一人で行った映画館
映画にまつわる思い出。
映画館と言えば、ほとんどの方は2人、もしくは友達とワイワイと向かう事でしょう。
僕も子供の頃は家族と、時には母と二人だけで行きました。母は映画館ではチケットを買わず、街のチケットセンターのようなところで100円ほどの割引だったと思いますが割引チケットを買い、父と待ち合わせ時間を確認して僕を映画館に連れて行ってくれました。いま思うと父はその時間パチンコでもやっていたのでしょう。
母と二人で初めて一緒に行った映画はネバーエンディングストーリー2。ファルコンと少年の冒険の物語の続編です。当時の母は39歳。僕は12歳。思春期を迎えていた僕は母と二人きりで映画館に来る事が気恥ずかしく、ほとんど内容も覚えていません。でも、映画を観終わった後に初代ネバーエンディンストーリーのファンだった母がまるで少女のように興奮し半分泣きながら面白かったね~と言ったその顔を僕は今でも忘れられません。
その数年後、僕は親元を離れ県内の全寮制の学校に進学しました。17歳の頃だったでしょうか。自我が芽生え始め、とにかくカッコつけたくて一人で映画館に行こうと思い立ち街に向かいました。
途中の公園でリンゴもかじりました。
内心ドキドキしながら、家族としか行った事のなかった街の映画館へ行き、上映中の映画を確認しました。
マディソン郡の橋。
クリントイーストウッド監督?俳優としての名前は知ってたけど監督?その時は何も知らず少し不安になりましたが知っている人の映画というだけで、その映画に決めました。
もともとカッコよく一人で映画館に入る事だけがモチベーションだった僕は上映中の他の映画の予備知識も無く、待ち時間の合間に母の教えを守りチケットセンターでそのチケットを買いました。
館内はまばら。ほとんどカップルです。やけにざらつく椅子のカバー。変な匂い。
なんだか心細いけど、オレは一人で映画館に来れる男なんだと。開演を待ちました。
マディソン郡の橋。
3日間の不倫。
想像を越えた大人の世界がそこにはありました。
少年だった僕はその映画を一人で観に来た気恥ずかしさとカッコつけていた自分のカッコ悪さが相まって家族にその映画を一人で観た事を言えませんでした。友達にも。
この話を書くにあたって、クリントイーストウッド監督の事をネットで調べました。彼は現在92歳との事です。
調べる中で「クリントイーストウッド死んだ?」とか心無い言葉も出てきましたけど、彼も僕の母も父もまだ現役です。
でも、彼らがいつか死んだとしても僕にとってはこの映画の思い出はネバーエンディングストーリーです。
#映画にまつわる思い出