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アメリカ政治を理解する鍵:州が連邦政府に授権するシステム

独立性を保持のため、下から上に権限を与える仕組み

今、アメリカの教育問題に関して、「日本よりレベルが低い!?アメリカの教育に、トランプ大統領のMAGAパワーは届くか?❷」というコラムを書きながら、「あ!」と気がついたのは、あまり知られていないアメリカ独自の政治システムについて、別個にまとめた方がいいかなということ。

「あ!」と思ったのは、下記の場所。

この原因は後々探っていくにして、教育庁に対する主な批判は、創設当時から「教育政策の連邦化は、地方の自主権を奪う」というものであり、これはトランプ大統領の演説にも含まれたものでした。

日本の政治システムを念頭において、「教育政策の連邦化は、地方の自主権を奪う」という批判を聞くと、また、「保守派は何か変なことを吠えているのか?」みたいな印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。ところが日本とアメリカの政治システムは、1つ大きな違いがあります。それは・・・

アメリカでは・・・

州が連邦政府に権限を授ける

仕組みになっていること。国と地方の政府の関係について考えたとき、日本では・・・というより、一般的には、国が地方政府に権限を授ける形かと思います。ところが、アメリカでは州が連邦政府に権限を授ける形と、ベクトルが逆なのです。正確には、合衆国憲法の第10修正条項に「合衆国憲法によって連邦政府に授権されている権限、または州によって禁じられている権限を除いて、その他の権限は州および人民に留保される」と明示されています。簡単にいうと、アメリカでは、連邦政府は限定的な権限しか持っていないのです。ワクチン裁判や中絶論争のコラムでも述べた通り、アメリカのさまざまな政策は、各州ごとに委ねられており、連邦政府がこれに介入しようとした際に、憲法違反の判決を出しているのがここ数年のアメリカの最高裁です。

実際、今回、中絶に関する法案に対し、Ballot measures(住民の意思表明みたいなもの、扱いは州によって異なるものの、賛成案そのまま州法になることが多いそう)を行った州もいくつかありました。実際、中絶を認めた1973年判決を覆した2022年の判決でも、”中絶禁止”としたわけでは全くありません。20世紀後半まで”中絶は犯罪”とされていた歴史的事実がある以上、、適正手続条項によって保護される、アメリカの歴史に深く根ざしている権利とはいえないから、1973年が間違っていたと判断したというのが本当のところ。だから、この件は、医療政策に権限がある州での議論に戻したという判決でした。

https://note.com/noraailin/n/nba52e630567b

つまり今回、「中絶規制は違憲」とした理由は・・・:
・憲法は中絶の権利について全く言及されていない。
・適正手続条項によって保護される憲法権利は、アメリカの歴史に深く根ざしている権利でなければならない(20世紀後半まで”中絶は犯罪”とされていたことから、歴史的な裏付けができない)。
アトリ判事は、”中絶は違憲”という言及はしていません中絶は違憲とした1973年判決が誤りであったため、誤った判決は修正すべきであり、この議論は「国民の代表に戻されるべき」という結論を出しています。つまり、各州ごとの判断を尊重するというものです。ここは、アメリカの民主主義を理解する上で、重要な点だと思います。植民地からの独立という歴史を持つアメリカは、大きな政府を求めません。これはワクチン接種の義務化の際にも、ポイントになった点ですが、外交等、一国としての統一見解が求められるもの以外に関し、アメリカでは各州の判断が重視されます。

https://note.com/noraailin/n/n2e634a4d8a0f

では、連邦政府の専属的な権限となっているのは何か?といえば、通貨の発行や外交。ですから、税制や法律、飲酒可能な年齢や、運転のルールまでも、州によって異なります。

このコラムを書いている時にも時折迷うのは、私がアメリカンルールだと思っているものがテキサンルールだったりすることもあるからです。アメリカ人が違う州に移住した際に、現地の文化や習慣が合わないということで、古巣の州に戻ってきた・・ということは割とよく聞く話。それくらい州のオリジナリティがあります。

そもそもなぜ州に強い権限があるのか?といえば、それはアメリカの歴史に関係します。イギリスから独立を果たした時の13州が「独立性を強く保持したい」という強い想いを持っていたからです。州は連邦政府と対等であるとされ、ある意味で権限を「下から上」に与える形式となっています。

大統領選挙の仕組みが独特なのも、あくまでも政治は州単位に代表者を選出するという考えがあり、各州から選出した選挙人によって選ばれた大統領という形をとっているからです。

ーーーここからは選挙の話題になったので、ちょっと余談を。

ちなみに、トランプ大統領は先日の選挙で当選しましたが、正式な大統領になるためには、この後、州ごとに選ばれた選挙人による選挙等の過程を経ることになります。これは形式的なものだとされていますが、その番狂せが期待された(プロセスのどこかで”不正選挙”が認められ、トランプ大統領が就任すること)のが4年前の選挙でした。

そのさらにまた4年前(2016年)は、ヒラリーがトランプ大統領に負けましたが、その時に「総得票数ではヒラリーが勝っていたのに!選挙システムがおかしい!」みたいに騒いでいるリベラル・エリートも少なくありませんでした。外国人の私が言うのも・・・ですが、それがアメリカのユニークな政治システムなんですよ、っと。

そして、今回は総得票数でもトランプ大統領がカマラ・ハリスよりも圧勝していてますし、激戦7州(共和党にも民主党にもなり得る州、下記に出てくる6州とノースカロライナ州)ともトランプ大統領の勝利。そして、ちょっと気になるのが・・・史上最多!と騒がれたバイデン大統領が獲得した総得票数よりも、カマラ・ハリスは800万票(*11月12日くらいに見た数字)くらい少ないといわれています。

あれ?800万人の民主党支持者は何処へ?

Where Did the Millions of Joe Biden Votes Go? 11月7日付けのニューズウイークでは民主党票が2020年よりも1,200万票減ったと言及されていますが、開票作業は11月21日現在も続いており、最終的な得票数はまだ確定されていません。

2020年時に民主党が勝利した州で、2024年に共和党が勝利した州は、アリゾナ、ウィスコンシン、ジョージア、ネバダ、ペンシルバニア、ミシガンの6州。あれ?この6つの州、どこかで聞いたことあるぞっと思ったら・・・

https://koumu.in/articles/210128b

不正選挙が疑われていた州の6州ではないですか!

もちろん、激戦7州のうちの6州ですから、民主党にも共和党にもなり得る州なので、この6州に不正疑惑がかかるというのは、当然と言えば、当然かもしれません。が、史上最多得票数を獲得したバイデンに投票した何百万もの投票者が、初の女性大統領として、民主党員の期待マックスだったといわれているカマラ・ハリスに対して投票しなかったというのは・・・。この4年間が民主党員から見ても完全な失敗であったか、もしくはやっぱりアレ、おじいちゃんがジャンプしたりとか、あったんだよね?と・・・・ね・・・。

ちなみに、2020年時のトランプ大統領の総獲得票数は、2016年より大幅アップで、バイデン大統領に次ぐ史上2番目に最多となっていました。2024年時は、2020年よりもさらに総獲得票数を伸ばしています。

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