんとなく推されているムードを感じる。

 MリーグのなかでBEASTが際立つ理由はそのメンバーの顔ぶれもあるが、最たるものはなんといっても冠番組の存在だろう。現在毎週水曜日に放送中の「MリーグNo.1への道 BEAST ROAD」。BSながら全国放送で自チームの冠番組を持てるのは、放送局(BS Japanext)を親会社に持つこのチームにしかできない芸当、まさに特権だ。

 番組にはタレントの児嶋一哉(アンジャッシュ)をMCに据え、その進行役として松本圭世さんや松嶋桃プロというMリーグと関わり深い人物が出演。そこにゲストが加わることもあるが、それはともかく、Mリーグ全9チームの中で最も豪華というか、どこよりも手厚い待遇を受けているチームに見えることは間違いない。歴史の浅いチームながら、どのチームより都会的。さらには勝利や成長を目指すスポーツ漫画の主人公的な魅力も備えている。

 そして忘れてはならないのは、BEASTはTEAM雷電と共に今季、セミファイナル(レギュラーシーズン6位以上)に進出できなければチーム解体を余儀なくされるシーズンだということだ。全国放送の冠番組を持つチームにとって、このような形での選手の入れ替えはなんとしてでも避けたいはずだ。そんな重圧がかかるなかで始まった今シーズンだが、この文章を書いている時点(9月28日)でのBEASTの順位は現在9位(最下位)と、スタートダッシュに失敗。もちろんシーズンは始まったばかりだが、それでも少なからず不安が漂うのは事実だ。まだ1,2試合で逆転できる差とはいえ、このまま敗退ラインを抜けられないまま終盤までいってしまう可能性もある。無論、余裕がある状況というわけでは全くない。常に緊張感が漂うなかで今後の試合も挑むことになるだろう。

 そんな今季のBEASTの試合なかで個人的に印象に残ったのは、菅原千瑛選手の2試合(3着、2着)だ。どちらもその日の初戦でチームメイト(中田選手、猿川真寿選手)が4着に沈んだ後の試合だった。

 ポイントをざっくり言えば、可能な限りリスクを回避したそのうち回しになる。着順を上げるより、着順を下げないことを最優先した。チーム初日の2戦目ではオーラスにあえて3着を確定させるアガリを決め、同日の連続4着という最悪の結果だけは免れることに成功した。そして自身2戦目となった今週火曜日の試合では、僅差のトップ目で迎えた勝負どころの南3局で難題を迫られた。押し切ってトップを狙うか、それとも安全に行くか。菅原選手が選んだのは後者で、結果は逆転トップとなった勝又健志選手に次ぐ2着。「4着だけはマズイ」。打牌は無言でそう語っていた。

 シーズン残り数試合とか、あるいは負けたら終わりのトーナメント戦とかならともかく、リーグ戦が始まってまだ数試合の段階でこの緊張感だ。それだけボーダーを争うチーム、解体の危機に瀕したチームにかかるプレッシャーは大きく見えた。状況が違えば多分もう少し攻めた打牌になっていただろうなと、勝負どころで逡巡する菅原選手を見て思った次第だ。

 今季チーム初トップを取った鈴木大介選手と先述の菅原選手はまずまずのスタートを切れたが、逆に辛いスタートとなったのは中田選手と猿川選手だ。特に猿川選手は2戦連続の4着という結果になったが、決して何か大きなミスがあったというわけでは全くない。4着になったのはほんの紙一重の差。佐々木寿人選手に清一色を放銃した局などは思わずそう言いたくなる。

 中田選手が4着に沈んだチーム初戦も同様。見た感じ大きなチャンスを逃したというわけではなかった。もちろん細かい部分は多々あるのかもしれないが、最大の敗因は不運。「いい手が入らなかった」。これに尽きる。少なくとも内容は悲観的になるようなものではなかった。

 BEASTの巻き返しなるか。そうした意味でも注目は次戦(9月30日)だ。マイナスがこれ以上増えると次第に焦りや無理な打牌が生まれてくる。いまのところ全体的にチームにあまりいい手が入っていない印象だが、そろそろ弾けるような試合を演じる選手が現れてもおかしくない。また、そうでなくてはチームは浮上しないと見る。そのきっかけとなる選手は誰か。目を凝らしたい。

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noriaki0357
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