乗越たかおダンスマガジン評論集 【お試し版】 4
本書は2013年11月号から、2023年3月号までダンスマガジン誌(株式会社新書館発行 https://www.shinshokan.co.jp)に掲載された乗越たかおの舞踊評論をまとめた「集成版」のお試し版です。
1パックに評論が4本入って各300円とお値打ち価格で、気になる演目だけ読むのも可。第一弾は全21+1パックのラインナップで約10年間の流れがわかります。
※無断複写・転載を禁じます。この資料は、許可なく公開、書き換え、または再配布することはできません。
ローザス『ドラミング』
(初出 ダンスマガジン 2015年7月号 約1100字)
寄せては返す波の波長や、優美な巻き貝の曲線など、自然界には様々な法則が内在している。人間は無意識下にそれらを感じとり、世界を「美しいもの」として認識しているといわれている。
ローザスの『ドラミング』は意図的にそれらの法則を採り入れた作品だ。ダンサーは床に描かれたフィボナッチ数列が描き出す巻き貝の螺旋の上を歩き、1人、2人、3人、5人、8人……と数列の比率通りの人数が登場する。曲はミニマル・ミュージックの巨匠、スティーブ・ライヒの同名曲。異なるテンポが反復されるうちに重なったり離れたりするポリリズムは、川のせせらぎや木漏れ日の揺らめきのようなうねりをもたらす。ダンスも曲(録音を使用)も、極めて厳密に遂行されることで、逆に有機的に息づいてくるのがこの作品の見所である。「自然から法則を抽出し、舞台上に還元してみせる試み」といえるだろうか。
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