投資家目線でのASEAN諸国
皆さん、こんにちは。
私は日本以外の居住地と投資先としてASEANを中心にしていますが、今回は投資家からみたASEANということでお話させて頂きたいと思っています。
ASEANは現在10か国が加盟しています。文化的には中国文明とインド文明がミックスされたもので、個人的には日本人から見るとここまでがぎりぎりアジアなのかなと。南アジアや西アジアまで行くと同じアジアと言っても、文化も習慣もだいぶ我々とは異なります。
日本は第2次世界大戦でいろいろな国に迷惑をおかけしましたが、ここASEANは東アジア諸国と比べるとだいぶ親日国が多いです(一部にはまだまだネガティブに思われる国もありますが)。そういう意味でも「日本人」「アジア人」というプレゼンスが十分活かせる地域となります。
先日オリエンタルラジオの中田さんもシンガポールに移住するというニュースが流れていました。今後はこのようなASEANへの海外移住は増えていくことになるでしょう。中田さんは日本とASEANの橋渡しをしたいという趣旨の話をしていました。日本はまだまだ大きなマーケットですからね。
我々の世代もどちらかというと欧米で学んだことを日本というマーケットに持ってくるというスタイルが中心でした。日本自体をマーケットの主戦場とし欧米で流行ったことを日本に輸入して、日本に合わせて少しカスタマイズするというのが王道でした。これ、外資コンサルも一緒ですよね。欧米のスキームをバイリンガルがどや顔でプレゼンするやつです(笑)。
これは日本が1億人を超える人口を抱え、現在でも第3位の経済大国ということが大きな理由です。
ただ、これからはこの流れが大きく変わっていくかと考えています。
日本は1億人超の人口を抱えていますが、今後の経済が大きく伸びることは考えづらいです。一方、ASEANは人口だけで見ると7億人弱で今後も人口は増えていき、また経済力も合わせて増えていくことでしょう。先に申し上げたようにASEAN諸国は親日国が多いため、日本の文化や生活様式に興味があり好意的にとらえてくれる方々も多い地域です。
今までは日本のプレゼンスが大きかったため「欧米⇒日本」のスキームが成り立ちましたが、今後はこの流れが少なくなると考えています。「日本からASEANに出稼ぎに」という時代がすぐ来るかもしれません。
その際は日本の若者には大きなチャンスです。日本人に好意的なASEAN自体が大きな「マーケットの主戦場」になるのです。皆さんが今経験している日常の事が「過去の日本での事例」としてを紹介するだけでバリューが出る、なんてことが現実になるかもしれません。「大きな組織の弊害例」とかなんかで(笑)。
直近でこんな日本のコンテンツをASEANへという記事が出てましたね。
わたし、サッカーはあまり詳しくはない「にわかファン」なのですが、バンコク滞在時には現在タイ代表の監督をしている西野さんと同じランニングコースだったため、勝手に親近感をもっております(笑)。
私はまだまだ海外直接投資の経験は少ないですが、過去の先人達の失敗事例を調べてみると、「2つ大切なポイント」があると考えています。まず前提としては、非居住者の外国人が投資する際に「ミクロの情報」を取るのはやはり難しいです(これは私の経験でもあります)。日本で私が投資する際に入手できる粒度の情報を海外でも同様にというのはなかなか困難です。ですので海外投資はどうしても「マクロ的な」投資になってしまいます。
その条件で、大切な1つめのポイントは投資を「点」で考えないということです。経済というのは現在という「点」だけでなく、過去と現在という点を結んで「線」で考えなければ間違いやすいです。そのためにはその国々の歴史をしっかり学ぶことが大切です。
例えば、アメリカですが、第2次世界大戦で日本と戦う前には「菊と刀」という書籍に代表されるようにしっかり日本の文化や日本人について深い調査を行い、戦争に臨んでいます。
ただ、ベトナム戦争の際には「Best&Bright」と呼ばれる秀才を集めたにも関わらず、ベトナムという小国に勝つことは出来ませんでした。これはベトナム人の不屈の魂や中国と長い間戦い続けた国民の気質を理解していなかったからだと思われます。小国と思ってなめていたのかもしれません。
戦争は極端な例ですが、ビジネスの際にもしっかりその国の文化や国民の気質を理解していなければ良いリターンを得ることは難しいと思っています。
もう1つのポイントは、その国の現在を点でなく「面」で評価する3つの観点です。私が常に気にしているのは、「①人口動態」「②宗教」「③民族」の3つです。
「①人口動態」はわかりやすく言うとその国の「ステージ」を見る感じです。ご存知のように日本はすでに国としては成熟ステージで少子高齢化社会に突入していますね。ASEANでみると近い動きをしているのがタイなんです。タイもすでに少子高齢化社会に入りつつあります。感覚として30年前の日本という感じです。私がタイへの投資を控えているのは主にこれが理由になります。
「②宗教」「③民族」の2つは正直日本人にはイメージしづらいですね。 これはミャンマーの例でみていきましょう。
ミャンマーはタイやベトナムと同じようにASEANの中では古くから形成されている国家です。領土も広く国民性も勤勉と言われていますが、タイやベトナムほど成長していませんし、評価もされていません。
なぜかというと、まずは「②宗教」です。基本的に国民は敬虔な仏教徒なのですが、一部イスラム教の方々もいます。よく聞くのが「ロヒンギャ」ですよね。ミャンマーは少し前までは軍事政権で彼らは仏教徒です。アウンサンスーチーさんが今は国家指導者ですが、彼女も軍部の意見は無視できません。もし、スーチーさんがロヒンギャに手を差し伸べると今度は軍部が反旗を翻し国が空中分解を起こしてしまうのです。
「③民族」の点で見てみると、いわゆる「ビルマ族」とのいうのは人口の半分程度です。その他は少数民族で主に中国国境あたりに陣取っています。中国がちょっかいを出して彼らが民族運動などを起こせば、これまた国が空中分解してしまいます。ですのでスーチーさんは西側諸国の人権団体にに文句を言われることよりも中国のご機嫌を損なう方を心配しているのです。
このようにASEANには国家としての概念が出来上がってまだ歴史が浅い国が多いです。ポテンシャルはあるのですが「政情」がなかなか安定しません。中東諸国に近い感じがあるんですよね。比較的安定していると言われるタイでもしょっちゅうデモをしていますし。現在の王様もちょっと問題児のようですし(笑)。
というわけで海外投資や海外ビジネスをする際には「その国の歴史を学ぶ」ということが大変重要になってきます。学生時代は歴史が苦手な方でもご自身の大切なお金を投資するのであれば、今までとは違い俄然、勉強意欲がわいてくるのではないでしょうか(笑)。
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