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エミール・ガレ、自然への眼差し|北澤美術館
本年の課題「諏訪を巡る」、今回は諏訪湖畔にある北澤美術館を訪れました。
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北澤美術館は、バルブメーカーKITZ(旧北澤バルブ)の創業者である北澤利男(1917‐1997)が、出身地である諏訪の地域文化振興と発展のためにと、自身が収集した美術品を公開する場として開館しました。
1000点を超えるガラス作品のコレクションで有名ですが、もともとは東山魁夷や山口華楊などの現代日本画の収集がはじまりだったようです。
コレクションのモットーは、「美しいものを愛する素直なこころ」
いいですね~。
さて、今年は開館40周年記念ということで、特別展が開催されています。
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展示室は、一階にガラス作品、二階は日本画と分かれており、ガラス展示室のみ撮影OKでした。
ではさっそく、一階展示室から参りましょう~
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エミール・ガレといえばこれ!
展示室入り口でひとよ茸ランプがお出迎えです。スペースにこの作品ただひとつ、別格感が漂っています。
エミール・ガレ(1846-1904)
フランス東北部ロレーヌ地方生まれ、父親の事業を継いで工芸家として歩みはじめる。若きガレは自由な発想で、それまで見向きもされなかった野の花や昆虫など自然の美しさをデザインに取り入れ、「アール・ヌーヴォー」を誕生させました。
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金魚鉢のような形ですね
のちのパリ万国博覧会ではグランプリに輝き、国際的な名声を得ます。そして、その頃のガレに大きな影響を与えていたのが、「ジャポニズム」。日本の浮世絵や工芸品に描かれた四季の風情や自然の息吹は、ガレにとって衝撃的だったようです。
ガレの作品はガラスだけかと思っていましたが、陶芸作品も多くあり、それもまた素敵でした。
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緑の瞳はガラス玉でリアル
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とても日本っぽさを感じる
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よくあることではありますが・・
ジャポニズムの影響を受け一時代を築いたアール・ヌーヴォーの芸術家といえば、
アルフォンス・ミュシャ
グスタフ・クリムト
ロートレック
なども有名ですが、偶然にも、ミュシャとクリムトは若い頃大好きでした!きっと無意識のうちに日本的なものに惹かれていたのでしょうね。
陶芸品の次は、ガレの神髄ともいえるガラス作品。
当時、一工芸品に過ぎなかったガラス細工を芸術といわれる水準にまで高めた作品群は、とにかく美しく圧巻でした。
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こういう色合いスキ💚
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リラックスできる優しい灯り
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珍しい色の大きなあざみに
目が釘付け
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ちょっとモダンな感じで、
こういうのもスキ
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「ひとよ茸」はその名前のとおり、自らの酵素によって一夜で溶けてなくなってしまう短命なキノコです。
ガレはひとよ茸を生と死の象徴として繰り返し作品に取り上げています。本作では緑のガラス層の間に草や葉のモチーフを入れ、キノコを取り囲む大気の空気感まで見事に表されています。
ガレの言葉「我が根は森の奥深くにあり」を思い起こさせる名作です。
自然を愛する植物学者でもあったガレだからこそ、単なる写しとりではなく、生命の躍動感あふれるこのような作品ができたのでしょう。
つづいて、ガレのよきライバルであったドーム兄弟の作品も。
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美しさにうっとり🩷
じつは、今回の展示のなかでこの作品が最も気に入りました。緑から薄紫へのグラデーションと、そこに描かれた可憐な春の草花。春生まれにはたまらないデザインです。
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松ぼっくりとキノコは身近に感じる
最後はアール・デコ期を代表する作家、ルネ・ラリック(1860-1945)のガラス芸術。
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ほぼ貸切の状態で、およそ90点のガラス作品展示をゆっくりと見て回ることができました。
あとから見返してみると、ガレの作品は昆虫が立体的に装飾されたものも多数あったはずなのに、全く写真におさめていないことに気付きました。虫はあまり得意ではないので・・・
さて、ガラス作品に満足したあとは、二階の日本画展示室へ。
現在は「北澤コレクション名品展 冬」として、24作品が展示されています。
特に気に入ったのは次の2つ。
・中路融人(1933-2017) 朝靄
・小倉遊亀(1895-2000) 酣(たけなわ)
小倉遊亀さん(女性)は、なんと御年100歳を過ぎても制作に取り組んでいたという説明書きを見てびっくり!
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87歳で描かれたこの絵の生き生きとした様子、すばらしいですね。
アール・ヌーヴォーと日本画、どちらも私が好きなジャンルでとても楽しめました。諏訪にこんな素敵な美術館があったなんて、、
日本画展示室は季節によって作品が入れ替えされるようなので、また違う時期に訪れたいと思います。
美術館を出たあとは、諏訪湖畔をすこし散歩。
天気も良く、正面に富士山がはっきりと見えました。波の音も心地よく、この気持ちよさは癖になりそうです。
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見えますか?
さて、つぎの諏訪巡りはどこへ行こうかな?
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