見出し画像

視聴ボイコット?アメリカ人の関心が低下しつつあるオリンピック

米国の北京五輪開会式視聴率、前回比43%減と過去最低

私はかなりのオリンピック好きでしたし、式典の演出を担当した映画監督、張芸謀は、好きな作品がいくつもある注目している監督の1人。それを知る夫が「あれ?オリンピック始まったんじゃないの?見ないの?」と、尋ねてきました。「もちろん、見ないよ」というと、最初はびっくりして、そして、理由が想像できたのか、今度はドン引きしていました。

オリンピックのリスク:本当にそんな危険なところに行かせるの??

今回の開会式の視聴率を見て、アメリカには、私のような頑固おやじ?がたくさんいるんだなと、少し嬉しくなりました。

NBCの北京五輪開会式放送、前回比43%減と、視聴者数が過去最低に 
(FOX、2月7日)

ニュースの概要は、以下の通りです。

オリンピック全体の視聴率は年々低下している
2022年北京冬季オリンピックの開会式に向けたNBCの放送は、金曜日に視聴した総視聴者数がわずか1,600万人となり、前回大会から43%減少し、歴史的な低視聴率となった。この数字は、NBCの複数のストリーミングプラットフォームとネットワークを通じたもので、The Wrapによると、この放送が総視聴者数2,830万人に達した2018年平昌冬季大会と比較して、大幅に減少したとのことです。

FOXの上記リンクの抄訳

NBCは1988年からアメリカの独占放送権を持つメディアです。76億5000万ドルを支払い、オリンピックの米国での放送権を2032年まで延長したと言われています。

最低の視聴率の原因

過去のオリンピック視聴率との比較

NBCとしては、この低視聴率を13時間の時差がある東アジアで開催されたためとしていますが、同記事にもある通り、それならば韓国(冬季)で行われたオリンピックよりも低いことが説明できません。

いくつかの数字が出ていますので、次の記事から数字を拾ってみます。

NBCの北京五輪開会式放送、前回比43%減と、視聴者数が過去最低に (FOX、2月7日)
オリンピックはもはやテレビイベントではなく、東京2020はテレビ中継された大会の中で、米国史上最低の視聴率を記録。今後、悪化の一途を辿る可能性、The Guardian、2月4日)*ただし、この記事は在北京記者によるものですので、”在北京”を考慮する必要があるかと思います。
NBCのオリンピック開会式中継、全米でのテレビ視聴者数は約1400万人(ロイター、2月5日)

北京オリンピック開会式:
・NBC総視聴者数は1,600万人(複数のストリーミングプラットフォームとネットワークの合計)
・NBCの中継は、米国のテレビ視聴者が平均で1,400万人(前回冬季大会開会式のテレビ視聴者の約半分)
1,400万人という数字には、米国東部時間金曜日午前6時30分に始まったNBCのライブ放送と、同午後8時に始まったゴールデンタイムの放送のテレビ視聴者が含まれる(2回放送した合計数字)

上記

時差がある東アジア開催が問題か?
・平昌冬季大会開会式の総視聴者数は、2,830万人(FOX)
・平昌冬季大会開会式の視聴者数は、ゴールデンタイムの放送だけで2,790万人(ロイター)。
・平昌平昌冬季大会の平均視聴者数は1,980万人で、冬季大会としては過去最低(The Guardian)。
・北京夏季オリンピックの17日間、アメリカ国民の70%以上(2億1,500万人)が視聴、これは広告主への保証をはるかに上回った(ロイター)。

コロナが問題か?
・東京夏季大会では、米国の視聴者は1,700万人と、前回の夏季オリンピックから36%減(FOX)
・東京夏季大会の開会式では、米国の視聴者数は1,670万人。すべてのプラットフォームでの視聴者数は、1,700万人(ロイター)
・東京夏季大会は、ケーブルテレビとストリーミング配信を加えた平均視聴者数が1,550万人と、テレビ中継されたオリンピックの中で最も少ない視聴者数だった(The Guardian)

パンデミックのために1年延期された東京大会の放送は、NBCが1988年に夏季大会の放送を開始して以来、最小の視聴者数を記録した。しかし、それでも競技の放映時にはテレビで最大の視聴者を集め、広告主にとって魅力的なショーケースとなった(ロイター)。

上記参照

記事によって多少数字が違うのは、視聴率に加えているものが異なる(ストリーミング配信の種類、放送回数)ためであるようです。東京も平昌も決していい数字でないどころか、過去最低記録。オリンピックをテレビで観たいと思う人の数が年々減っているのは事実です。

ロイターによると、テレビ視聴率は近年、ストリーミング視聴を取り入れたことで、減少していることもあり、過去のオリンピックとの単純比較は困難と言います。特に、東京夏季大会では、NBC系列のどこのプラットフォームで何を見ることができるのか?が複雑で、混乱したと言います。
その反省を踏まえ、北京大会では、NBC放送ネットワーク、USAネットワーク、CNBCケーブルネットワーク、NBCOlympics.comウェブサイト、NBCスポーツアプリでの放送に加え、Peacockのプレミアム層で、すべての北京イベントをライブストリーミング配信することになっているそうです。

こういった視聴率減の原因があるにしても、過去の2大会からさらに大幅減になっているのですから、時差やコロナ、オリンピック視聴の魅力減以外の理由は確実にあるのではないでしょうか。

ジェノサイド・オリンピック

この問題の影響はゼロではないと思います。IOCは開催国の変更等、中止、延期以外の選択肢もできたはずです。

中国は新疆ウイグル自治区のウイグル族に対する人権侵害で絶大な批判にさらされている。バイデン政権は12月、中国の "継続的な大量虐殺、人道に対する罪、その他の人権侵害 "を理由に、オリンピックの外交ボイコットを発表した。
他のいくつかの民主主義諸国は、米国と同様に政治的代表団を派遣しないことを表明し、オリンピックの外交的ボイコットを表明している。

FOX

開催国が新疆ウイグル自治区のウイグル人やトルコ系イスラム教徒に対して人権侵害を行い、米国務省が大量虐殺と認定し、さらにチベット人への迫害や香港の自由を抑圧しているとして世界中から非難される中、通常オリンピックに大きく関わる企業スポンサーは、準備期間中は距離を置いてきた。先月、アメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダがこのイベントの外交的ボイコットを発表したことで、こうした地政学的な意味合いはさらに強調されることになった。

The Guardian

抗議を受けた、スポンサー

ジェノサイド・オリンピック批判は、当初、IOCに対して行われていましたが、同時にアメリカではスポンサー企業に対しても抗議活動が行われていました。そのことで、スポンサーがオリンピックの波に乗ろうとすることを難しくしています。

スポンサーがオリンピックと距離を置く:チームUSAの公式スポンサー20社のうち、オリンピックに関連したスポットを放映しているのは2社のみで、いずれもアスリートに焦点を当てたもの(ロイター通信の報道)

The Guardian

抗議を受けたスポンサーはかわいそう?そんなことはありません。公式スポンサーの多くは自称・WOKE(目覚めた企業)であり、人種差別にとても敏感で、積極的に政治活動に参加する企業だからです。

北京五輪スポンサー、P&Gは、”米国・制度的人種差別”を指摘後、ウイグル人虐殺については沈黙を貫く (FOX、2月8日)

P&GもWOKE企業の1つです。FOXの記事による、P&Gが昨年アメリカで行った主な政治キャンペーンには、次の3つがあります。

2021年2月、”Disrupt and Dismantle”キャンペーン:「人種的不平等はアメリカの逃れられない現実であり、体系的人種差別は、挑戦し、立ち向かい、変える必要がある」と、宣言。
2021年3月、”Widen the Screen”キャンペーン:広告やメディアにおける組織的な偏見や不平等に対処
2021年4月、民主党選挙案を指示:共和党主導で数十州で郵便投票や早期対面投票などの制限を制定しようとする動きがある中、”投票する権利を守る”を支持することを確認 

パッと見た目、どのキャンペーンも良い活動のように見えます。ただ、中身をよく見ていると、左派というより極左の政治キャンペーンに特化していることがわかります。一番わかりやすいのが、選挙がらみのことです。民主党が人種差別的政策と騒いでいるのは、IDカードによる本人確認を行うこと。本人確認がなぜ人種差別か?という説明が結構メチャクチャです。

”アフリカ系アフリカ人やヒスパニック系アメリカ人には貧困層も多く、彼らは運転免許証を持っていない。IDカードによる本人確認は、彼らの投票権を奪うことになり人種差別的”ーーこれが民主党のいう”投票する権利を守る”ということです。

IDカードは運転免許証に限定されているわけではありませんし、役所で無料の州民カードのようなものを発行してもらうことも可能です。それに、アメリカではアルコールやタバコの購入時や、病院受診時にもIDカードの提示が必須となっています。左派が大好きなコロナ検査にもIDカードは必要です。IDカードによる本人確認が差別だというなら、選挙法だけでなく、これらの提示に対しても抗議すべきです。

IDカードによる本人確認に反対する緊急会議には、アメリカン航空、ユナイテッド航空、デルタ航空のCEOも参加したようですが、これに対し、「搭乗時のIDカード確認は差別的ではないのか?」と批判の声も。極左の政治キャンペーンは、面白いように、”ダブルスタンダード”がしっかりと含まれているのが特徴です。

これだけ人権問題に敏感で、政治キャンペーンが好きなP&Gであるにも関わらず、世界中が注視する中国の人権問題については、何も発言していない・・・ここでもしっかり”ダブルスタンダード”を発揮。そういう意味では、WOKE企業は、ブレない企業です。

ウォールストリート・ジャーナル紙は、P&Gが例年のようにオリンピックに向けて米国で大規模な広告キャンペーンを展開することを断念したと報じたが、同社は中国で横行する人権侵害についても言及を避けたという。
P&Gの財務責任者であるアンドレ・シュルテン氏は、同社は個々のアスリートに焦点を当て、マーケティングの決定は個々のマーケットリーダーに委ねていると同紙に語った。「すべてのブランドにはそれぞれの背景があり、グローバルなアプローチは存在しないのです。市場ごとに戦術的に、個別に行われます」とシュルテン氏。中国では "顧客 "に焦点が当てられているという。

FOX

スポンサーを下りないことに対する批判を受け、大規模な広告キャンペーンは断念したようですが、中国についてはダンマリを決め込んでいます。

このP&Gの財務責任者のコメントは、とってもリベラル・エリートっぽいなと思います。”学歴が低く、トランプなんかを信じてしまうおバカな保守派の一般庶民”には、専門っぽいことを並べておけば納得すると思い込んでいるのです。直接取材中の話を聞いたわけではありませんので推測になりますが、この流れだと、取材者が尋ねたのは、”アメリカ国内について”で、それに対し、中国でのマーケティングについてそれっぽく返しています。

政治的キャンペーンが大好きなP&Gが中国に対して沈黙するのは、中国からの収益、600万ドルを失いたくないからです。

同社は、利益を損なうことを恐れて、中国に対してなかなか発言しないことで有名だ。例えば、P&Gは2020年に中国から600万ドルの収益を上げているとブルームバーグは報じている。

FOX

もしかしたら、600万ドル以上の”何か”を掴まれているのかもしれません。というのも、記事によると、P&Gは、中共と自らの関係が不利にならないよう、議会やホワイトハウスに働きかけを行っていたからです。

公文書によると、P&Gは米中関係や、北京冬季オリンピックのスポンサー企業との取引を連邦機関に禁ずる「スポンサー説明責任法」に関する問題でも、議会やホワイトハウスに働きかけを行ったという。
フロリダ州選出のマイク・ウォルツ下院議員は、先月、国防権限法に関連修正案を挿入しようとして失敗した際、この法案に積極的に反対した数社の中にP&Gが含まれていたと述べたとポリティコは報じている。
「私たちは、NDAAのマークアップの準備段階で、(オリンピック企業の)スポンサーが舞台裏で明らかにガタガタになっているのを見た。P&G、コカ・コーラ、インテル、NBC、商工会議所のような大企業・組織等、これらのスポンサーの一部は、修正案に動員された」とウォルツは声明で述べた。
7月、P&Gと他のいくつかのオリンピックスポンサーの幹部は、超党派の中国に関する議会・執行委員会の議員から、人間よりも利益を優先しているかどうかについての質問を受けた。P&Gのショーン・マルバニー氏は証言の中で、同社の「人権の尊重と優先へのコミットメント」を確認しましたが、中国政府や大量虐殺の疑惑については触れませんでした。

FOX

”P&Gと他のいくつかのオリンピックスポンサーの幹部は、超党派の中国に関する議会・執行委員会の議員から、人間よりも利益を優先しているかどうかについての質問を受けた”と、あります。法案の成立は阻止されてしまったかもしれませんが、このような批判活動が現在の”スポンサーのしにくさ”につながっているのならば、決してムダではなかったと思います。

開催タイミングの悪さ

多くのカジュアルなスポーツファンは、コロナウイルスによる延期で前回のオリンピックからわずか7ヶ月後に開催されるオリンピックに幻滅し、冬季大会が開催されることすらほとんど意識していない。

The Guardian

これは実際にあると思います。オリンピックの盛り上がりというのは、開催期間だけではなく、後1年、後半年・・・と、選手が自分のピークをオリンピックに調整していくように、見る側のワクワク感もカウントダウンしながら高まっていくものです。スポンサー企業の大規模キャンペーンが行われなかったのであれば、やはり事前の盛り上がりがさらに欠けたのは当然かと思います。

開催国の状況を考えても・・・中共は、コロナ対策が十分にできている体で、オリンピックを開催するために、無理やりコロナ患者を押し込める政策を行う等、更なる人権侵害を行っています。謎のコロナ対策として、大量の輸入食品が廃棄処分になっていく動画もありましたが・・・。数年前から、中国は食物不足が噂されてきた上、昨年各地で起こった水害のため、農作物や家畜はかなりの被害があったはずだと考えられています。そのため、廃棄処分される食物は本当はどこに行ったのでしょうか?という話も出ています。

このような中国の現状の影響があってか、海外のオリンピック選手の中には、選手村の食事が十分なものではないという窮状を訴えている人もいるという話も・・・。偽陽性、または、濃厚接触者として、選手村された連れ出された選手が恐怖を感じる隔離生活を訴える動画も上がっていました。
問題は、これらの話が本当なのか、実際にはもっとひどい状況なのか?選手らが帰国し始めるまではわからないということです。彼らが中国にいる間に、共産党、または中国批判と思われる発言には慎重にならなければなりません。肝心のIOCは、バッハ会長はまたもやスイートにご宿泊ということで、選手村がどうなっているのか?とか、特に気にすることもないのではないかと思います。

開催国としても十分な準備ができた状態ではなかったのではないでしょうか。そのような点からも、今回は延期するか、開催国を変えて行うべきだったのではないかと思います。それをしなかったのは、中国への忖度、放映権を購入したテレビ局への忖度です。

コロナの製造・煽り報道のブーメラン?

報道の質の低下
コロナウイルスへの懸念と中国の厳しい検疫政策により、現地でのリソースが縮小されたことで、報道の質はさらに低下するでしょう。ESPNが北京にレポーターを派遣しないことを決めたのは、平年でもオリンピックを無視する傾向があるので大きな問題にはならなかったが、NBCがすべての競技を遠隔中継し、現地にはスケルトンクルーしか配置しないと発表したのは眉唾であった。
NHL選手派遣の取りやめ
オミクロンの変種が蔓延し、NHLのレギュラーシーズンが蹂躙された先月、リーグと選手組合は北京への選手派遣を取りやめると発表したのだ。スター選手の輩出はともかくとして、この決定は、伝統的なヨーロッパの大国よりもNHLの選手が多く在籍するアメリカとカナダのチームに不釣り合いな影響を与えるだろう。

The Guardianの上記記事の抄訳

人工ウイルスがラボの外に出てしまったのが事故だったのか、意図的なものだったのか? 発生後3年以上もたった今、判明することは不可能かと思われますが、中共が武漢のラボで、ファウチ博士らの支援を受け、機能獲得実験を行っていたことはほぼ否定できなくなってきました。世界中を巻き込んだパンデミック。混乱する欧米に対し、さまざまな疑惑のあるPCR検査やワクチンをばらまくことで、中共は、健康一帯一路を確実に進めています

”オミクロン in ボツワナの3つの謎”から検証する、ワクチン接種とオミクロンの関係。
アフリカのコロナ政策:ワクチン接種率と新規感染者数の関係(2022年1月)

その意味では何らかの思惑は、”成功”したのかもしれません。ただし、そんな中共も、まさか北京オリンピック開催に、ここまでの影響が及ぶとは考えていなかったのではないかと思います。

一方、NBCをはじめとするアメリカのメインストリームメディアは、コロナを必要以上に煽りに煽って、経済やメンタル、社会の繋がりを破壊し、自社のスポンサーや政府、ファウチ博士に忖度し続けてきました。宿敵トランプ大統領も、政権から追い出すことに成功しました(とはいえ、トランプ大統領が政権を去った後、テレビ視聴率は軒並み大幅ダウン。アンチも支持者もトランプ大統領に関心があったことが明らかになりました)。

さらに、今回のオリンピックから、NBCはスーパーボウル(アメフト)とオリンピックの連続放送により、両方のスポットCMを組み合わせたセールスができると張り切っていたようです。

スーパーボウル&オリンピックの日曜日がNBCのスーパーゴールドサンデーに(2022年2月6日)

オリンピックの開会式の低視聴率が明らかになった後の記事ということもあり、不調で始まったオリンピックCMについての詳細は出ていませんが、スーパーボウルは、前回比20%高い水準で広告が決まっているようで、30秒のスポットCMが700万ドルになったケースもあると言います。

来週日曜日に行われるロサンゼルス・ラムズとシンシナティ・ベンガルズの対戦は、スーパーボウルと冬季オリンピックが同時に開催される初めてのケースとなる。(中略)
NBCは広告主に対して、スーパーボウルとオリンピックのスポットを組ませることができるからだ。「セールスやマーケティングの観点からは、まさにホームランだと思います」。
NBCスポーツの広告販売担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、ダン・ロヴィンガーによると、前回2018年のスーパーボウルに比べて料金は20%近く上がっているという。30秒のスポットが700万ドルになったものもある
次の日曜日は、米国東部時間午前8時から4時間のオリンピック中継が始まり、午後12時にスーパーボウルの番組が始まります。(中略)スーパーボウルとオリンピックの間には、ほぼ18時間の連続した放送があることになります。

スーパーボウル&オリンピックの日曜日がNBCのスーパーゴールドサンデーに

オリンピックが盛り上がっていれば、このCMのセールスプランはかなり効果的だったかもしれませんが、前出The Guardianの記事によると、”チームUSAの公式スポンサー20社のうち、オリンピックに関連したスポットを放映しているのは2社のみ”ということですので・・・。

余談ですが、アメリカン・フットボールはアメリカでは単に”フットボール”です。”アメリカン”を付けると、「は?何それ?」と聞き返されますし、相当嫌な顔をされることもあります(”ジャパニーズ・相撲”みたいな感じになるのでしょうか?)。アメフトはそれくらい人気のスポーツです。

さらに、オミクロンを煽りに煽ったこともあってか、”NBCがすべての競技を遠隔中継し、現地にはスケルトンクルーしか配置しないと発表した”とのことですが、臨場感あふれる放送になるのかどうかは、不明なところです。

さらに、この時期のアメリカはアイスホッケー(NHL)が人気ですが、”NHLのレギュラーシーズンが蹂躙された先月、リーグと選手組合は北京への選手派遣を取りやめると発表”しています。このことによる視聴率への影響は必須かと思います。

余談ですが、昨年夏の大会で、アメリカ体操のエース、シモーン・バイルス選手がメンタルの不調を訴え、一部競技を棄権した際、多くのメディアが速報でニュースを流したにもかかわらず、NBCは何もなかったような振る舞いだったと言われています。シモーン選手の金メダル獲得の期待値は高く、確実に高い視聴率が狙えた競技だったからです。メダルのプレッシャーも大きい中、視聴率まで期待されていたとは・・・。

今回のホッケーも、NBCは内心、悔しい思いをしているのではないでしょうか。でも、オミクロンを煽っているのは、NBCをはじめとするメディアなのですから、仕方ないことです。

それでも北京オリンピックは売れるコンテンツ?

最低視聴率について報じられる中、NBC側のポジティブな声を紹介する記事(冬季オリンピックの視聴率はNBCにとって散々なものだった - しかしそれは驚くことではない、Market Watch、2月8日)もありました。

かなり意訳すると・・・。
4年前と比較して、視聴率が落ちたと言っても、ゴールデンタイムのコンテンツとしての北京オリンピックは、我がネットワーク上トップである!だいたい4年前と比較するのがナンセンスだ。アカデミー賞を見てみろ。他の人気番組でさえ、4年前よりも視聴者数が増えているものなんてないのだから。というわけで、4年前のイベントと視聴率比較ではなく、現在放映中のコンテンツの視聴率比較に注目してくれ。北京大会の放送枠でのCM放映は、スポンサーにメリットがあることなんだ。

↓一応、記事の抄訳は下記です。

しかし、数字がネガティブに見えても、NBCのすべてが悲惨なわけではない。ゴールデンタイムの中継は、依然としてネットワークテレビで最も視聴されているイベントであり、4夜とも断トツのトップでした。また、2018年と2022年を比較すると、4年前に人気を博した番組のうち、現在も放送されている番組で視聴者数が多いものはない
また、多くのテレビの視聴率が暴落している例として、アカデミー賞があります。この授賞式の平均視聴者数は2014年に4370万人だったが、4年後には2360万人に落ち込み、昨年はわずか1060万人だった。
NBCは北京大会の17夜すべてでトップネットワークになるはずで、広告主にもメリットがある

Market Watch

さらに、同じイベントとはいえ、4年前と環境が違うのだから、比べても仕方ないという割には、ストリーミングに関しては、2014年のソチ冬季大会の視聴分にまで触れています。・・・それこそ2014年といえば4Gだったとはいえ、今ほどスムーズに視聴できなかったような記憶もありますが。
また、冒頭の開会式の視聴率には、ストリーミング数も加えられた上での数字だったと思うのですが・・・。
ただし、多くのメディアが語っていた数は”ストリーミングした人数”で、下記の記事でNBCが語るのは”ストリーミング時間(分)”と、少し違います。

いずれにしても、テレビに将来が見えないのは、アメリカも同じということです。

テレビの視聴者が減少している一方で、ストリーミングは引き続き大幅な増加を見せています。最初の4日間のストリーミング再生時間は10億分を超え、冬季オリンピックでは史上最速を記録しました。これにより、NBCとPeacockは今週末までに、平昌での合計21億7000万分を上回るペースで推移しています。
オリンピック史上でストリーミング最多記録は、東京大会の44.8億分でした。2014年ロシア・ソチ冬季大会は4億2,000万分でした。

Market Watch

NBCの視聴ボイコットは意味のあることか?

NBCに責任はない?

「マーケティング担当者やファンがテレビ放送を見るとき、彼らは中国や中国の政治的意図を支持しているわけではない」と彼は言った。「彼らは米国の選手を応援しているのです。

Market Watch

これは確かにそうだと思います。政治的な意図というより、今までなんとなく見ていた層が、わざわざ見ようとするほどまでには関心がないということかと思います。ただ、なぜそこまで関心がないのか?といえば、事前のキャンペーンが十分に行えなかったことがあるかと思います。前出記事でも、USAチームのスポンサーのうちオリンピック関連の広告を出しているのは、2社のみで、オリンピックそのものというよりは、アスリートにフォーカスしているとありました。

このことはオリンピック放送の広告枠にも影響が出ています。

月曜日の夜、NBCはリリースで、放送した広告の平均量が他の放送ネットワークと比較して33%少ないにもかかわらず、オリンピック中継は2番目に視聴された番組よりも241%多い視聴回数を記録したと発表しました。

Market Watch

最後の1文は、記事としては、241%も視聴回数が多かったことを強調したいのだと思いますが、むしろ重要なのは広告量が他の番組よりも33%少なかったということです。批判を避けたスポンサーが広告を出しにくくなったことで、忖度メディアに影響が出ているのが数字に現れています。

NBCが北京から放送することを批判する声もあるが、同ネットワークが2032年までの権利について国際オリンピック委員会と77億5000万ドルの契約を結んだ2014年には、開催都市が決まっていなかった。ラザルス氏は、もうひとつの最終候補がカザフスタンのアルマトイだったことを指摘し、この国は独自の人権侵害の記録を持ち、重大な内戦の真っ只中にある国であるとした。

Market Watch

開催都市が決まっていないときに、2032年までの放映権を契約したのだから、北京で放映することを批判されても・・・とNBCは言っていますが、昨年の東京オリンピックを強行した1番の理由は、開催を中止すればIOCがNBC等のメディアに莫大な放映料を返還する必要が出てくるためという話も出ていました。変な時間に決勝戦が行われたり、アメリカのメジャースポーツのシーズンと重ならないような時期に開催したり・・・と、そもそもNBCはIOCに対して、発言権がかなりあるように見受けられます。

NBCは人権問題に敏感なWOKE企業の1つ。ところが、NBCは、フロリダ州のマイク・ウォルツ下院議員による、中共に対する人権侵害批判の広告放送を拒否したようです。この人権侵害問題は、ウォルツ下院議員のみが問題視しているものではなく、アメリカの議会で批判決議が決まったことですので、その分の重みがあります。しかし、人権よりも利益を選んだわけですから、WOKE企業の考える人権は所詮、自社の利益につながる利益なのです。ということは、”中共の人権侵害を軽視することが利益につながらない”と分かれば、態度を変えることもあるのではないでしょうか。

北京・批判した名物キャスターは帰国処分?

NBCがWOKE企業の1つと言っても、全てのキャスターが会社の方針に従っているわけではないかもしれません。NBCの名物スポーツキャスター、マイク・ティリコ氏は、予定されていたゴールデンタイムの18放送枠のうち13枠を残して急遽、米国に戻ってきたようです。その原因として囁かれているのが、彼の北京批判発言。

オリンピック報道の中で、ウイグル族へのジェノサイド問題に言及したほか、開会式の報道でも、新型コロナウイルスの発生国であることや、欧米諸国が人権問題を理由に北京大会を外交的ボイコットしたこと等に触れていたようです。大紀元(エポックタイムズ )によると、ティリコ氏は、「主催国、招待客、IOC、スポンサー、メディア、選手など、今回のオリンピックに関わる全員、すべてのことはこれらの問題に関係している」という持論も展開していたと言います。このコメントはなかなかすごいです。

北京にいる限り、当局に従わなければならないのが独裁国家であり、当局を非難を行う難しさです。帰国処分は軽い方なのかもしれません。

ちなみに、ティリコ氏の批判先に、”選手”が入っていることは・・・私自身は自分の意見がまとまらずにいます。選手に罪はないーーそれはそうだと思います。競技のことしか考えられない・・・それくらいの集中力が求められるのがオリンピックかと思います。

一方、このオリンピック(コロナ対策)のために、家に閉じ込められ、食料品を買いに行くことさえできない人たちがいた(る)ことは事実です。また、選手村の食事が粗末で不十分なものであったとしても、食糧不足が問題になっているであろう中国の中では、それはもしかしたら、中国国民の食事になるものだったものかも・・・と、思うと。”邪魔なものはどけ、必要なものは奪う”というのが共産主義です。

1つ確実なのは、この大会にベストを尽くすつもりで参加した多くの選手にとって、この大会はベストな環境ではないということです。
大会が始まったばかりというのに、いろいろな事件や問題が上がってきていますが、全て想定できたようなことばかりです。それを考えると、選手が・・・というよりも、選手をサポートする各国オリンピック委員会がIOCに働きかけるべきだったのではないかと思います。

何はともあれ・・・。オリンピック会場にいる選手たちがこれ以上のトラブルに巻き込まれることなく、無事であることを祈るばかりです。

いいなと思ったら応援しよう!