Event Report: 北欧・日本のクリーンテック企業が集うピッチイベント(2020/11/2)
ノルディックイノベーションハウス東京(NIH-TYO) 初のピッチイベントとなるNordic & Japanese CleanTech Solutions: Pitch Showcaseが、11月2日、大阪イノベーションハブ (OIH) と GVH#5 との協力で開催されました。折しもイベントに先立つこと2週間、菅首相が温暖化効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにすると発表、温暖化効果ガスの削減に感してEUと共通の目標を持つことになったばかり。これに伴い、クリーンエネルギー関連の話題が一躍メディアを賑わせていました。今後、EU初め諸外国の取り組みや関連技術にも関心が高くなるのは自明であり、北欧の同分野に関連するスタートアップにとっても、日本市場に進出する好機。当日は87名の、主にクリーンエネルギーに関連する事業者様からの参加をいただきました。
<イベント概要>
17:00: 開会挨拶
まずは当イベントを共催している3者、NIH-TYO、OIHとGVH#5. の自己紹介・プレゼンから始まった。
ニコラス・カルヴォネン, NIH-TYO コミュニティディレクター: ノルディックイノベーションハウスは、北欧スタートアップの最大規模化を目指して2013年にシリコンバレーで創設されました。その後NY、香港、シンガポールと拠点を増やし、2020年5月に5拠点目となる東京をオープンしました。北欧は、ユニコーン数(シリコンバレーに続き一人当たりのユニコーン数が多い)、人口一人当たりのスケールアップ企業数(ヨーロッパ一)、さらに起業家への文化的理解(90%の大学生が起業家になることに文化的理解を感じている)など、世界有数の健全なスタートアップエコシステムが存在する。日本からの投資案件も増えており(2019 年に21件)、コロナに影響されることなく、今後益々このトレンドは続きそうです。”
Mayumi Ishitobi, OIH: “OIH は2013年に大阪市により設立されたスタートアップコミュニティです。スタートアップに対する様々な支援を行なっています。大阪市は、海外スタートアップの誘致も積極的に行なっています。2013より毎年開催している国際カンファレンスHACK Osakaや、2020年春からのスタートアップビザの提供などもその一例です。加えて、2020年7月には近隣の京都神戸と合わせて関西圏として、全国に4つ制定された「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」の1つに選定されました。今後益々、機能的なスタートアップエコシステムが構築されていくことが期待されます。また、2025年の万博開催準備も、大阪市を盛り上げています。
Natsuko Takada, GVH#5: “GVH#5 は阪急阪神ホールディングスが運営する、大阪梅田の会員制ワーキングスペースです。投資家、起業家、大学関係者に様々なサポートを行なっています。 Rainmaking Innovation と協力して今月から始まる Startupbootcamp Scale Osaka の運営をしています。またGVH#5は Hack Osaka 2021 (オンライン)の運営にも携わっています。”
17:20: ピッチ
北欧から3企業、日本から3企業の合計6企業がピッチを行なった。それぞれの持ち時間は質疑応答を含めて10分。以下はその概要。
1. Bergen Carbon Solutions (BCS, Norway) Jan B.Sagmo, CEO
“私たちBergen Carbon Solutionsは、カーボンナノファイバー(CNF)を二酸化炭素CO2から製造し販売する会社です。NIH-TYOの会員でもあります。私たちが解決したい問題は、年間380億トンも排出されて地球温暖化の主要原因の一つとなっているCO2です。私たちが提供する解決策は、このCO2を使用し、後には酸素ガスしか残さない方法でCNFを作流ということです。”
“BCSの設備はモジュールベースのため、施設の拡大縮小も簡単に行うことが可能です。例えば、40フィートのコンテナ2つと、リアクター2台で、60トンのCO2を収集し12トンのCNFを排出することができます。”
“CNFの市場規模は2020年は 4.2億USD とされ、2024年にはその3倍に成長すると予測されれいます。鉄よりも100倍の強度があり、プラスチックよりも軽く、銅よりも電気を通しやすい最先端の素材で、様々な分野への応用が考えられています。例えば、自動車製造にCNFを使うことで自動車の重量を10kg軽減できれば、CO2排出は1km走行あたり1g軽減することができます。 世界の自動車台数を考えたら、これは大変なインパクトです。”
“私たちの競合は主にアジアとUSAにいます。現在最大の競合は韓国のLG Chemですが、いまだにCO2からCNFを製造する会社はありません。製造拠点をノルウェーのベルゲンに持っており、2022年までには環境に優しいCNF製造販売のリーダーになることを目指しています。”
Q: 直近のタイムラインは?
A: 現在40-70万ユーロの資金調達中で、2021年1月までに技術改良された製造ユニットの建設に取り掛かり、同年Q2内に完成させることを目指しています。 生産規模を現在の2-5kg/週から、10-20 kg/週に拡大したいと思っています。
Q: BCSの独自性は?
A: 私たちの独自性は、CNFをCO2から製造するということです。私たちと、その先にある顧客の製品をより環境に配慮したものにしています。
Q: 収益モデルは何ですか?
A: CNFを製造し世界に向けて販売することで収益を得ます。
2. Compact Carbon Capture (CCC, Norway) Torleif Madsen, CEO
“CCCは2018に設立されました。元々は2008年に始まったノルウェーの石油会社主導のプロジェクト。主導しているのは、日本でもタンパク質抽出技術で漁業界で有名な Fjell Technology Groupです。”
“私たちの技術は、三菱重工など同業他社のものと類似していますが、大きな差異は溶媒を出す際に高重力を使うことで、コンパクトで軽量な吸収設備を製造していることです (75%サイズ縮小、 50%CAPEX削減、モジュールベースでの組み立てで拡大縮小が容易且つ運用経費の効率化)。”
“当社の技術を船舶に搭載することも視野に入れています。今月フィーザビリティテストが終わる予定で、2022年にデモを実施、2023年には市場への参入準備が整っている予定です。“
Q: 主要な競合他社は?
A: CO2吸収に関連する市場は成長しており新技術も入ってきているが、現在のところ主要な競合他社は、三菱重工など長年の実績がある大手企業です。
Q: ユニットごとの利益率は?
A: ケースバイケースなので一概には言えない。CO2の排出濃度により吸収コストが変わるからです。
Q: 本ビジネスの社会へのインパクトは?
A: CO2が大気中に広がることを阻止することで、地球温暖化防止に貢献することです。
3. Greenbyte (Sweden) Jonas Corné, CEO
“私たちのミッションは、再生可能エネルギーの生産を最適化するための最も有効なプラトフォーマーになることです。”
“現在私たちが使う電力のうち、30%しか再生可能エネルギーからきていませんが、2050年までにはそれが68%にまで上昇すると予測されています (IEA)。つまり、私たちが部屋の電気を、自然環境により左右される世の中になるということです。 私たちは発電所と天気予報からデータを取得し、顧客が最大限のエネルギーを生産し、同時に最大限の利益を生み出せる環境を作ることを目指します。現状では、35GWの風力・太陽光エネルギー (世界の全風力太陽光エネルギーのおおよそ3%)がGreenbyteにインストールされています。 ”
”日本は、島国であるために自国内で発電しなければならないという点において、非常に興味深いマーケットです。2019年に初めて、日本のお客様と契約を結びました。今後もより多くのお客様と巡り会えることを楽しみにしています。 ”
Q: 利益はどこから?ビズネスモデルは?
A: 私たちのソフトウェアの利用料は、顧客がGreenbyteにインストールしているメガワット数によって変動します (年固定制). 顧客のビジネスが長期サイクルに則っているので、私たちもそれに合わせるようにしています。
Q: 日本での主要ターゲットは?
A: 日本の再生可能エネルギー生産者は、3タイプに分けられると考えています。一つ目が電力会社、二つ目が石油ガス会社、そして三つ目が独立系エネルギー生産者(比較的小規模。年金運用で再生可能エネルギーに投資)です。私たちと最も相性が良いと考えているのが3つ目の事業者なので、その方たちにまずアプローチをかけて行きたいと考えています。
4. Water Design (Japan) Natsumi Ito, CMO
“私たちが解決したいと考えている問題は、排水管にたまるヘドロの洗浄です。ほとんどの場合この汚れは薬品で洗浄されています。しかし私たちは 薬品の使用は最善の方法でないと考え、世界初となる、水道管に設置が可能なウルトラファインバブル(UFB)生成ノズルを開発し、この問題の解決に向き合っています。
“UFB とは、肉眼では見ることができない非常に細かい泡で、高洗浄、成長促進、コーティング、ガス溶解などの優れた機能を持つことが科学的に証明されています。このうち本日は洗浄機能についてお話ししますが、その威力は新宿駅構内の公衆トイレや病院の透析機器などでの実験を通じて証明されています。 世界で唯一、普通の水道管に設置することができるノズル型です。今まで大手企業により、UFB効果のある商品は製造販売されてきましたが(東芝洗濯機など)、UFBの効果は当然その製品にのみ有効でした。私たちの技術は、一つのノズルでその建物を流れる全ての水をUFB効果のあるものに変えられるという点が画期的なのです。”
“現在、工場やビル、病院などを対象にパートナーシップ先を探しています。私たちと提携することで、お客様側は衛生や環境面で利益を得るだけでなく、効率性の向上により新たなビジネスチャンスも生む可能性もあります。”
Q: 御社製品にIoTを導入する計画はありますか?
A: 現状では当社製品はスタンドアロン製品です。IoTにつなげていくために、まずは関連するデータ(使用する薬品の減少量や、清掃やメンテナンスにかかる時間の削減など)を収集したいと思っています。
Q:他国でも使用することは可能ですか?
A: 輸入規制などは各国の事情によりますが、商品技術的には、使用される場所によってカスタマイズが可能です。
Q: 塩水淡水化の装置でも稼働実験されたことがありますか?A: はい、実験済みで稼働することが確認されています。
5. AC Biode (Japan) Tadashi Kubo,CEO
“本日は、石炭灰とバイオマス灰をリサイクルして製造する多機能化学製品、CircuLiteを紹介したいと思います。石炭灰とバイオマス灰は、重金属が多く含まれていること、廃棄コストが高いこと、そして地球環境に悪いということが問題。私たちの技術は、この灰から危険物を吸収することができる多機能化学製品CircuLiteを作り出します。.”
“これまでに私たちは日本で一つ(中部電力の石炭灰を空気フィルタリングにリサイクル)、台湾で一つ(米バイオマス灰を化粧品にリサイクル)、プロジェクトを成功させました。現在はヨーロッパとアジアで提携先を探しています。発電所オーナーにエンジニアリングを提供するという形での提携をしています。”
“現在のところ、私たちは灰を多機能化学製品にリサイクルできる唯一の存在です。私たちのチームは、化学、ビジネスそれぞれのバックグラウンドを持ったメンバー集まったバランスの取れた構成です。 ”
Q: どんな種類の石炭灰でも使用可能ですか?
A: はい、石炭灰かバイオマス灰である限り使用可能です。
Q: 石炭灰に含まれるヒ素やカドミウムなどの重金属はどのように対処されるのですか?
A: 我々の特殊技術により除去するため、最終製品にはこれらの重金属は含まれません。
6. Green Science Alliance Co. Ltd.(Japan) Ryohei Mori, CEO
“私たちはエネルギーと地球環境に優しい科学の分野で、最先端の研究開発を行なっています。 商品ラインナップは多岐に渡ります。プラスチック汚染、石油依存、バイオマス廃棄物、二酸化炭素の増大、そして水不足問題です。”
“商品ラインナップは、100% バイオマス生分解性商品(化粧用の人口爪が間も無くメディアに取り上げられる予定)、食料以外の材料からのバイオエタノール抽出、充電可能電池、クアンタムドット、ピコテクノロジー(ナノより小さい単位)、そしてCO2回収と変換です。企業の研究チームや研究機関、大学向けに材料を販売しています。年間売上高は150~200万米ドルで、現在急成長中です。”
Q: 御社の100% バイオマス生分解性商品が分解するまでの期間は?
A: 複数のタイプがあるのでそれによります。数ヶ月で分解するタイプもあれば、1,2年かかるタイプもあります。
18:20: 閉会の挨拶
イベントはNIH-TYOとOIHからの挨拶と、今後の流れの説明で終了しました。本日登壇したスタートアップ、個別に面談を希望される場合は、ぜひお問い合わせください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました!
イベント録画はこちらから↓
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