地味な小場と派手な撃ち合い。Mリーグで面白い試合はどちらか?
Mリーグ第85節。赤坂ドリブンズ(1位)、U-NEXT Pirates(2位)、渋谷ABEMAS(6位)、BEAST X(9位)の顔ぶれで行われた昨日の2試合は、両極端というか、それぞれの趣が大きく異なる試合となった。
大雑把に言えば、第1試合が“地味”で、第2試合が“派手”な展開。第1試合がじりじりとした小場の内容だったのに対し、第2試合は序盤で倍満の和了が出るなど打点の大きい撃ち合いの試合だった。
先日行われたプレミアムナイトで盛り上がりそうな試合はどちらかと言えば、高い和了が多かった第2試合のほうだろう。大勢の人が見つめるパブリックビューイングに適した試合と言ってもいい。サッカーのスコアで例えるなら、第2試合は4-2あるいは5-3、第1試合は後半35分にようやく先制点が生まれた1-0の試合、といった感じだろうか。
地味な試合と派手な試合。パッと見どちらが面白かったかと言えば、後者(派手な試合)と答える場合がおそらく多いだろう。だが、昨日の試合は違った。あくまでも筆者の好みだが、第1試合のほうが圧倒的に面白かった。第2試合より何倍も緊張感が高い、見応え十分の試合だった。
そんな第1試合の顔ぶれは以下の4人になる。東家・鈴木優(Pirates)、南家・園田賢(ドリブンズ)、西家・松本吉弘(ABEMAS)、北家・菅原千瑛(BEAST)。
先に結果を言えば、ABEMASの松本選手が今季18試合目の登板でようやく今シーズン初トップを獲得した試合となった。そのスコアは32300点と決して大きなトップではなかったが、ボーダーを争うチームにとっては大きな意味を持つ、非常に大きな勝利だった。
だが、そんな松本選手の初トップよりまず語りたいのは、試合そのものの面白さになる。繰り返すが、大きな和了が乱発した試合では全くない。全16局、うち流局が5回というスタッツから、決定打が生まれない、ともするともどかしい試合だったように見える。だがその分駆け引きの時間は多く、試合は常に高い集中力に包まれた内容の濃い試合だった。
もうひとつ面白かった要素を挙げるならば、最後まで誰が勝つかわからない接戦だっだこと。オーラス南4局を迎えたときには優選手以外の3人に十分トップの可能性があった。最後は流局での終局だったが、麻雀の真髄が凝縮されたハイレベルな好勝負だった。
勝者ではなく敗者、連対の2人より惜しくも逆連対となった2人のほうがこちらの印象には強く残る。園田選手(3着)と優選手(4着)。現在首位のドリブンズと2位のPiratesを引っ張る、チームのエースでもある両選手だ。可能な限りゲームに参加しようとする、その活発な麻雀には常に舌を巻く。いい意味で諦めが悪い。トリッキーで粘り強い、敵に回すとこれ以上嫌な選手はいないだろう。見ていて飽きない選手、いつもこちらを楽しませてくれる選手だ。
雀士にはさまざまなタイプが存在するが、大きく分けるなら門前派と鳴き派だろう。Mリーグで言えば、門前派の筆頭は黒沢咲選手(チーム雷電)、一方の鳴き派の筆頭は小林剛選手(U-NEXT Pirates)といったところか。
まっすぐ高打点を狙う選手はもちろん魅力だか、何をしてくるかわからない、仕掛けを駆使した選手のほうが個人的には厄介な存在に見える。攻撃の幅が広い選手と言ってもいい。先述の園田選手や優選手もその代表格だろう。その他でぱっと思い浮かぶのは渡辺太選手、鈴木たろう選手(ともにドリブンズ)、本田朋広選手(チーム雷電)、勝又健志選手(EX風林火山)、堀慎吾選手(KADOKAWAサクラナイツ)……。いずれも曲者というか、何を仕掛けてくるかわからない怖さを備えている。見ているこちらや解説者の想像を超える意外な一手を平然と繰り出す強者プレーヤーたちだ。
麻雀はルール上、リーチをかければプレーヤーは当たり牌を引くまでツモ切ることしかできない。早い話、リーチした後は特段何かを考える必要はない。一方で1度でも仕掛けを行えば、その後は数々の選択を迫られることになる。攻める、広げる(伸ばす)、迂回する、やめる……。決着がつくまで常に何かを思考し続ける必要に迫られる。考える(選択する)機会が多いわけだ。つまり仕掛けが多いほど自然と思考力は鍛えられやすい。そうした見方はできる。今季は副露率の高い選手が個人成績上位に多くいるが、その副露率の高さと好成績に何か深い関係はあるのか。個人的には興味深い。
園田選手のようなタイプがひとりいるだけで試合の展開はガラッと変わる。大味な展開より、ピリピリとした辛い展開になりやすい。そして何より、高打点を狙ういわゆる正統派タイプの選手はこうした技巧派の選手と相性が悪い。昨日の試合では菅原選手が2着だっだが、まっすぐ攻撃的な選手が多いBEASTのような相手に園田タイプはめっぽう強い。個人的にはそんな印象を受ける。
麻雀で派手な和了といえば役満になるが、そうした高打点の和了ばかりが麻雀の醍醐味では全くない。たとえ手が悪くても仕掛けで相手にプレッシャーを与えたり、泥臭く聴牌料をもぎ取るプレーなどにも選手の読みや技術の粋が詰まっている。息詰まりそうな僅差の小場も見ていて面白い。そう思わせる試合だった。
話を昨日の試合に戻せば、接戦の第1試合とは変わって、第2試合は大きな和了が多かった分、スコアが上下に大きく離れる展開となった。派手な展開ではあったが、点数が開いたことで勝敗に対する興味は自ずと薄くなりがちだった。第2試合の印象をひと言でいうと、BEASTの猿川真寿選手にとっては不運でキツイ試合だった、となる。
レギュラーシーズンも残り20試合。ABEMASがジワジワとポイントを増やしてきたことで僅差でボーダーを挟むチームそれぞれに異なる種類のプレッシャーを与えている。そのなかでも負けられない今日(2月18日)登場する2チーム、サクラナイツ(7位)と風林火山(8位)の直接対決は両チームにとってとりわけ重要な試合になる。目を凝らしたい。
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