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①主役カード徹底解剖【逆さ魔女】

 遊戯王ラッシュデュエルのオリジナルデッキ「逆さ魔女」のデッキ紹介になります。

 デッキ紹介の記事は、

前編:「主役カード徹底解剖」=デッキの主役の魅力と考察から、コンセプトの決定までを見ていきます。

後編:「デッキ紹介」=完成したデッキのレシピ、採用理由、プレイングなど、より具体的な内容を紹介します。

の二部構成としており、今回は前編:「主役カード徹底解剖」になります。

 また2部構成とした想いについて、「はじめに」に書きました。こちらも目を通していただけると、より楽しんで頂けるものと考えております。

 前置きが長くなりましたが、本編に入ります。


◆主役カードの魅力と考察

デッキの主役①:スパークハーツ・ガール

レベル3/ 炎属性/ 魔法使い族/ ATK800/ DEF1200
【条件】手札のモンスター(レベル4以下)1体を墓地へ送って発動できる。
【効果】相手フィールドの表側表示モンスター1体を選び、その攻撃力をターン終了時まで500ダウンする。その後、自分の墓地の「火の粉」「火の粉のカーテン」をそれぞれ1枚まで選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。

 ラッシュデュエルの黎明期、基本パック第三弾「幻撃のミラージュインパクト!!」にて登場した炎属性・魔法使い族のモンスターです。遊戯王OCGでも最初期のカード「火の粉」をモチーフにデザインされたカードで、効果もそれに準ずるものとなっています。OCGでは、使い道の無い「弱い」カードの代表格であった火の粉をサポートし、存在価値を見出すという点で、初登場時は注目を集めたカードでした。

 ただ、結局のところ、火の粉自体の弱さが変わるわけではなく、当時でもこのカードを使うのに、火の粉は入れずに「火の粉のカーテン」のみを採用する構築もありました。そんな中、火の粉入りの構築に活路を見出したのが、獣翼剛王セイスというカードでした。この当時の方向性を再現し、現代のカードプールで戦えるようリメイクできないかとチャレンジしたのが、今回のデッキになります。

■当時のおさらい「1枚を2枚にできる効果」

 まずおさらいとして、スパークハーツガールでサーチできる2枚と、獣翼剛王セイスのカードを見ていきます。

 スパークハーツガールで「火の粉」を使う最大のメリットは、やはり手札1枚を捨て2枚をセットするという数的なアドバンテージだと思います。ただ、これは手札に回収できるわけではない為、手札コストにする使い方はできません。そこでフィールドに伏せて、何か意味のあるカードと考えた時に候補に挙がるのが、獣翼剛王セイスです。

 このカードは、自分の場の魔法・罠カードをコストに、相手モンスターの攻撃力を下げる効果を持ちます。下げ幅はコストにしたカードの枚数×1000で、最大3000まで下げることが可能です。通常であれば相当重たい効果ですが、スパークハーツガールで回収したカードをコストにすることで、負担を軽減して使うことができます。

 また、コストの重さに加え厄介なのが、セイスの発動条件で、[相手フィールドの表側表示モンスターの数]と[自分フィールドの魔法・罠カードの数]を同じに揃える必要があります。この点も火の粉の「発動にタイミングを選ばない効果の性質」が相性が良く、既に場に伏せてしまっていて数が合わない場合にも、単に発動するだけで手軽に相手と同じ枚数に場を調整することが可能です。

 このように今の感覚で強いかはともかくとして、スパークハーツ・ガールとセイスの相性の良さ自体はわかるかと思います。当時は青眼の白龍の攻撃力3000が大きな壁となっていた環境でした。多少重さはあっても、これを倒せるというだけで一定の価値があったのです。また、ここにビースト・サモナーでセイスのリリースを軽減し、魔法使い族をベースにデッキを固めることで、一つのデッキとして十分に戦うことができました。

■フュージョン採用の是非について

 このスパークハーツ・ガールのギミックはそのままに、デッキをアップデートしようと考えた時に、まず気になるのが専用サポートの「ウィスパーク・F・ガール」の存在です。結論から言うと、今回はこのカードは採用せずに、デッキを仕上げることになりました。ただし、それが正解というわけではなく、別軸を採用した理由にも関わる為、このカードの長所・短所について気づいた点を書きたいと思います。

 このカードの召喚に必要な「フュージョン」のカードは、墓地からの回収・再利用の方法が多く、コストとしても優秀な面を持ちます。一方で、フュージョン素材が揃う前に回収し場に出してしまった場合や、直接伏せる形で回収をした場合など、いつまでも発動ができずに魔法・罠ゾーンを圧迫するカードになってしまう欠点も存在します。これをセイスのコストにすることで、自発的に場をリセットできるメリットがあります。

 また、フュージョン素材となる「ささやきの妖精」は、かつてダーク・リベレイション警戒を主目的に、広く採用されたカードです。環境の変化で、今ではあまり見かけるカードではありませんが、火の粉のカーテンの発動条件である魔法使い族という点でも相性が良く、相手の攻めのテンポを遅らせる汎用性のある効果なので無理なく採用が出来そうです。

 最後に、これらフュージョン素材とセイスの共通の弱点として、攻撃力の低さ、特に返しのターンを耐える防御の弱さが挙げられます。ウィスパーク・F・ガールの攻撃力は、2200と単体ではやや不安があるものの、自身及びスパークハーツ・ガールのデバフ効果との組み合わせで、このデッキでは貴重な火力となり得ます。また火の粉のカーテン込みで、返しのターン、最上級モンスターの基準値=攻撃力2500を返り討ちにできるのも評価でき、弱点補完の意味でも相性はよさそうです。

■火力をなにで解決するか

 このように、相性自体は良いウィスパーク・F・ガールですが、このギミックを加えたことで自分が感じたのは、フュージョンによる火力の上昇よりも、打点不足の素材による、総合的なパワーの低下の方でした。この時点で、さらに別のフュージョンモンスターを組み込み火力を高める選択肢もあったのですが、当初からセイス及びスパークハーツ・ガールの「攻撃力よりも守備力が高いステータス」が気になっていた為、まずはこれを活かせる「右手に盾を左手に剣を」の可能性から考えてみることにしました。

 少し調べてみると、関連カードのギミックを含め、「右手に盾を左手に剣を」はこのデッキと非常に相性が良さそうなことがわかりました。しかし、そうなると問題になるのが、フュージョンギミックと「右手に盾を左手に剣を」のギミックはどちらも重く、単体では機能しないカードが多いという点です。ドローやデッキを回すカードを増やし、共存の道を探ったものの、今回は二つのギミックの合わせは不可能であると判断しました。結果的に、フュージョンは不採用、「右手に盾を左手に剣を」とその関連カードを中心に据えたデッキづくりになっています。

デッキの主役②:右手に盾を左手に剣を

通常魔法 / LEGEND
【条件】なし
【効果】お互いのフィールドの全ての表側表示モンスターの元々の攻撃力・守備力を、ターン終了時まで入れ替える。

■一発限りの大技ではない戦術

 昔からの遊戯王プレイヤーにはなじみ深いカードで、ラッシュデュエルにもほぼ変わりない効果で存在しています。ただし、こちらではデッキに一枚しか入れられない関係で、初登場時は、守備力の高いモンスターもいるデッキで運良く引けた場合の大技という側面が強かったように思えます。決まれば強いものの、これ1枚を軸とし、守備力が高いモンスターでデッキを固めることは、メリットよりデメリットが勝るのが実際のところでした。

 またこれを軸とした場合に特につらいのが、攻撃したあとの返しのターンで、低攻撃力のモンスターが攻撃表示のまま残ってしまうことです。ただ、この点を補うカードとして後に、罠カード版の「右手に盾を左手に剣を」ともいえる「左手に剣を右手に盾を」が登場しました。

 相手の攻撃にカウンターして攻守を反転する効果で、返しのターンをケアしつつ、墓地の「右手に盾を左手に剣を」を手札に加えることで、守ったモンスターは、次のターンそのまま攻撃に転じることができます。

 さらに、これらをサポートするカードに「右手の盾」「左手の剣」があります。

 「右手の盾」は、デッキの根幹となる「右手に盾を左手に剣を」「左手に剣を右手に盾を」を合計2枚まで選んで墓地から自分の魔法&罠ゾーンにセットできるカード。「左手の剣」は、その「右手の盾」を墓地から手札に加えるカードで、回収効果の使用回数をさらに増やすことができます。

 弱点をケアし、なんども利用可能となることで、攻守の反転は、守備力の高いモンスターを積極的に採用する理由になり、ようやくデッキの軸として現実的になりました。

■コストとしての利点

 このように「右手に盾を左手に剣を」を軸に用いることで、セイスやスパークハーツ・ガールなど、攻撃力よりも守備力の高いモンスターを積極的に採用する理由ができました。ただ、このギミックとの相性の良さはそれだけではありません。特に「右手の盾」の、自分の墓地のカード2枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットする効果は、スパークハーツ・ガールと同レベルの数的アドバンテージで、セイスのコストの準備という面でも、このデッキとよく噛み合っています。

■ドングリよりイチゴ

 ここまでで大枠の動きは決まりましたが、軸が決まったというには、まだ二つ大きな課題が残るように思えます。まず一つ目は、①デッキに一枚しか入れられない「右手に盾を左手に剣を」が戦術の要であるという点です。再利用が可能とはいえ、これに依存しきった場合、ドローできず、墓地にも落とせなければ、それが勝ち負けを決めることにもなりかねません。もう一つは、②「スパークハーツ・ガール」「右手の盾」などのコストを生むカードに対し、コストを使えるカードが現状「セイス」のみと、バランスが悪いことです。

 ①の回答としては、当然ですがドローもしくは墓地肥やしのカードを多めに採用することが必須になります。ただ、そうしたうえで一枚しかないレジェンドカードが序盤に来てくれることに確証は無く、落ちない状況でも戦える方法を見つけることが必要です。ですが、現状で思いつく方法が無いため、ひとまず後回しに、②のコストを使えるカードについて先に考えてみます。こちらに関しては実は、初めからセイスだけだったわけではなく、デッキ作成当初には、「樹海の首領グーリ」というカードの採用も検討していました。

 しかし、低攻撃力ゆえに火力不足で効果も単体で機能しないこと。3枚ものカードをコストに打ち出すドングリのバズーカは、相手の魔法・罠を一枚割るだけという燃費の悪いもので、場のカードをコストに使える有用性はあるものの、どうしたものかとしばらく放置していました。この代案として、今回最終的に採用したのが、「ベリーフレッシュ・ハピネス・ハーベスト」になります。

 大会でも結果を出している有名カードの為、ご存じの方も多いかと思いますが、非常に高い汎用性を持つ強力なカードになります。テーマ名を冠してはいるものの、前半の効果だけを使うには特にテーマは関係なく使用でき、場・手札のカードを2枚までコストに、自身の攻撃力を最大3100まで上昇させることが可能です。

 攻撃力のアップが相手ターン終了時まで続く点も優秀で、防御の観点からも評価ができます。また、コストの内容も、場の「カード(モンスターでもよい)」と「手札」から、枚数は2枚「まで」と、かゆいところによく手が届いています。さらには、フュージョン軸を抜いたとはいえ、単体で機能しないカードがまだ多く、最上級モンスターもいるこのデッキで、事故回避の役割も担ってくれます。そして、単体で機能する効果故、先ほど後回しにしたこのデッキの残りの課題(①)も解決する、まさにラストピースと言える性能に思えます。

 最後に、このデッキならではの強さとしてハピネス・ハーベストの攻撃力は、攻守反転させても下がらないことが挙げられます。「右手に盾を左手に剣を」が反転するのは「元々の攻撃力・守備力」であり、攻撃力を上げる効果で上昇した分は影響を受けない為です。しかもこのカード、攻撃力は100ですが、実は守備力の方が高く500あります。効果で攻撃力を3000上昇させた状態で攻守を反転させた場合、攻撃力は3500となり、通常のデッキの限界値を3100を上回ることも可能です。

 ここで、軸となる動きとデッキの方向性を整理してみます。

軸となる動きとデッキの方向性

 数的アドバンテージを稼げるカード(スパークハーツ・ガール、右手の盾)でコストを準備し、稼いだコストを力に変換するカード(セイス、ハピネスハーベスト)で戦う。守備力の高いカードの割合を増やし、攻守の反転のギミックで火力をサポートしながらビートダウンを行う。

 以上、次回は実際にできたデッキの具体的な内容に触れていきます。

 ここまで読んで頂き、ありがとうございました。スキを頂けると励みになりますので、少しでも楽しんでもらえたら、気軽に押して頂けると嬉しいです。

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