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【質の高いケアを実現】認知症ケア研修:基礎知識、実践、家族連携、倫理まで網羅(全5章)⑤
第5章「倫理的視点を深める~利用者の権利と意思決定支援」
はじめに
第1章から第4章を通して、認知症に関する基礎知識、コミュニケーション、介護技術、そして家族との連携について学んできました。最終章となるこの第5章では、ケアの根幹を支える倫理的な視点について、より深く掘り下げていきます。
認知症が進行すると、判断能力が低下し、ご自身の意思を表明することが難しくなることがあります。しかし、どのような状態であっても、利用者一人ひとりは、かけがえのない個人であり、様々な権利を有しています。私たち介護者は、倫理的な視点をもって、利用者の権利を擁護し、その人らしい生き方を尊重するための意思決定を支援する重要な役割を担っています。
この章では、認知症ケアにおける重要な倫理原則、意思決定支援の具体的な方法、倫理的なジレンマに直面した際の考え方、そして私たち介護者が倫理的感受性を高めるためにできることについて、具体的な事例を交えながら解説していきます。
共に学び、倫理的な視点を深く理解することで、利用者様の尊厳を守り、より質の高い、人間味あふれるケアを提供できるよう、共に歩んでいきましょう。
1.認知症ケアにおける倫理原則:尊重すべき価値観
認知症ケアにおいては、様々な倫理原則が重要となります。これらの原則を理解し、日々のケアに適用することで、利用者様の権利を守り、最善の利益を追求することができます。
(1) 尊重と尊厳の原則
個人の尊重: 認知症になっても、その人らしさは決して失われることはありません。年齢、性別、人種、宗教、社会的地位、価値観など、個人の多様性を尊重し、画一的なケアにならないように心がけましょう。
人間としての尊厳: どのような状態であっても、人間としての尊厳は守られるべきです。プライバシーへの配慮、虐待の防止、不当な差別や扱いの禁止など、尊厳を傷つける行為は絶対にあってはなりません。
(2) 自律尊重の原則
自己決定の尊重: 可能な限り、利用者自身が自分のことを決定する権利を尊重します。食事の内容、着る服、日中の過ごし方など、小さなことからでも、本人の意思を確認し、尊重するように努めましょう。
インフォームド・コンセント: 医療行為やケアの内容について、分かりやすく説明し、本人が理解した上で同意を得ることが原則です。判断能力が低下している場合は、成年後見人やご家族など、代諾者への説明と同意が必要になります。
(3) 善行の原則と無危害の原則
善行: 利用者のために最善を尽くす義務です。身体的な安全確保、精神的な安定、QOL(生活の質)の向上など、利用者の利益になるように行動します。
無危害: 利用者に危害を加えない義務です。身体的な虐待はもちろんのこと、精神的な苦痛を与えるような言動、不必要な身体拘束なども避けるべきです。
(4) 公正の原則
公平性: すべての人に対して、公平で平等なケアを提供します。経済状況や社会的背景などで、ケアの質に差が生じることがないように配慮しましょう。
正義: 社会的な弱者である認知症の方々の権利擁護に努め、社会的な公正を実現するよう働きかけます。
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