①主役カード徹底解剖【レオン=テレパス】
遊戯王ラッシュデュエルのオリジナルデッキ「レオン=テレパス」のデッキ紹介になります。
デッキ紹介の記事は、
前編:「主役カード徹底解剖」=デッキの主役の魅力と考察から、コンセプトの決定までを見ていきます。
後編:「デッキ紹介」=完成したデッキのレシピ、採用理由、プレイングなど、より具体的な内容を紹介します。
の二部構成としており、今回は前編:「主役カード徹底解剖」になります。
また2部構成とした想いについて、「はじめに」に書きました。こちらも目を通していただけると、より楽しんで頂けるかと思います。
前置きが長くなりましたが、本編に入ります。
◆主役カードの魅力と考察
デッキの主役①:プレデター・ガンレオン
レベル7/ 闇属性/ 爬虫類族/ ATK2500/ DEF600
【条件】自分のLPが1000以下の場合、デッキの上からカード5枚を墓地へ送って発動できる。
【効果】このカードの攻撃力はターン終了時まで、[お互いのLPの差]だけアップする。
環境(ライフ差)に合わせて色(攻撃力)を変える「カメレオン」の性質と、ある意味無限の攻撃力ともいえる「大怪獣」の規格外なパワー。
トリッキーかつ超重量級というイラストの複雑なイメージを、シンプルに落とし込んだテキストが、個人的に好きなカードです。
性能面においても、ライフ差のついた劣勢からでも一転、相手を倒しにいける、フィニッシャーとしてロマンあふれる能力で、一度は使ってみたいと思わせる魅力があります。
ただこのパワーを十分に発揮する為には、①厳しい効果の発動条件を満たすこと、②相手モンスターの攻撃力が重要であることを理解し適切なサポートを行うこと、が必要です。
①については、後ほど話の中で紹介するとして、まずは②について。直感的にわかりにくい部分なので、具体例を用いてみていきます。
■相手モンスターの3パターン
ガンレオンの効果の発動条件は、自分のライフが1000以下の時に発動できるというものでした。そこで、ここでは仮に、自分のライフを1000、相手のライフを4000に固定し、相手の場のモンスターだけが異なる3つのパターンを見ていきます。結構細かい内容も出てきますが、次の話へ進む前置き的な部分ですので、ひとまず、こういう相手の場の時こういう結果になるんだというのを、ざっと見ておいてもらえれば大丈夫です。
Pattern A:
自分の場にガンレオン(攻撃力2500)、相手の場に連撃竜ドラギアス(攻撃力2500)がいる場合。
この状況で、ガンレオンの効果を発動した場合、ライフの差分(4000-1000=3000)が元々の攻撃力に加わり、ガンレオンの攻撃力は2500+3000=5500になります。これで連撃竜ドラギアスに攻撃した場合、5500-2500=3000のダメージとなり、モンスターは倒せますが、
結果:相手のライフは1000残り、一撃では勝負は決まりません。
Pattern B:
自分の場にガンレオン(攻撃力2500)、相手の場にスナイプストーカー(攻撃力1500)がいる場合。
ライフ差は同じなので、効果発動後のガンレオンの攻撃力は先ほどと同様5500。これでガンレオンがスナイプストーカーに攻撃すれば、5500-1500=4000となり、
結果:相手のライフはぴったり0で、勝負は決まります。
Pattern C:
自分の場にガンレオン(攻撃力2500)、相手の場に天終の怪依(攻撃力1200)がいる場合。
攻撃力5500-1200=4300であるから、
結果:相手のライフは0になり、勝負は決まります。
ここでは仮に、相手のライフを4000に固定しましたが、モンスターを倒せる状況で、相手のライフが1000より高ければ、上記どのパターンにおいても、攻撃を受けた後のライフの値、つまりデュエルの勝敗は同じ結果になります。
また、自分のライフに関しては、実際には、1000よりさらに少ない場合があり、相手フィールドのモンスターの攻撃力2499までが、ガンレオンが単体の攻撃でライフを削り切れる最大値となります。ただ、これはあくまで上振れであり、現時点では最低限の数値を基準に考えておきます。
■ガンレオンの効果の弱点と本質
さて、ここまで相手フィールドのモンスターの攻撃力によるダメージの違いを3つ見てきましたが、なぜこのようなことを気にするのかというと、このことが、ガンレオンの効果の本質の理解と、致命的な弱点に大きく関係するからです。
自分が初めてガンレオンの効果を見た時、劣勢から攻撃力を爆発的に上げ、相手の強力なモンスターを倒して一発逆転を狙うイメージがありました。この記事を読んで頂いている方の中にも、同じようなイメージを持たれた方はいるのではないかと思います。ただ、この認識には一つ大きな落とし穴があります。
まず劣勢で大きく攻撃力を上げられるのは事実です。そして強力なモンスターを倒せるというのも間違いではないのですが、ここに注意すべき点があります。確かにライフ差があれば、相当な高打点のモンスターも倒すことはできます。ただ高打点のモンスターを倒せるほど攻撃力を上げられたということは、ライフ差がそれなりにあるということで、勝つためにはそれだけ大きなダメージを与える必要があります。しかし、相手のモンスターが高打点であるほどに、ガンレオンとの攻撃力の差は必然的に小さくなり、与えられるダメージ量も小さくなるという矛盾が生じます。
つまり、ガンレオンの効果を、強力なモンスターを倒す目的で使うと、そのモンスターは倒せても、結局ライフ差を縮める事ができずに、そのままターンが返ってしまう可能性が高くなります。そして、相手にターンが返ったとすれば、残された自分のライフは1000以下なので、ほとんどそのまま負けが決まってしまう。これがガンレオンの効果の弱点になります。そして、だからこそガンレオンの効果は、「強力なモンスターを倒す」ではなく、「ライフ差に関わらず勝負を決められる」ということを本質に読む必要があるし、発動させる以上、そのターンで確実に勝ち切ることを考えておかなければいけません。
そのために、相手場のモンスターの攻撃力がいくつであれば、そのターン中に勝負を決められるか、これをガンレオン単体に言い換えれば一撃で勝負を決められるかを理解しておく必要があり、攻撃力の3パターンは、そのために、はじめに検証したものでした。
■「ライフ差によらず勝負を決められる」効果として書き換える
ここまで見てきて内容をまとめると、まずガンレオンの効果は、ライフ差に関わらず勝負を決められることにその本質があること。そして、一撃で相手を倒す為には、効果発動の最低条件で考えて、相手フィールドに攻撃力1500以下のモンスターが必要なことがわかりました。これらの視点で、ガンレオンの効果を今一度捉えなおしてみると、次のような一文に書き換えが行えます。
「攻撃力1500以下の攻撃表示のモンスター1体が相手の場にいれば、相手のライフが8000であっても、10000であっても、一撃で勝負を決めることができる」
こうすることで、なんとなく破壊力はありそうだけど、いまいち輪郭の見えづらかったガンレオンの効果がどのようなものか、少しわかりやすくなったのではないかと思います。
また、このように整理し、そのターン中に勝ち切るというポイントに焦点を当てることで、ガンレオンに必要なサポートの方向性も見えてきました。この意味で、エージェント・テレパス(以下テレパス)をそのサポートに用いることを思いついたのが、このデッキ制作のスタート地点になります。
デッキの主役②:エージェント・テレパス
レベル4/ 光属性/ サイキック族/ ATK1000/ DEF800
【条件】自分のLPが相手より1000以上少ない場合、自分の墓地のモンスター(サイキック族)1体をデッキに戻して発動できる。
【効果】このターン、このカードは直接攻撃できる。
■手札一枚で出来るサポート
ガンレオンは最上級モンスターであることから、普通に考えれば、召喚に自身を含め、3枚の手札を消費します。そこにライフを1000以下に調整するカードを最低1枚使うとして、使える残りの手札は、5枚のうち、あと1枚しか残っていません。この1枚でガンレオンをサポートする方法を考える中で、テレパスを使うアイディアが出てきました。
実際には、相手の場に応じて、罠の除去にさらに手札を使ったり、それに伴い召喚のコストを軽減する方法も織り交ぜる為この限りではありませんが、いずれにしても少ない手札で動く必要があることには変わりなく、他のサポートの無い状況で、1枚で最低限のサポートが完結するという意味でも、使いやすく感じます。
また、テレパスの効果の発動条件は、ガンレオンの効果の発動条件と重なる部分があり、このデッキであれば自然に満たすことができます。ガンレオンの効果を発動→テレパスで直接攻撃→ガンレオンで攻撃表示のモンスターに攻撃の順序で進めた場合、先ほど検証し、ゲームを決めることができなかった連撃竜ドラギアス(攻撃力2500)がフィールドにいる状況でもライフを削りきることが可能になります。
攻撃力2500は、ラッシュデュエルにおける一般的な最上級モンスターの基準値です。デュエル中、頻繁に見かける盤面であるため、これに対応できれるとすれば、効果の実用性が一気に上がります。
この状況を整理し、ガンレオン1体の効果として書き直せば、「自分のライフが1000の場合、攻撃力2500以下の攻撃表示のモンスター1体が相手の場にいれば、相手のライフが8000であっても、10000であっても、一撃で勝負を決めることができる」と表すことができます。この意味で、ガンレオンとテレパスは2枚で完成する1体のモンスターであり、これがサムネイルに書いた一心同体の理由です。
■直接攻撃である意味
また、ガンレオンで勝ち切る為のサポートに「除去」や「打点の上昇」ではなく、「直接攻撃」という方法を用いるのには、壁がある場合の貫通力の高さとコストの軽さがあります。
例えば、相手の場に攻撃力2500が1体、他に守備表示モンスターが2体いたとします。このような状況でガンレオンを出した場合、1枚の手札を単体除去に使ったところでライフは削り切れません。あるいは攻撃力を上昇・下降させるにしても、カード一枚で1000以上操作できるカードは限られ、しかも重いコストが必要な場合も多いです。この点、テレパスであれば、手札から召喚しガンレオンの隣に並べるだけで、こうした状況も解決できる手軽さがあります。
■条件を整えるサイキック族という種族
加えて、テレパスはサイキック族という点もポイントになります。この種族には自らライフを減らすことで効果を発動するカードが多くあり、ガンレオンの発動条件と、非常にかみ合っています。ライフを減らして発動するサイキック族の汎用カード「ロマン・スピック」には墓地のサイキック族を回収する効果があります。テレパスを通常のドローで引くことができなくとも、墓地においておけば必要なタイミングで回収できると考えると、素引きの必要があり、回収も難しい魔法カードを使うより安定します。
そして、ここまでを整理すると、軸となる動きとデッキの方向性が見えてきます。
軸となる動きとデッキの方向性
サイキック族を中心に、自らのライフを調整して戦いつつ、ガンレオンの発動条件を準備し、テレパスのサポートで一撃で勝負を決める。
おまけ(ラッシュデュエルの直接攻撃を考える)
最後にエージェント・テレパスというカードには個人的な思い入れがあります。ラッシュデュエルがリリースされた当初、ゲーム性を理解する途中で、直接攻撃というシステムはルールの穴になっているのではないかと思い、デッキを作ろうと考えたことがありました。
直接攻撃できるカードを毎ターン3体並べ、攻撃し続ける。直接攻撃できるモンスターは、放っておくことはできないので倒されるけれど、ラッシュデュエルでは5枚ドローできるので、次の弾が確保できます。一方、相手は場がはけずに詰まる為、ドローが行えず、その結果、こちらのダメージ速度が上回り、先にライフを削り切ることができるのではないかと考えたのです。
ただこの時、テレパスの「自分のLPが相手より1000以上少ない場合」という発動の条件が絶妙で、どうにも形にすることができませんでした。制作者側の調整がきちんとされており、掌の上で悔しい想いをした経験が蘇ります。数年越しにこの直接攻撃というシステムの活かし方に一つたどり着いたという想いも、デッキを作る大きな原動力になりました。
以上、次回はコンセプトを軽く復習したうえで、実際にできたデッキの具体的な内容に触れていきます。