TXT考察:世界を繋ぐ火 -万物流転-
今回はTXT作品を読み解くためのヒント的な内容です。
神話とは異なったアプローチで考えていきます。
TXT作品と火
TXT作品の中には火の描写が多くみられます。
「Run Away」「Magic Island」「Can't You See Me?」「0X1=LOVESONG」などが例として挙げられます。
このことから「火」とTXT作品には強い繋がりを感じているMOAも多いでしょう。私も過去の考察で「火」=「世界の終わり」ではないかと述べさせていただきました。
実は古代ギリシャの哲学者に「世界」を「火」であると考えた人物がいます。ヘラクレイトスです。
彼の話を進める前に、まずギリシャ人のものの捉え方が神話から理性に変化していった過程について紹介します。
神話からロゴスへ
前述の通り古代ギリシャ人は、自然の摂理を神話から理性へと考え方をシフトしました。知的好奇心に駆られたギリシャ人は知の探究を始めたのです。
そして哲学(知への愛)が生まれ「万物の根源は何か」という問題提議をもとに思考を始めました。
その過程の中でヘラクレイトスは 「世界とは何か」という問いに発展し、世界を「火」であると考えました。
そして彼が説いた「万物流転説」は、後の哲学者にも大いな影響を与えました。では彼のこれらの思想を探ってみましょう。
ヘラクレイトス「世界は火である」
「火」という言葉を聞いて皆さんはどのようなイメージを持ちますか?
ヘラクレイトスは「絶えず変化しながらも同じ姿を保ち続ける」と説きました。
これは一体どういう意味かというと
共通してこれらを言葉で表すとしたら「火」ではありますが「形」は同じではありません。一秒前の火、今見ている火、一秒後の火も同じではありません。
「火」は「変化」をしている
これがヘラクレイトスの考える「火」でありそれは「世界」にも言える…ということです。
もし前世の自分、現世の自分、後世の自分がいたとして、自分という世界は共通した火であり、生きる時代によって燃えては消えを繰り返しているのだと想像するとめちゃくちゃ面白い考えだなと個人的には思います。
「Run Away」「Magic Island」「Can't you see me?」「0X1=LOVESONG」様々な世界線で5人が見ている「火」は紛れもなく「火」ですがそれは姿を変えた「世界」で、共通する「世界」なのかもしれません。
でも私は「火というものは自発的に生まれないもの」と捉えています。「誰か」もしくは「何か」が作用しないと火は生まれません。
ヘラクレイトスは「万人にとって同一のものたるこの宇宙秩序は、いかなる神も、人も造ったものではない。 それは常にあったし、今もあり、これからもあるだろう。」と説いていますが、宇宙秩序=火が「ある」ためには根源として「何か」があったと思うんです。
そこを深掘りしていくのは避けますがTXT作品における「火」という「世界」(あくまで仮説)と ヘラクレイトスの「火」という「世界」には、通ずる点と異なる点があるなと感じたことは自分の頭の片隅に残しておこうと思います。
次に彼が説いた「万物流転説」について紹介します。
万物流転説
こちらの引用文ですが、世界を「火」と置き換えてしまうと、矛盾が生まれるので解釈には注意が必要です。 あくまで世界は「在る」ものではなく「対立するものが調和し変化しながら成る」ということを説いたもので、 その例えとして「火」のようだと表したのだろう…としておきましょう。
彼の「万物流転説」は、のちに確立される「弁証法」の先駆けとも言われたようです。
弁証法
私は専門学者ではないので完全に理解できているわけではありませんがTXT作品を読み解く上でこういった理論があることは手助けになるだろうと思ったので私の解釈のもと紹介します。
弁証法とBlue Orangeade
「弁証法」を確立していったのはヘーゲルという哲学者です。
一人が主張したことに対して、誰かがそれを否定ないし対立ないし矛盾を主張する。それらは相互に補完されながらより高い次元へと統合されて新たな主張が生まれる。
誰かが「青く広がる空を見たい」と言い、それに対して「赤く染まる海を見たい」と言う。そうして「日が海に沈んでいく様子を見たらもっと綺麗だ」となっていくかもしれません。
勘が鋭いMOAはハッとしたかもしれませんが、TXT作品は「●● or ××」だったり「△△と□□」だったり、相反する2つを並べる歌詞がとても多いなという印象があります。
例えば Blue Orangeadeは正にそれで、歌詞の中には以下の表現があります。
少年の成長には、弁証法で述べられている「正⇒反⇒合」が行われているように思うのです。
今後の考察では、これを踏まえ考えていければと思っています。
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本記事はYouTubeの内容を抜粋しテキスト化したものです。
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ーNOREARIKA