『いわき時空散走フェスティバル24春』大野・玉山ツアー
5月2日(木)~5月6日(月)の5日間、『いわき時空散走フェスティバル24春』を開催しました!『いわき時空散走』プロジェクトでは、毎年、春と秋に、完成した各エリアのマップのお披露目とツアーを実施していきます。
今回のフェスティバルでは、昨年の『いわき時空散走フェスティバル23』で実施した、植田・佐糠・金山エリア、小川郷エリア、大野・玉山エリアの3つのツアーに加えて、新しく赤井・平窪エリア、平エリアのツアーも実施されました!
【『いわき時空散走フェスティバル24春』スケジュール】
5月2日(木)/大野・玉山ツアー
5月3日(金)/植田・佐糠・金山ツアー
5月4日(土)/小川郷ツアー
5月5日(日)/赤井・平窪ツアー
5月6日(月)/平ツアー・いわき時空散走マップを囲んで語る会
まずは、初日の大野・玉山ツアーの様子からレポートしていきます!
【日時】2024年5月2日(木)10時~15時
【集合・解散】ワンダーファーム
【サポーター】松本恵美子(まつもと・えみこ)
大野・玉山ツアーでは、今回も大野出身の松本恵美子さんが一緒に巡ってくれました!
そして今回は、”八茎鉱山の社宅に住んでいた”という松本さんの先輩と共に、前回は踏み入れなかった『八茎鉱山』へ!ずっと気になっていたあの看板の謎が明らかになりました!
また、ずっとお話を聞きたかった方に偶然出会えたりなど、やはりこのツアーは何が起こるか分かりませんね・・・
今回新しく巡ったスポットや新情報を中心にツアーの内容をレポートしていきますので、気になった方は『いわき時空散走フェスティバル23』大野・玉山ツアーのレポートも合わせてお読み下さい。
ーワンダーファームから出発!
いわき時空散走では、駅を基点にマップを作成していることもあり、普段は駅スタートなのですが、今回の集合は四ツ倉駅ではなくワンダーファーム!
スタッフチームが準備を進めていると、ワンダーファームの元木さんや、颯サイクルの木村さんに偶然お会いし、いわき時空散走についてなどお話しすることができました!
元木さんからは、「玉山古墳のあるこの辺りが昔はいわきの中心だんったんじゃないか?」などと、ツアーが始まる前から話が盛り上がって盛り上がっている様子でした!
話しているうちに、大きなトマトのオブジェ前に参加者の皆さんがだんだん集まってきました。今回は初参加の方が多く、中には市外からの参加も!そして嬉しいことにリピーターの方も何人かおられました!
皆さんが集まったら自己紹介とツアーコースの説明をして、いざスタート!
最初のスポットまで、のどかな田園風景の中を走っていきます~
ー別世界だった日鉄社宅
トロッコの廃線跡を辿りながら走っていくと、到着したのは『万年コンクリート工業(株)』付近。参加者の皆さんは、「ここはなんだ?どこだ?」と不思議そうな様子でした。
松本さんが指さした先には、どうやら昔走っていたトロッコの出発口があるとのこと。今回は草木が茂って少し見えにくかったですが、昔はここ八茎鉱山から四ツ倉駅までトロッコが走っていたのです!
いま私たちが走ってきた道も、トロッコの廃線跡だと聞き、参加者の皆さんは驚いている様子でした。
四ツ倉駅前は、元々『住友セメント』の工場地帯でした。つまり、八茎鉱山で採掘した鉱石や石灰石をトロッコで駅前の工場まで運び、加工されていたそうです。今でも、石灰石が採掘されており、コンクリートの原料となっています。
松本さんは、玉山にトロッコが走っていた当時の景色をよく覚えているとのこと。しかし、一方で、八茎鉱山の社宅に住んでいた松本さんの先輩である村松さんは、「あまり覚えていない。」と言います。
話を聞くと、大野の農家に生まれた松本さんと、八茎鉱山の社宅に越してきた村松さんは、生活範囲が全く違ったようです。
お二人が育った大野・玉山で、何を見て、何を感じて、どう過ごしてきたのか。それぞれの視点から、お話をお聞きしました!
まず、坂を上った先に出てきたのは謎の看板。周囲には万年コンクリートの事務所しか建物はないのですが、『新八茎鉱山玉山社宅配置図』と書かれています。その配置図をよく見ると、社宅だけでなく、”遊園地” や ”プール” なども記されています。一体ここに何があったのか・・・
村松さん:「遊園地って言う人もいましたけど、大した広さではなくて、行員さんの共用浴場とブランコがあった。それで、今あの事務所があるところに生協があって、同じ敷地内に魚屋と八百屋があって。あっちに行くと病院があったね。」
ここには社宅だけでなく、生活に必要なものが揃う、ここだけで完結できる街になっていたようです。また、行員と職員で住むエリアは別だったようで、当時は、行員さんと職員”さま”というような、時代だったとのこと。
村松さんは、お父さんが日鉄鉱業グループで働かれていて、村松さんが小学1年生の時に新八茎鉱山株式会社の職員として、この社宅に越してきたそうです。
村松さん:「でも最初は、ずっと四倉小に通ってたの。それも行員と職員の家で分けられてね。同じ場所に住んでるのにおかしいだろって思ってたんだけど。そしたら、6年生の時に、やっぱりおかしいってみんな気づいて、全員大野一小に行くことになったのよ。」
松本さん:「そうそう。先輩(村松さん)が6年生で、私が5年生の時に、田舎の農家の子ばっかりだったところに、一挙に都会の子が転校してきてさ、すごくカルチャーショックだったの!私、男の子がピアノ弾くなんて知らなかったもん!ここに来ればなんでも買えるし、美容室なんかもあって。だから、私からすると近くなのに別な地域というか、宇宙船で町ごとやってきたようなイメージだったなあ。」
村松さん:「当時、日鉄というのは特別なイメージがあって、成績良くて当たり前と思われてた。姉は、6年生の時に転校したから、前の学校の方が進むのが遅くて、最初勉強がついていけなかったの。そしたら、”日鉄なのに”って周りから散々言われてね。」
松本さん:「本当に日鉄の子たちは親がエリートだからか、みんな頭が良くてね。でもおかげで私たちも感化されて、大野中学校で私たちの代はすごい優秀になったんだよね(笑)」
村松さん:「あと、社宅の子たちは、日鉄が出してる専用のバスがあって、それで登下校してたね。」
つまり、松本さんは、学校まで徒歩で登校しており、買い物へ行くにも駅前の方まで行っていたので、四ツ倉駅まで走るトロッコを毎日見ていたけど、松村さんの生活範囲は、社宅敷地内がほとんどで、学校までもバス移動だったため、トロッコの記憶が薄いということでした。
同じ時代に、同じ大野・玉山というエリアで育ったのに、見てきた景色や記憶はこんなにも違うとは面白い!
松本さんは前から、「大野・玉山の人たちと巡りたい。みんながこの地域をどう見てきたのか知りたい。」と話していました。
今回のツアーで、同じ地域の中でも人それぞれの暮らしがあり、視点があり、それを地域を巡りながら共有することは、ここで共に暮らしていくうえで、とても重要なことかもしれないと気づかされました。
ー隠れた名旅館が並ぶ、玉山温泉
次は、八茎鉱山の先へ進み、『玉山温泉』へ!
こんなところに温泉旅館があることを皆さん知っていましたか・・・!
玉山温泉には、『藤屋』『石屋』『玉屋』という三つの旅館が並んでおり、どこも風情がある素敵な建物で、のんびりと温泉と宿泊を楽しめます。
その中でも、『藤屋旅館』さんにはスタッフもリサーチの際に一度宿泊せていただき、最高な朝を迎えられたと話していました!
その時、プロデューサーの陸奥さんが発見したのが、戦艦陸奥海軍大将の高木武雄さんの写真。高木大将は知っている方も多いかもしれませんが、スラバヤ沖海戦では漂流した米兵を救助し、名将としてスミソニアン戦争博物館で紹介されています。
「何でここに、高木大将の写真が?」と思い、陸奥さんが旦那さんに聞いたところ、実は、藤屋旅館が高木大将の生家とのこと!これには陸奥さんも驚き、旦那さんから高木大将の直筆の手紙など様々な資料も見せてもらったそうです。
そんな話を和気藹々としていると、いつもお世話になっている藤屋旅館の女将さんが外まで出てきてくれました!
女将さん:「昔は、自炊して湯治する人がほとんどだったの。あとは、相馬とか、平の商店街の方、農家の方も多かったかな。当時は、子供の栄養状態とかもそんなに良くないから夜泣きがひどくてね、でもここの湯が子供に良いっていうんで、みんな孫連れてきたのよ。親たちは働きに出て忙しいからおばあちゃんたちが孫連れて1週間くらい滞在してた。でも時代の流れと共に、自炊する人が少なくなって、今は通常の旅館宿泊になってます。」
今と昔で、温泉旅館の利用の変化に驚きました。しかも、おばあちゃんが孫を連れて1週間もここで過ごすという、今ではなかなか見ない光景ですよね。女将さんのお話を聞いて、子育てや家族の在り方の変化にも考えさせられました。
女将さんも、いわき時空散走マップの完成を楽しみにしてくれているようで、やはり地域の方々に喜んでもらえて、応援してもらえることが何より嬉しいです!
ー青空の下で、お昼ごはん!
さて次は、『KiTEN』さんのコットン畑へ!KiTENさんは、オーガニックコットンを栽培しており、収穫したコットンで製作した手ぬぐいやジーンズなどの販売も行っています。
そして、畑の前には最近新しくデッキが完成しました!大野の景色を一望でき、晴れている日には最高なロケーションです。今日は、ここでお昼ご飯を食べることに!各自持参したお昼ごはんを青空の下でいただきますー!
また、松本さんが『大野観光いちご園』のいちごとトマトを皆さんにおすそ分けしてくださいました!!採れたてのいちごとトマト、甘くて香りが良くてどちらもとっても美味しかったです!
お腹も満たされ、ぽかぽかの太陽と、心地よく吹く風・・・
「お昼寝したい!!」ということで、デッキに寝転がる人も何人か。とっても気持ちよかったですね~
蝶々、カエル、トカゲなど、様々な生き物たちも発見し、自然の豊かさとありがたみを感じました。良い天気の日には、ぜひKiTENさんのデッキを皆さんご利用ください!
そして、最後にKiTENの金成さんに畑も案内していただきました!よく見ると、いくつかコットンの芽が出ていました!また、コットンの収穫の時期に合わせて、ツアーをしたいなと考えております!
昼休憩を終えて、次に向かうのは、『玉山古墳』です!ここからは、前回のツアーと同様に、大野第一小学校、玉山古墳、瀧夜叉姫の墓、大野中学校を巡りました!
「え?古墳あるの?」と思った方!実は、いわき市で1番大きい前方後円墳が玉山古墳であり、色々と面白い背景をもった熱いスポットなので、詳しくは前回ツアーのレポートをご覧ください!
ーまさかの出会い・・・!
そして、最終スポット『恵日寺』に到着!
松本さんがいつも通り参加者の皆さんに説明をしていると、「こんにちは~、何の皆さんなんですか?」と、ある方が登場・・・!
なんと、恵日寺を管理している高木さんでした!!リサーチ中から、一度お話を伺ってみたいと思っていたのですが、なかなか出会うことができず、まさかのツアー中に偶然お会いできるとは・・・!
いわき時空散走メンバーたち大歓喜でした!
高木さん:「ちょうどお寺に寄ったところで。もしお時間あるなら少し話しましょうか?」
ということで、お言葉に甘えて、お話していただくことに!
松本さん:「今、鳴龍や、左甚五郎さんの話とかしてたんですよ。」
高木さん:「そうなんですね。一応、左甚五郎作と言われています。お弟子さんとかかもしれませんが。(笑)よく見ると、梁にも龍の鱗が彫ってあるんですよ。龍が彫られた後、目の前の田んぼの水がなくなったらしくて。夜な夜な龍が水を飲んでいるからだという話になり、この龍の耳に釘が刺さっているんですけど、それから田んぼの水が減ることはなくなったという話があります。」
高木さん:「恵日寺は元々、和尚(おしょう)さんを輩出する寺で、北は浪江あたり、西は三春、南は北茨城の方まで末寺があります。有名なところだと、閼伽井嶽や沼ノ内弁天もそうです。変な話、いわきFCの必勝祈願は、閼伽井嶽でやっていましたけど、恵日寺は元々平藩の祈願寺で、閼伽井嶽は恵日寺の別当なんです。」
寺澤さん:「別当ということは・・・?」
陸奥さん:「ご隠居が入る最後のお寺だね。別当寺院。」
参加者:「恵日寺は歴史的にも、たしかいわき市で1番?古いお寺だとか。」
高木さん:「1,2番と言われていますね。本堂も、平藩の祈願寺ということもあって戦争で燃えちゃったんですけども、その前は相当大きかったんですよ。もし燃えてなければ、閼伽井嶽薬師や夏井廃寺と並んで文化財とかになっていた可能性も。」
陸奥さん:「いわきFCもこっちに来てたはず!?」
高木さん:「かもしれませんね(笑)」
他にも知らなかったお話をたくさんお聞きすることができました!そして、本堂を開けてくださることに!特別に本堂の中を見学させていただきました。
本堂の中に入ると、壁にはびっしりと恵日寺に関する様々な写真や資料が展示されていました。海軍大将高木武雄さんの写真や、瀧夜叉姫に関する資料など気になるものがたくさん・・・!
高木さん:「東京の国立劇場などで舞台演劇をやっている団体さんが、ここまで来てくれて瀧夜叉姫の舞踊を奉納してくれたんです。ほかにも広島県の神楽団が、以前牛久で講演してた時にここにも来てくれました。その時に使ったのがあのお面です。」
参加者:「でか!!怖い!(笑)」
他にも、瀧夜叉姫の物語について、小学生が分かりやすくまとめた発表資料が飾られていたりなど、この場所の歴史や物語が大切に保管されていました。まちの歴史や文化、物語は、伝えて、繋げてくれる人がいないと簡単に消えてしまいます。今までの歩みが見えて、伝えれる人がいること、本当に素晴らしいなと思いました。高木さん、ありがとうございました!
その後、ワンダーファームまで戻り、無事ゴール!!今回のツアーは、オールスターでしたね!
ツアーは何が起こるか分かりません。いわき時空散走のツアーは、まったく同じツアーはなくて、まちは変化するものだし、自然の風景も季節によって異なるし、今回のような偶然の出会いや発見があることも。
何度参加しても楽しんでいただけるツアーだと思いますので、リピーターの方もまだ参加したことのない方も、皆様またご参加ください!
文章:井上栞里(NORERU?広報)
写真:寺澤亜彩加(事務局)、井上栞里(NORERU?広報)
■『いわき時空散走フェスティバル24春』レポートはこちら
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