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【ズックと私】

コツコツ仕事をしている。地道に歩を進める作業工程に入り「コツコツ…コツコツやるんだ…」と呪文のように唱えながら働いていた。
コツコツといえば、キツツキ。
コツコツといえば、ハイヒール。
いつもの病気で、他のことが思い浮かぶ。そういえばハイヒールしばらく履いてないなと気づいた。私は普段からカチッとした場面でもスニーカーを履いている。思い返せば数年前。営業研修で外回りをする時、久々にスーツとヒールで回った。辛うじてちゃんとせねばという気持ちがあったからだ。ところが夕方になって慣れないヒールに足がやられて一歩も歩けなくなった。帰り道さえ危うく裸足で帰ろうかと思った。意を決して一緒に回っていた先輩に「ずびばぜん…足が痛くて歩げまぜん…」と告白したところ「マジ?足何センチ?ちょっと待ってて!」と韋駄天のように走り去っていった。しばらく道端でとうもろこしを持ったメイちゃんのように座り込んでいたところ、「ズックこうてきたで!」と世界一美しい関西弁が聞こえてきた。先輩がホームセンターで1000円のズックを買ってきてくれたのだ。あなたは神か、神の化身か。「あああありがとうございます〜!」と声にならない声をあげてズックを履くとシンデレラの靴のようにスッと収まり、雲の上を歩くように軽やかに帰ることができた。それ以来ヒールが怖くて履かなくなっていた。ペタンコパンプスを履いていたこともあったが、今やそれも辛くなってきてスニーカー一色だ。
足は大事だ。そして即座にズックを探しに走ってくれた先輩の心を忘れまいと明日もスニーカーを履く。

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