Chip Tanaka
田中宏和さんが先日 "Chip Tanaka" 名義で発表した2ndアルバム『Domingo』を聴きながらこの note を書いている。
彼は、当時任天堂に在籍しながらゲームウォッチ〜ファミコン全盛期を音源開発から支え、今もなおゲーム・アニメ問わず数々の名曲を生み出しているレジェンドだ。
小学校の頃『バルーンファイト』の BGM を聴いた時、跳ねた独特のリズムと浮遊感あるメロディは、心地よく、それでいて不思議な違和感があった。
後にそれは、彼がダブやレゲエ畑の人で、積極的にそのリズムを取り入れていた…というエピソードで納得できるのだが。
『パルテナの鏡』を初めてディスクシステムで遊んだ際、タイトルの音楽に心を奪われてしまい、本編を始める事を忘れずっと聴き入っていた記憶もある。
『メトロイド』『MOTHER』『レッキングクルー』『ドクターマリオ』など、他にも数え切れないほどの名曲たちがゲームの中から生まれ、多くの人たちの心に深く刻まれている。僕より少し下の世代などは、『ポケモン言えるかな?』などが馴染み深かったりするかも知れない。
僕の中では近藤浩治さんの「マリオ・ゼルダサウンド」がポール的なら、田中宏和さんのサウンドはジョン…的な位置付けをしながら、当時から今にかけての任天堂サウンドを勝手に楽しんでいたりする。
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田中さんは、いわゆる他の有名ゲーム音楽作曲家が過去の音源を懐古的に楽しむのとは違い、極めて前衛的かつ精力的に新しい作品を作り続けている、希少性の高いタイプの人だ。きっとそこが、国内外問わず多くの新しいファンを獲得し、虜にする所以だろう。
Chiptune をベースとしながらも、エレクトロでスタイリッシュなサウンドは、彼のこれまでの先駆的な姿勢、音源開発も含めた作曲者として時代の音楽を背負ってきたという自負が垣間見え、何より今この瞬間が楽しいという喜びに満ち溢れている。
そんな彼が、"Diggin'in the Carts" 以来であるゲームのドキュメンタリー『ハイスコア -ゲーム黄金時代-』(エピソード2)に登場しているので、Netflix に加入している人はぜひ観て欲しい。
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田中さんの魅力は、「不良なんだけどいろんな音楽を知っていて一緒にいると楽しいお兄ちゃん」みたいな雰囲気を感じさせてくれるところ。これは、話をする機会があるとき、新旧問わずどの音楽を聴いているときも、必ずどこかで感じる。
今回のアルバム『Domingo』も、聴いていると、やっぱり田中さんのルーツのようなものがそこかしこに散らばっていて、とても楽しい。
彼は、憧れの不良的なお兄さん的存在でもあり、今なお輝き続ける偉大なメンターのような存在として、常に僕の前を歩いてくれている。
僕も楽しいアルバムを作ろう。
今日はこんなところで。