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投資家目線でみる「良い二代目」の条件

スズキ自動車の鈴木修会長がご退任されました。

私が物心ついた時からスズキ自動車のカリスマ経営者としてご活躍し、その年齢(91歳)を聞くとさらに驚愕いたしました。御年91歳まで現役とは…。本当に頭が下がります。お疲れ様でした。

とはいえ、このカリスマ経営者の後任はかなり大変です。常に先代と比べられますからね。継続している組織ではカリスマ経営者の後の後継者は地味な方も多いのですが、実は優秀な方も揃っています。これは歴史で見ると非常にわかりやすいですね。

凡庸?徳川幕府二代目将軍:秀忠

皆さんもご存知の江戸幕府の開祖である徳川家康。彼は「神君家康」として神にまで祭り上げられました。その二代目は「秀忠」。こちらは関ケ原の遅参があったこともあり、「名君」という認識を持っている方は少ないのではないでしょうか。

ただ、江戸幕府の礎を築き上げたのはこの秀忠と言っても過言ではありません。秀忠が厳しく統制し基礎をつくり三代目の家光にバトンを渡さなければ我々が知っている江戸幕府というものはもっと短かったかもしれません。

じつは、秀忠の治世の7年間に、多くの大名家が改易(かいえき)の憂き目に遭っている。改易とは、武士の所領や家禄・屋敷を没収して、士籍から除くこと。いうなれば、一種の身分刑であり、蟄居(ちっきょ、謹慎処分)よりは重く、切腹よりは軽い。そんなえげつない処分である改易を容赦なく進めたのが、この秀忠である。結果、蓋を開けてみれば、なんと、41家が潰されたという。

というのも初代と比べられる二代目はどうしても「初代の最高潮の時」と比較されます。家康も若い時にはたくさん失敗していますよね。三方ヶ原で武田信玄にボコボコにされたり。でも最後の最後で関ヶ原で勝ち「幕府」を開き秀忠に譲渡していますので、人生最大の功績をなした時と比べられるとどんな二代目でもかなり厳しいですよね。

反対に失敗してしまった二代目の代表は「武田勝頼」かなと。カリスマの信玄の後を継いだ彼は後継者に指名されるまでの準備期間もなかったこともありますが、信玄を超えようとたくさんの対外戦争を起こしました。

それが逆に家臣や民衆の離反を招くことになります。私は勝頼自体は能力が高い武将だと思っていますし、カリスマの後の「後継者の条件」をしっかり認識していればもしかすると「武田幕府」なんてあったかもしれません。

現代の国家元首でいうとシンガポールの三代目首相「リー・シェンロン」もそうですね。

初代の父「リー・クアンユー」はカリスマ的存在でしたが、その息子はASEANやシンガポールでは初代のようなカリスマ性はないという評価です。ただ、私はそれで良いかなと思っています。彼は幼少時から高度な教育を受けているせいもあり、インテリで地味ですが堅実であり「秀忠」と結構かぶります(笑)。

国家元首の世襲制は批判され、「明るい北朝鮮」などと揶揄されていますし、私は統制されすぎていて投資先や居住地としてはあまりお勧めしませんが、後継者としては難しい国家の舵取りをうまく運営しているのではないかと思っています。

投資先の二代目(後継者)の評価の仕方

冒頭のスズキ自動車のように、世襲でトップが交代する際には投資を継続するかどうかを見極めることは大事なことです。後継者の舵取りにより大きく業績が変わることもあります。カリスマトップが交代する際には凡庸な後継者は独自色を出そうとするものですが、そこを当面じっと堪えられるかが今後組織をうまく機能させれるかにかっているような気がします。

また、現代では投資先としてだけでなく、サラリーマンの方も「事業承継」で中小企業を買収可能な時代です。もし、ご自身が投資先として買収する企業を運営する際にも、あからさまに先代を否定することは「百害あって一利なし」かなと思っています。

先代がカリスマの場合、過去は美化されがちですので、その最高点で承継しガチンコで先代と競うことは後継者が取ってはならない愚策であると思っています。

まずはうまく継承してその後徐々に独自色を出すという「秀忠」の進め方は、現在のこの時代でも十分に参考になるのではないでしょうか。


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