R-1グランプリ2022。ファイナリスト出揃うも、期待感が高まらない理由

 R-1グランプリ2022準決勝。視聴した感想をひと言で述べるとすれば「昨年の決勝よりは面白かった」となる。昨年の決勝戦の出来があまりにもよくなかったのでそれほど驚くべき話ではないが、戦いのレベルそのものは、昨年よりわずかだが上昇していたように思う。

 とはいえ、来月行われる決勝戦に期待が持てるかと言われれば、素直に頷くことはできない。イエスかノーかでいえば、筆者の答えはノーとなる。

 昨年12月に行われたM-1グランプリ準決勝と比較すれば、その違いはわかりやすい。M-1とR-1。それぞれの戦いのレベルには、ハッキリ言って雲泥の差が存在する。この距離はそう簡単に縮まりそうな気がしない。その辺りのことが、今回のR-1準決勝を視聴したことでより鮮明になったという感じだ。

 ファイナリストたちの顔ぶれを見ても、ワクワク感や期待感を抱くことができない。なにより世間が、R-1のファイナリストたちに対して、大きな関心を寄せているようには全く見えてこないのだ。未来のスター候補たちだというのに、彼らへの興味や関心は恐ろしく低い。そんな感じに見える。

 M-1は違った。例えば昨年、ランジャタイが初の決勝進出を決めたことは、お笑い界ではとりわけ大きな話題になっていた。その決勝戦出場に対して「これは時代を変えるかもしれない出来事だ」と述べる人さえいた。また、ハライチや見取り図、ニューヨークといった常連組の敗退も、それなりに大きく取り上げられていたと思う。優勝に近いのはいったい誰なのかと、お笑いファンの多くが“犯人探し”に熱を帯びていた。準決勝から決勝までの2週間は、とりわけM-1の話題で持ちきりだった。現在のムードと比較すればその違いは一目瞭然になる。

 この熱量の差は何なのか。それは準決勝の戦いに対する視聴満足度の差だと僕は思う。

 M-1グランプリ2021準決勝。褒めすぎを承知で言えば、出場したほぼ全てのコンビが面白かった、となる。10段階で7を下回るコンビはせいぜい2,3組。その他のほとんどは8以上。滝音やニューヨークなど、滅茶苦茶面白かったにもかかわらず、無情にも落とされたコンビも目につくほどだった。またロングコートダディやもものように、「これは確実にウケるだろうな」と、決勝での活躍に大きな期待を寄せたくなるファイナリストも多かった。決勝の舞台での好勝負が思いっきり期待できそうな、まさに満足度の高いハイレベルな戦いだった。

 その一方で、R-1は、ファイナリストが決定したにもかかわらず、決勝戦が面白くなりそうな予感があまりしない。今回のR-1のファイナリストは8人。その枠は昨年(10人)から2人も減ることになった。その分、大会のレベルは上がると思われるのが普通だが、はたしてどうだろうか。

 吉住とZAZY。すでに決勝進出を決めた7人のなかでは、おそらくこの2人が今大会の優勝候補と(世間からは)見られるはずだ。ともに高い知名度と実績を併せ持つ実力派のピン芸人。とはいえ、あくまでも個人的な印象だが、この両者が準決勝で他を圧倒するようなネタを見せたかと言えば、そうでもない。こう言ってはなんだが、この両者がすんなりと決勝へ進出することに対しても、筆者は不満を覚えるクチになる。吉住とZAZYが準決勝で敗退するくらいでないと、大会のレベルが上がっているとは言えない(コロナ感染により準決勝は動画審査となったヒコロヒーはともかく)。彼らの決勝進出を阻むような芸人が続々と現れるようでないと、大会に勢いを感じるとは言えないのだ。

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