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株価と実態経済に「乖離」を感じる理由

皆さん、こんにちは。

ニュースではコロナで大変になった方々の報道が多くなされていますが、  一方で日経平均株価は高値圏で推移というニュースも耳にしているかと思います。皆さんの中にはこの現象に首をかしげる方も少なくないのではないでしょうか。

今回は「株価が実態経済と乖離している理由」をお話していきたいと思っています。

と言いましても「テクニカルな話」などの小難しい話は他の方にお任せするとしまして、私の方からはいつものように(笑)、もう少し「ざっくり」とした内容でご説明していきたいと思っています。

知らない人が多い経済学の前提条件

まずは、「そもそも経済学とは」というところからもう少し深堀して理解していく必要があります。

経済学とは物理学や化学とかのように確立された学問のひとつです。ノーベル賞のカテゴリにもなっている由緒正しい学問です。ただ、この学問の精度?が昔からイマイチなのは金融村の住人には当たり前のことなのです。

少し昔になりますが、以前、アメリカに「ロングタームキャピタルマネジメント(LTCM)」というヘッジファンドがありました。こちらはヘッジファンドの先駆けで「最先端の金融工学を駆使し高い収益をあげる」という触れ込みで経営陣には「ノーベル経済学者」も名を連ねておりました。ところが1997年のアジア通貨危機をきっかけに「あっけなく」このファンドは破綻してしまいました。

この破綻にはいつものようにいろいろ理由があるのですが(笑)、皆さんがあまりご理解していないのは経済学の「前提条件」です。経済学には簡単にいうと「すべての人間は利益を追求するために合理的な行動をとる」という前提条件があります。これは一見正しいように見えるのですが、この「利益」というモノが「人それぞれ異なる」ということを忘れてはいけません。

例えば、再建途上の会社があった場合、会社全体としては「リストラ等の構造改革≒会社全体の合理的な行動」なのですが、パフォーマンスが悪い人からすれば、そんなことをされたら自分の仕事がなくなってしまいます。ですので、「彼らの合理的な行動」とは、会社の構造改革を進めるのではなく、破綻しないぎりぎりのところで会社の構造改革を妨害し、自身の仕事を確保するということになります。コンサル時代これ、よくありました(笑)。

経済学では「モデル」という概念がありますが、このモデルが正しいかの議論はあまり意味がありません。賢い方々が真剣に考えているのでたぶん正しいことが多いです(笑)。ただ、その「前提条件」が非常にあいまいなため、結果的には「想定していたモノ」と「現実」に乖離が発生してしまうことがあるのです。

ということから経済学ではしばしば理論と結果が結びつかない例が多々あります。このように不安定な学問ということを念頭に(笑)、実態経済とは乖離した株価を形成している理由を2点お話させてください。

1. 株価の算出方法を理解する

「株価とはその会社の価値を表したもの」とお考えの方が多いかと思います。それは決して間違いではないのですが、株価算出ロジックを理解していないとミスリードすることがあります。

まず、株価のざっくりとした算出方法は以下の通りです。かなりざっくりとですよ。

(①期待収益-②調達コスト)×変数諸々(ざっくり)

すみません。はい、だいぶざっくりです(笑)。ただ、こちらで言いたいのは株価を算出るためには「①期待収益」と「②調達コスト」というモノがとても大きなインパクトを占めるということです。

今回のコロナでは企業の「①期待収益」はまちまちです。飲食やサービス業のように大きなマイナスを受けているところもあれば、ITやスーパーのように巣ごもり消費で業績が向上している業種もあるかと思います。一方、「②調達コスト」については日銀は、いまだかつてない規模の金融緩和を実施し大きく調達コストが下がっています。

というわけで「①期待収益」に関しては「儲かっている企業」もあれば、「そうでもない企業」もありますが、「②調達コスト」については一律ドカンと引き下げられているので、全体的にみれば「プラスの影響を受けているケースが多い」のです。これがアメリカやヨーロッパでも同時に発生しており、グローバルで株高になっているのです。

一部では現在の金融緩和は将来への借金になるという指摘もありますが、まず今は「背に腹は代えられない」ということと、特にハードカレンシーのUSドル、ユーロ、日本円に関してはその影響は小さいと考えられます。

2. 投資スタイルの根底が変わりつつある

以前の投稿でもお話させて頂きましたが、投資のルールがだいぶ変わりつつあります。リーマンショックを経験し、金融は「物理的なモノを金融商品化する能力」を身につけました。現在の企業はDebt(借入)を起こしレバレッジをかけスピード感をもって企業運営を行うことが前提となっています。

企業は借入を起こして体を大きく見せて活動をしているので、そもそも「本当のカラダ」との「株価」の乖離が発生するようになっています。今はその差が分かりやすくなっているだけです。株価は企業の実態を昔ほど正確に表しづらくなっているのですね。

また、借入を起こすことが前提ですので、今回のように金融緩和による調達コストの低減が発生すれば、よりその「プラスの影響」を受けるようになります。みんな借金が多いので、借金の利率が下がればそれだけで手残りが多くなるということですね。


というわけで実は「株価が実態経済と乖離している」というのは決して異様な現象ではないのです。日米欧であと2年くらいは金融緩和を続けると言っているので、当分の間はモルヒネを投入されている感じです。

ですので、金融緩和している間はこの基調が続く可能性が高い「はず」ですが、そううまくいかないのが株式市場です(笑)。前提条件でお話したとおり大変不安定な学問ですし、以前お話したように皆が皆「株が上がる」と考えだしたらこれまた危ない兆候です。

こんなご時世ですので何がが起きても不思議ではありません。ただ、だからこそ、表面的な現象や巷の情報に惑わされることなく「物事の本質をしっかり見極め自分で考えること」が、情報化が進んだ現在ではとても大切なことではないかと思っています。

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