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宝塚花組「エンジェリック・ライ」観劇録

注意: いつものことですが、数行後には心置きなくネタバレしておりますので、これから観劇される方でストーリーを楽しみにされている方にはオススメできない内容です。観劇後のお越しをお待ちしております。

天使アザゼル(永久輝せあさん)とエレナ(星空美咲さん)を対等な関係性として描いてたのはよかった。最近の宝塚は多いのかな?うれしい。

改ざんを扱ったのもいいよね。天使たちが「天界戸籍台帳」に人間のよい行いも悪い行いも全部書き残しているという話もいい(要は閻魔帳よね)。
でも、天使のなかには、自分に不都合な記述を上書きしていた天使がいた(改ざん)。森友学園を思い出させるよね。公文書改ざん。故安倍晋三と昭恵夫人、佐川宣寿(2016年当時 財務省理財局長)たちがやってたなぁと。
事実と違うことを書き残したら、多くの人を巻き込んで大変なことになるという流れはすごくいいな。
(意に反して改ざんをさせられた赤木俊夫さんは命を絶っているので現実は演劇よりももっと悲惨だ)
忘れないようにするの大事だから、大衆演劇に盛り込むのすごくいいと思う。

ここからはわたしが謎だと思っているところ。
たぶんわたしが見逃したり聞き逃してしまっているだけなんだけど、今週2回目の観劇を予定しているので、逃さずにキャッチせねば。

謎1
結局、なりすましの犯行予告は誰によるもの?エンゼルシーフを誘(おび)きだしたい警察?次回観劇するときに、読み解きのヒントを見逃さないようにしたい。

謎2
悪魔フラウロス(聖乃あすかさん)は何がしたくて、指輪の使い手を操りたかったの?どんな野望があるのーーー?

でも、悪魔だから一般人のわたしには心理が理解できないくらいがちょうどよいのかな?
悪魔の心情は理解できなかったけど、聖乃さんの悪魔の雰囲気はすごく好き。ポージングが身体バランスのよさを活かした感じで、奇妙で得たいのしれなさがでてた。(褒めてる)。

ここからはさらにネタバレし、わたし(フェミニスト)が感じたもやもやを正直に書いてますので、批判的な意見を見るのがしんどい方も回れ右してください。

天使アズラエル(美風舞良さん)が宝石商のフェデリコ(凪七瑠海さん)と恋に落ちて、子どもができたってところ、それはいいんだけど。

天使でも女が妊娠して出産するんや?!ってところに興ざめしてしまった。天使でも男女の生殖や性別の役割は超えられないのか。

男のフェデリコが子どもを宿すという設定だったら、どれだけ面白いだろう。或いは近くの竹が光ってそこを切ったら中からたまのように美しい姫が……でもいいわけで。

そのときに自分が愛したアズラエルが天使であることを知る、とかいいじゃないですか。

(この話では、たぶんフェデリコは最終盤までアズラエルが天使であることを知らずに生きてたっぽい。なんかそれってアズラエルが不誠実だよね)

せっかくの天使の設定が、結局ニンゲンの男女二元論と生殖に回収されるの、もやもやする。

ちなみに、天使と人間の間に子どもができるというストーリーの流れを見て、わたしはギリシャ神話のゼウスを思い出した(そういう人多いんじゃないかな)

ゼウスはギリシャ神話に出てくる全知全能の神で、下半身が恐ろしく!だらしない!!避妊をしないから大量に子どもをつくった。(紀元前15世紀に有効な避妊方法がなかったのかもしれないけど、それにしても理性ってモンはないのかよ、全知全能の神のくせに)

美女がいれば人妻だろうが、軟禁されている王女だろうが構わずに白鳥に化けたり、黄金の雨に化けたりして近づいて誘惑し、子どもつくる。美女と交わるためなら手段を選ばない。
現代医学では「性依存症」の診断がくだりそうな神だと思う(医療職ではないので、勝手な感想です)。
そして、子育てには関わらない。無責任な射精だけ。

白鳥に化けたゼウスと交わったのはレダだ。レダは卵を2個産んでいる。卵1つにつき子どもが2人も入ってたから、合計4人を産んだことになる。
神とニンゲンのハーフ(或いは両方を引き継ぐダブル)誕生である。

わたしはゼウスをダメな神だと思うけど、一旦それは置いといて、このイマジネーションの豊かさ分かります?

話は戻って、天使アズラエルと宝石商フェデリコだけど、たとえばフェデリコが子どもを宿して、どんどん大きくなるお腹に戸惑ったとか、中絶しようか迷ったけどそもそも診てくれるところがあるのか分からなかったとか、誰にも相談できなくて孤立出産した、とかさ。

その間、天使アズラエルはゼウスのように、あっちこっちで男をつくってたとか。道徳的には全っっ然よくないけど、天使のイメージを裏切るし、美風舞良さんのイメージも裏切るし、そういう意外性に満ちてるの面白いと思ってしまうタイプ。予定調和なストーリーは少し飽きてる。
(とはいえ、ゼウスに感じたのと同じイラ立ちをアズラエルにも感じるだろうとは思う)

フェデリコは、エレナ(星空美咲さん)を産んだ後も子育て頑張ったけど、仕事と育児の両立に悩んだとか、男だったからママ友の輪に入りづらくて相談できなかったとか、鉱山利権で対立するマフィアに子どものエレナを狙われて苦労したとか、結果的にエレナをネグレクト気味だったとか、そういうやつほしい。

シンパパ(シングルファザー)の苦労はシンママ(シングルマザー)やワンオペの母親と共通点が多いもの。

子どもを持つ女性も持たない女性も共感するよ。あと職場で男性育休がとりづらい男性の心も掴むと思う。

ジェンダー平等とかポリコレがうるさくて表現の幅が狭められるとか、作品がつまらなくなるとか言う人いるけど、逆だよね。
ジェンダー平等やポリコレを意識したら、これまでの偏見や固定観念にまみれた表現を避けるから、むしろ創造的でクリエイティブなものになるんだよ。

ちなみにわたしは10/8(火)に観劇したのだが、最終盤で天使アズラエル(美風舞良さん)と久しぶりに会ったフェデリコ(凪七瑠海さん)がアズラエルに「元気だったか」と尋ねるところで、わたしの耳がおかしくなければ

天使アズラエルは
「天界で酒池肉林やってた」と言ったのよ。アズラエル、ゼウスの才能あるやろ!

こんな天使に恋したら、フェデリコ悩むわな。凪七瑠海さんならこの複雑な感情を持つフェデリコ像もエフォートレスに演じてくれそうな感じする。

ちなみにわたしは天使アザゼル(永久輝せあさん)の役を深堀りできなかった。それは作品とか役者さんのせいじゃなくて、たぶんわたしの教養が足りないから。
いろんな文学や芸術の深い下地があれば、きっと掘り下げられたんだろうと思う。いたずら好きの天使なんてキューピッド(クピドー)くらいしか思い付かないもん。
次回観劇までに教養は積み重ねられないけど、なんか感じられたらいいな。

あ、アザゼル(永久輝せあさん)の美しさは眼福なので、それはしっかり堪能したよ。

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