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何者にもなれないわたし
埋もれている、完全に。
いったい何に?生活に。
毎日、真夜中なのか早朝かわからない未明、次女(1歳)に叩き起こされる。この頃の次女はわたしの顔の上に座り、オムツ替えしてほしいアピールをするのが定型になっている。
どれだけ深い眠りに落ちていても、無理やり起こされるのは母の常か。オムツを変えて、ミルクを飲ませ、満足した次女を寝かしつけたあと、わたしの方は体力がなくて二度寝ができない。しかたなく返信の滞るメールなどを、夜明け前から打っている。
寝転がって数時間たつと、起きる時間がやってくる。
朝は忙しい。
起きてすぐに顔を洗い、服を着替えて、二人分の連絡帳を書く。平凡な日々の小さなエピソードを絞り出してどうにか空白を埋める。苦行である。
それから、二人のカバンに必要な分の着替えをつめる。幼児は、着替えが多い。どれだけ洗い替えの服を用意しても、洗うより汚すスピードの方が早く、自然な上下の組み合わせが追いつかない。うっかりすると次女は、ボーダーの服にボーダーのズボン、ボーダーの靴下という、全身ボーダーの組み合わせが出来上がってしまう。まずいと思っていても、避けられない時がある。
次女がまず起きて、お菓子を「開けて」と持ってくる。ビスケットはギリギリ朝食っぽいかな…と開けて渡す。ちなみに連絡帳に「食べたもの」書く時、ビスケットはパンに変換される。そんなとこで嘘ついてもしょうがないのに、小心者のわたしは先生の目を気にしてしまう。
しばらくして長女(4歳)が起きる。次女のビスケットを見て、当然、長女も食べる。しかし、長女はかなりの偏食なので、朝、食べ物が口に入るだけでもOKだと思っている。
また、長女はピンク色しか着ないというこだわりがあり、毎朝の着替えもなかなか時間がかかる。あらゆる店であらゆるピンクを集めて用意しているが、日によっては「これは紫、NO」とか言われてしまう。余裕があれば長女が気に入った服は3枚買う。朝の揉め事は少ない方が良い。
二人の準備をしていたら、自分の用意する時間がなく、日焼け止めクリームだけ顔に塗って帽子をかぶって、なんとか誤魔化すという日も少なくない。マスク生活の怠慢である。
子どもたちを送り届けたあと、家に戻ってから、自分の時間がはじまる…と言いたいところだが、地層のようになった洗濯物が目に入る。
昨夜、干していた洗濯物を取り込み、新たに洗われた洗濯物と交換する。小さな靴下たちが、相方を求めてさまよっている。ピンク好きな長女のピンク服がずらっと並ぶと、まるでお花見をしているような、少し華やかな気持ちになって、じつはピンク狂も悪くないのかも、とか思う。(長女はピンクがたくさんあると、心からしあわせそうである)
おちついてPCを立ち上げる頃には、家に戻ってから1時間は経っている。少し作業をしたところで、あっという間にお昼がきてしまう。お昼を食べてまた少し作業をすすめると、あれよあれよという間にお迎えの時間がやってくる。今日もたいしたことなかったなぁと思いながら園に向かう。
ふと、自分を顧みたとき、何者でもないと感じる。漠然とした不安に襲われると、何者かになって、安心したいときもある。
Twitterでフォローしていたフォトグラファーが活躍している様子をみて、そっとフォローを外した。活躍できていない自分と比べて嫌になるくらいなら、情報を外したほうがいいと今は思う。活躍するフォトグラファーは悪くない。今のわたしが嫌になるだけ。そうやって嫌な気分から逃げることに慣れて、すっかり井の中の蛙になっているような気がする。どうなんだろう。
本当はもっと写真が撮りたい。いろんなところに行きたい。もっと仕事もしたい。見たことのないものを見てみたい。新しい機材をたくさん使いたい。自分勝手に願望を言えばキリがない。
しかし、フォトグラファーは山のようにいても、ふたりの母親はわたしだけしかいないと思うと、自分のことは小さく見えてしまう。いや、どちらかというと、わたしが母になることを選んでいる。主婦に向いていないことを自覚しながら、子育てすることを望んでいる。自分が子どもの頃、欲しかった環境を子どもたちには与えてあげたいと思う。そうやって、わたしも子ども時代をやり直している。
本当は、わたしもピンクのドレスが着たかった。だけど似合わないと言われて、ズボンばかりだった。いつも短髪にされて身体も大きかったから、よく男の子に間違われた。「僕」と呼ばれる度に傷ついた。だけど傷ついていることを誰にも言えなかった。わたしだってプリンセスになりたい子ども時代があったんだ。
ずっと誰かの望む自分を空気よんで選んできたんだ、もう、いいじゃないか。自分の好きな方を選んでも。
何者にもなれなくていい。
今日も、わたしは生活に追われている。これを書いている今だって、あと30分後には園のお迎えがあるのででなければいけない。それが100%素晴らしい!とは思えないけど、小さなしあわせは感じる。そんな毎日のなかで、しみじみと写真を撮っている。
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