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むし歯じゃないのに痛い「かみしめ」

少し前に手作りパンの店でアルバイトをしたときのこと。左上の奥歯3本が一挙に痛くなってきて、そちら側で食べ物をかめないだけでなく、夜寝るときも口の中が落ち着かず、寝付きが悪くなったり、奥歯同士が当たってズーンときては夜中に目が覚めたりした。

原因は奥歯を強くかみしめるクセにあった。歯痛といえば、まずむし歯を思い起こすが、私のむし歯はすべて治療済み。ラッキーなことに子どもの頃からむし歯の痛みで泣いた経験もない。しかし、奥歯のかみしめグセは昔からあった。特に吐き出せない怒りがおなかの中にたまったり、緊張がほぐれなかったりしたとき、日中はかみしめが、夜間は歯ぎしりが出た。
これらが私のストレス過多ですよサインというわけだ。

かみしめや歯ぎしりを長期間続けると、歯がすり減ったり、歯ぐきが下がって歯が長く見えるようになる見た目の問題が出やすい。でも、若い頃は歯痛になったりしなかったし、気づくと自然とおさまっていたから、ストレス発散手段として機能しているのだろうと考え、気にしていなかった。

年を取ると違う。長年の悪癖による影響が蓄積していたのだろう。自分のかみしめる力を奥歯が受け止めきれず、悲鳴をあげるようになってしまったのだ。健康な奥歯なら加齢の影響を受けにくいかもしれないが、私の奥歯は3本のうち2本がむし歯治療で根の一部を取っていた。これが弱さを露呈した原因だと思う。

対策としては、奥歯同士がぶつかるときクッションになるシリコン製のマウスピースを歯医者さんで作ってもらうこと。しかし、私のバイトは直前にならないと予定が出ないシフト制だった。加えて、新人のうちからそうそう自分の都合で休んだりするのはどうか・・・というわけで、市販のマウスピースをネット通販で買ってみた。

安価な輸入物などいろいろあって、選び放題に見えたが、これは失敗だった。届いた商品は私の歯列サイズに合わなかったのだ。無理やりはめようとすると、口がちゃんと閉じない。これでは使えない。

結局、痛みが強いときは市販の鎮痛剤をのんで時間かせぎをした。同時に、寝る前に軽い体操をしたり、ゆっくり入浴したりしてリラックスを心がけた。そしたら、自然と良くなった。よかった、ほんとにホッとした。

一時は、歯と歯がぶつかるのが怖くて、口を開けたままにしていたことさえあるのだ。それがかえってよくなかったのか、今まで経験したことのない電流が走るような一撃がほほにビリッときて、だ液がどっとあふれ、びびった。これは一度だけで、何もせずに治まったけれども、また起きたらどうしようとしばらくの間、どきどきした。

その後、別のバイトにもいくつかチャレンジしたが、歯痛はあれ以来、起きていない。パン屋さんのバイトは59歳の私にとって、よほどきつかったのだ、たぶん。

何しろやることが多かった。たとえば、商品の値段の暗記。店で焼くパンには値段がついていない。だから、全部覚えて、会計時は商品を見ながら値段を思い出し、レジに打ち込んでいく。

その後、商品ひとつずつを素速くトングでつまんで袋に入れるが、きれいにやるのがなかなか難しい。閉店後は、床、陳列棚、棚のガラス戸をぴかぴかに磨く仕事もあった。

私は毎日汗まみれ。帰宅後はすぐシャワーに飛び込み、熱い湯で体を洗ってやっと人心地つく感じだった。半年間、よくやったよナと思う。
痛い思いをして、自分の限界を知った、いい経験・・・だった。

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