商業はゲームか?
「大学4年間のマーケティングが10時間でざっと学べる」
阿部 誠
そもそも普段、学習書のようなものを買わない性で、希望のゼミでの活動が始まる前に気合いを入れるために手にした本だった。
大学の商学部マーケティング専攻広告ゼミの末席に座する者として、「大学2年間」分のマーケティング知識は入れているつもりで、しかもそのために卒業要件全124単位のうち60単位近くを専門学習に費やしている。
「1cmにも満たない薄い本で纏められてたまるか」と、「この薄い本を読むのに10時間もかかるか?」が混ざったまま、半信半疑で。
読み終わった感想としては、これは10時間だし大学4年分だわ、です。
めちゃくちゃナナメ読みしてしまった……という後悔が拭えないけど、ナナメ読み出来たのは私が大学の授業をそこそこ真面目に受けてきたからだし、逆に初めましての項目はきちんと読んでも文字の上を目が滑って行くタイプの本。
心持ちわかりやすくて図が多い教科書を読んでいたようなものなので、感想といえばこんなものなのだが、この本を無理矢理にでも読みきって考えたことは「商業はゲームか?」ということだ。
『どのような広告が注目を集めやすいか』『つくったものを売るのではなく、売れるものを創る』『顧客の声を真摯に聞いていればよいのか?』などのキャッチーな見出しが並ぶ中で、そのコンセプトに疲弊している自分がいる。
「行動心理学」や「人間は非合理的であるという仮定」、「個人間の差異」などなど。十人十色も湧き上がる衝動も気まぐれも、そうまでして数値に換算しないと認識できないものだっけ。
統計的なデータをリアルに近づけるために情報を足して足してこねくり回して足して引いて掛けて割ることで、一体何ができあがっていく?
効率よく売るためのアイデアが、消費はおろか生産まで左右するようになれば、一体誰が誰のために何を作っているのだろう?
マーケティングで全てがわかるというのなら、「ぼくがかんがえた最強の〇〇」なんてもってのほかで、「あなたの喜ぶ顔が見たいんです」というシンプルで普遍的な愛の形すら遠い。
「注目を集めやすい広告」を狙うより「いい広告を作って注目を集めた」というシンプルな因果関係の中で戦いたいし、「顧客の声」は「真摯」に聞けば良いと思う私は、これから会社に入ってどうやって仕事をして行けば良いのだろう。
無知ゆえの違和感なのか、方向性の不一致なのか、この違和感を飲み込んで消化できて初めて社会人になれるのか。就活を始めてようやく自分の専門分野にメランコリーとはなんとも情けないけれど、結論のでないモヤモヤに触れることが多い今日この頃である。
すでに次の日に片足どころか両足を突っ込んでいていて、とても1日1冊が続くようには思えないが、とりあえず意地で読み通した。
ナナメ読み上等!(嘘ですごめんなさい、そのうちまたきちんと読み直します)
かれこれ2ヶ月放置していて、ついに1日1冊読書チャレンジに登場。本屋に行く時間がなかったんじゃない。私が外にいる時間に本屋が空いていないのだという言い訳を添えて。