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乗越たかおダンスマガジン評論集 【お試し版】 11

本書は2013年11月号から、2023年3月号までダンスマガジン誌(株式会社新書館発行 https://www.shinshokan.co.jp)に掲載された乗越たかおの舞踊評論をまとめた「集成版」のお試し版です。
1パックに評論が4本入って各300円とお値打ち価格で、気になる演目だけ読むのも可。第一弾は全21+1パックのラインナップで約10年間の流れがわかります。
※無断複写・転載を禁じます。この資料は、許可なく公開、書き換え、または再配布することはできません。
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86本全てと特典評論4本収録のお得な「集成版」はこちら。


サーカス・シルクール『リミッツ/LIMITS』


 (初出 ダンスマガジン 2018年12月号 約700字)

 冒頭から引き込まれた。舞台上の布には海、上空の布には雲がそれぞれ投影されている。「空」には穴が空いていて、男がその中に入っていくのだが、時に落ちていくようでもあり、上下の感覚が次第に攪乱されていく。

 サーカス・シルクールは、1995年にティルダ・ビョルフィスを中心に設立され、いまや急進する北欧の現代サーカスを代表する存在となった。彼らが拠点としているスウェーデンのストックホルムは、とくにサーカス教育で名高く、大学とアーティストが一体となった研究と新しい表現の開発が進み、世界でも注目されているのだ。

 本作にも長さの違う中空のスティックが様々な風切り音を出す「演奏するジャグリング」や、トランポリンやシーソーでのアクロバットなど、5人のパフォーマーと1人のミュージシャンによるサーカスの魅力が一通り入っている。しかし体技だけではないのだ。

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4,224字

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