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育ちすぎたサボテンの今後を考える

ほとんど何の手入れもせず、窓辺に置いておいただけのサボテンが、大きくなりすぎて困っている。もともとはひとつの丸形サボテンだったのが、いつの間にか子株が増え、大きな束になっている。

数えてみたら50株ほどある。隠れるように生えている小さな株もあり、数えるたびに数が違うので、正確なところはわからない。

出会いはたしかデパートのインテリアコーナーだった。私は引っ越しをしたばかりで、新居の窓辺を飾る植物を探していた。そのサボテンはウメの実ほどの大きさで、ふわふわした綿毛に覆われていた。さわってもちっとも痛くない。
トゲトゲしていないサボテンは初めてで、がぜん興味を引かれた。おちょこサイズの植木鉢にちょこんとのっている姿も可愛らしく、さっそく買って持ち帰った。

以前、おにぎりサイズの丸形サボテンを手に入れたとき、水をやりすぎて内側から腐らせてしまったので、今度のチビには水をほとんどやらなかった。窓辺に飾ってみると、デパートで見たときよりもずっと小さく、存在を忘れがちだったせいもある。同時期に、リビングに飾るべくベンジャミンという観葉植物を買い、こちらに気を取られていたのだ。

ベンジャミンは高さが1メートルくらいで存在感がある。置くだけでリビングにナチュラルな活気が出た。葉の上にほこりがたまりやすいのが難点だったが、葉を1枚ずつふいていくとゴムのように弾力のある表面が現れ、光を反射してキラキラ輝くのだ。

チビのサボテンは私にそんな手間をかけたりもせず、静かに着々と育っていった。「サボテンは賢いから、優しい声がけをしてやると、よく育つんだって」と教えてくれた人がいたが、私は恥ずかしくてできなかった。その必要もなかった。ふと気づくとサボテンは鉢からはみ出さんばかりに大きくなっている。強さを内に秘めていたのだ。

すっかり様変わりし海底のサンゴみたいになったサボテン。右はベンジャミン。

ベンジャミンはすぐに枝葉が生い茂ってしまうので、発育を抑えるべく大きな鉢に植え替えることはしなかったが、サボテンは何度か大きな鉢を新調した。植え替えるたび、根がすごく短いことを不思議に思った。掘らなくても手で持ち上げるだけで鉢から取り出せるほどなのだ。

サボテンとベンジャミンは私とともに2回引っ越しをし、ほぼ18年、一緒にいる。かつて親きょうだいと同居していた期間と同じくらいの長さだと思うと、なんだか感慨深い。

少し前、ちょっとした事件があった。長い間、存在を主張することのなかったサボテンが、初めて白い花を三つつけたのだ。つぼみの期間が長く、花はひらくとあっという間にしぼんでしまったが、とてもきれいだった。
いいものを見た、と思った。

人は誰しも自分の都合のいいように物事を見てしまいがちだ。私はこのとき、サボテンの花が「だいじょうぶ、なんとかなるさ」と励ましてくれているように感じた。もこもこと盛り上がった今のサボテンは「やりたいことをやったもん勝ち」といっているようだ。

最近、増えすぎた子株は「株分け」をすればいいと知った。株ごとに指でつまんでポクポク折って植え替える動画も見たが、これをやるのはなかなか勇気がいる。せっかく群れているのをばらさなくても・・・などと言い訳も浮かんでは消えたりし、迷っているうちに冬が来てしまった。

春になったら株分けにチャレンジするか、それとも、これまでどおり大きな鉢にどんと植え替えてヨシとしちゃうかも。

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難波ノラ/Norah NAMBA
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