徐州・鎖で繋がれた女性を救え!:中国市民・独立系ジャーナリストの調査力と勇気
”鎖で繋がれた女性”は誰?
4転した徐州市の調査報告
江蘇省徐州市鳳県で発見された、8人の子どもの母親とされる、鎖で繋がれた女性の事件を巡って、地元、徐州当局はこれまでに4度、異なる見解を発表してきました。
2人の女性ジャーナリストのレポート、”小花梅を探して”
”8児の母親”と呼ばれる女性は、徐州当局の言う通り、小花梅なのか?それをさぐりに、小花梅の異父姉妹である、2人の女性ジャーナリストが花某英を尋ね、現地まで足を運びます。
小花梅の母はがんですでに鬼籍。徐州市政府合同調査団は2月10日、異父妹と考えられている、花某英の元にやってきて、同省、省、市の公安当局がDNA鑑定を行ったと言います。花某英はいろいろ尋ねられたものの、小花梅が嫁いで行ったというのが彼女が7歳の時で、姉のことをはっきりとは覚えていないと言います。9歳年上の姉は、1979年生まれ。”8児の母親”のビデオをみたものの、よく分からなかったそうです。
小花梅の嫁ぎ方も・・・。これを”嫁ぐ”とは言わないと思うのですが、彼女が覚えているのは、当時、母親が「姉は、(母の)親戚に連れ去られ、その後どこに連れて行かれたかわからない」と言っていたこと。探しても見つからないし、連絡も取れない・・・途方に暮れていたそうです。とにかく、姉を連れ去った、桑某妞という女性を探したがっていたということでした。
小花梅の故郷とされる村は、魯江のほとりにあるリス族の村で、469世帯が暮らしていると言います。小花梅の一家とかなり親しくしていたという木娜は、以前は普通だったのに、宝山(*嫁いだ先)から帰ってきて、精神的な病を患っていたという話を聞いたという。
女性ジャーナリストらは、村にいるさまざまな人に話を聞きます。中には、昔、人身売買で有罪になり、廃墟に住んでいる女性にも。彼女は過去の話には答えてくれないようでした。小花梅の母親も壮絶な人生を送ったようで、最初に結婚した地元の男性が溺死してしまった後、生活のために年上の男性と結婚し、小花梅を産みます。しかし、この男性も亡くなってしまい、合計4人の夫がいたと言います。娘に会いたいと言っては、大量に飲酒していたそうです。
この調査の旅で、女性ジャーナリストらが政府の発表を不審に思ったのには、次のような理由があるそうです。
この村では、人身売買目的の誘拐は頻繁に起こっていた。たくさんいなくなった女性の中から、なぜ徐州当局は、小花梅と特定できたのか?
人身売買業者も、村にはたくさん存在する中、なぜ本件の犯人を特定できたのか?
”8児の母親”とされる女性の動画を見て、彼女が小花梅かどうか、同じリス族が聞いても、同じアクセントで話しているのかわからなかった上、彼女を知る村人が1人として”彼女は小花梅”と、断定できなかったにもかかわらず、徐州当局はなぜ、この女性が小花梅だと断定できたのか?
現地入りした男性ジャーナリストも、小花梅ではないことを確認
さらに、”8児の女性”とされる女性が小花梅ではないということは、別のジャーナリストも現地で確認しています。
ウェブリオにリス族の写真がありました。いわゆる中国人は、漢族です。
雲南省は広大な自然の中、たくさんの少数民族が自らの文化や風習を続けながら生活している・・・と言われています。学校では標準中国語で学ぶものの、普段は民族の言葉で話している・・・・と、20年前には聞いていましたが、現在、どのような政策になっているか、わかりません。素晴らしい景色が広がる場所には違いないようですが、近年は貧困問題の話がよく話題に上がりますし、経済支援と引き換えの、洗脳教育が進んでいるエリアもあるようです。
当局の内部にいると思われる人物からの情報流出?
「”8児の母親”が小花梅ではない」という世論が高まったのには、彼女のものとされる、身分証と、結婚証明証がネット上にアップロードされた大きいようでした。
身分証の写真と、動画の女性は明らかに違う。
身分証に記載された生年月日と、動画の見た目の年齢
顔のつくり
結婚証明証が偽造されたものと思われるいくつかの点を指摘。
個人の登録番号がない
夫婦揃って写真を撮るはずが別々になっている。
顔認識技術が発達した中国で、なぜ、肉眼で見てもわかる”別人”を本人だと行っているのか?
これらのことから、これらの偽装身分証、結婚証明証を作成するにあたって、地元当局が関与があったのでは?ということが問題視されたようです。
ネット民が明かした女性の正体
ところがネット上では、1996年に失踪した四川省の少女李英に似ているとし、楊夢霞さんの正体が李英であることを疑っている人が多数です。(https://www.hk01.com/即時中國/733250/江蘇被鎖八孩母與26年前失蹤四川女孩相似-家屬要求重新驗dna)
ある微博ユーザー(李大成<李英・叔父>の家族を名乗る女性):
・失踪した李英(1984年に生まれ)に似ている。
・四川省南中市の小学校6年生(12歳)だった1996年、に失跡した。
・彼女の父親は娘に会えなくて死んだ。
と、投稿。
同時に、この微博ユーザーは、当時行方不明だった李英さんの家族が投稿した家族捜索のメッセージや写真もアップロードしています。
家族の追跡情報:
・小学校に登校後、放課後も帰らなかった。
・行方不明者の特徴は、一重まぶた、鼻が少しつぶれている、口角に小さなほくろがあること
一部のネットユーザーの反応(李英と”8児の母親”の女性の2枚の写真を比較):
・あまりにも似ている。
・偶然にも2人とも口角にホクロがあり、鼻もほとんど同じだ。
家族の対応:
・李英の母親は、以前、江蘇省の地元警察に連絡して、DNA鑑定を行ったが、自分のDNAが”8児の母親”とされる女性と一致しないと言われた。
・李英さんの叔父・李大成氏が公安部女性・児童人身売買対策室刑事調査局に、李英さんの家族と楊茂霞さんのDNAを再度採取して第三者が照合し、結果を公表するよう申請書を提出した(人身売買に長年関心を寄せてきた元調査ジャーナリストの鄧飛による)
真実を求める人、救助に向かう人
現場である豊県は現在、封鎖されて、誰も入れないようになっているそうです。にもかかわらず、多くのネットユーザーが真相を確かめるために現場を訪れ、警察官に止められたと言います。
ネット上の動画には、覆面をした警察官が「これ以上行くと、逮捕され、刑務所に行くことになるぞ。何様だと思ってるんだ。数百人の警官が見張ってるからな」という場面が映っていたそうです。
別の2人の女性ボランティアは、”8児の母親”と呼ばれる女性がいるとされた病院に訪ねようとしました。しかし、何度も妨げられ、携帯電話まで取り上げられました。 警察署に通報したところ、「けんか腰でトラブルを誘発した」という理由で拘束されてしまったそうです。
大紀元がまとめた、”8児の母親”とされた女性のくらし
・20年以上前に徐州市鳳県の董志民(8児の母親の”夫”とされる男性)の家に拉致され、レイプされて、子どもを産んだ。
・抵抗の結果、歯を抜かれ、舌を切られ、ボロい土間に何年も鎖でつながれ、非人間的な生活を送ることに。
・董志民の家は無一文で何の背景もないが、長年にわたって女性を虐待し、7人の子どもをもうけている。
・”8児の母”の強姦には、地元の村の幹部と環口鎮の党委員会幹部が全員関与している。
・この事件をめぐり、環口鎮幹部の妻とその夫との間で騒ぎがあったことから、”8児の母”が地元の幹部に強姦されたことは常識となっている。
ツイッターの”プラウド・ガール”の投稿:
・”8児の母親”と呼ばれる女性が若い頃、人身売買のリーダーである姚兄弟を通じて董家に売られた。その近親者は徐州公安局のある警察署の副署長であり、彼らの後ろには部級の高官がいる。
ある高齢者の投稿:
ある1つの村だけでも、30人以上の女性が性奴隷の生活に耐えられず、殺されたり、農薬を飲まされたりして死んだ。
このような以上のことから、2月22日付けエポックタイムズ では、公安部から下の公安局、警察署まで、江蘇省はすべて人身売買業者の傘下にあり、人身売買産業チェーンの受益者であると言えると、報じています。
”8児の母親”は、実子が8人ではない可能性が浮上
”鎖で繋がれた、徐州の8児の母親”は誰なのか?ネット上で、さまざまな議論が行われたり、実際に現地に行って確認する人、内部告発だと思われる投稿をする人・・・彼らの情報をまとめると、1つの怖い可能性が浮上してきたと言います。
”8児の母親”は、実際には、8人の子ども全員の母親ではないのではないか?
徐州当局は、DNA鑑定の結果、8人の子どもは、すべて、”8児の母親”とその夫、董志民の子どもであると発表していました。しかし、女性が李英だった場合、最初の子どもの年齢が、誘拐された時期と異なると言います。
また、”8人の父親インフルエンサー”だった董志民は、TikTokで「34歳まで独身で子どもがいないことをバカにされたが、今は8人いる、そいつらにバカやろーと言ってやりたい」というような投稿を過去にしていたようですが、この34歳という年齢も計算が合わないようで、最初の子どもの年齢を考えると、31歳の時の子どもではないか?という指摘があるようです。
そこから囁かれているのが・・・。
”8児の母親”以外にも、董家に買われた女性がいたのではないか?
その女性が身分証にある女性ではないか?
・・・だとすれば、その女性は今どこに?
ここで先ほどの、高齢の女性の投稿、”ある1つの村だけでも、30人以上の女性が性奴隷の生活に耐えられず、殺されたり、農薬を飲まされたりして死んだ”を思い出しました。女性に性的暴行を行なっていたのは、董志民だけでなく、その父親ともう1人いたという投稿もありました。
この点がこれから明らかになっていくのか、それともこのまま検閲強化の中で、この話題自体が消えて言ってしまうのか・・・。
彼女の名は?
中国語メディア、ブログでも、”8児の母親”という表現から、”鎖で繋がれた女性”という表現に変わりつつあります。それは、8人すべてが彼女の子どもではないかもしれないということからでした。彼女は李英だと断定して、”李英”という名前を使ったり、徐州当局の見解である”小花梅”を使う人もいます。
そういうこともあり、今回は「”8児の母親”とされている女性」という表現を使いました。
彼女の名前について、統一されたものはないのですが、この問題について語っている多くの中国の人々は、楊某侠という名前は絶対に使わないと宣言しています。この名前は、人身売買業者が勝手に名付けたものであり、その名前で彼女を呼ぶことは、彼女の尊厳を傷つけることになるというのです。
扱っているテーマがテーマですので、中国人に嫌悪感を抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、それが中国の全てではなく、被害者に心から寄り添い、自らの危険を理解した上で、被害者を助けようとする中国人もたくさんいます。
現地は封鎖され、限界体制です。そもそもコロナのこともあり、州を越えた移動は制限されていたのではないかなと思います。ある中国在住の日本人YouTuberの昨年の投稿によると、在住している市から外に出ると、市内に戻った際に、当局から勤務先に連絡があり、PCR検査を受ける要請がきたそうです。携帯電話をオフにしてGPSが起動しないようにしていても、市内に戻ると必ず連絡が来ることから、市内に張り巡らされた監視カメラによる、顔認識システムが使われているのではないかということでした。
そのような中、現地に向かったり、当局の発表を否定する投稿をするのは、かなり危険なことだと思います。それでも声を上げる中国人がいることは、とても勇敢な人たちがいるということです。このことは、今回ぜひシェアさせていただきたいと思いました。
江蘇省当局の対応と、人々の反応(2月23日時点)
江蘇省当局の対応:火消し報道と第5報の発表
別の記事で見たのですが、それまでこの問題に対し、沈黙し続けていた主要メディアが突然、一斉に報道を始めたと言います。当初、女性が入院しているとされた病院に出かけ、本当に女性が保護されているのか確認に行った支援者がいましたが、女性はその病院にはいないかもしれないという話も上がっていました。今回、一斉報道を始めたのは、”女性は政府の支援を受け、治療を受けています”アピールのためだと考えられます。
第5報で明らかにされたと言う他の項目は下記の通りです。
小花梅は2回の人身売買を経験した(転売された)。
女性は、1977年5月13日生まれで、董武敏とは1998年6月から一緒に暮らしている。
99年に第一子を産んだ後、11年間避妊を続けていたが、避妊措置が失敗し、さらに7人の子供を産んだ。
8人の子どもの生まれは次の通り。
第一子・董某港:1999年7月
第二子:2011年3月
第三子:2012年4月
第四子:2014年11月
第五子:2016年5月
第六子:2017年5月
第七子:2018年11月
第八子:2020年1月
第三子出産後の2012年、精神障害の症状が徐々に悪化し、2022年1月、統合失調症と診断された。
鳳県のトップはすべて処分された。
県党書記から村の幹部まで、事件に関与した17人の結果を発表
県党書記:党籍剥奪、政治解任
県党副書記兼県知事:厳重注意、党職解任、県知事の辞任を命じた。
避妊の件は、第一子と第二子の間が長く開きすぎていることへの言い訳でしょうけれども・・・。女性も男性も、10年経っていれば、どちらかといえば妊娠しにくくなるものだと思うのですが、11年間成功した避妊が、なぜほぼ毎年、7回連続で失敗しているのか、とっても不思議です。この点が”8児の母親”は実子が8人ではない可能性とされた原因なのですが・・・。2012年にすでに精神障害の症状が出ていたにもかかわらず、その後に5人・・・。
同記事には、このCCTV等の報道に対する、中国の一般市民の声も紹介されています。
女性に付き添っている、この”長男”とされている男性は、”彼女が8人の子ども、全て産んだわけではない”とする説が正しければ、董志民の息子というだけで、女性にとっては、単なる男性です。また、ネット情報が正しければ、この男性はとうに20歳を越えていて、女性が本当の母親でないとすれば・・・。見張っているのでしょう。
こんな行動に出ている、”長男”が女性に付き添っているというのは、本当に怖いことです。
中国の人々の反応
江蘇省の調査チームが出した第5報に対して、多くのツィッターは”最初の4報よりも信用できない、さらに欠陥がある”と疑問を呈しています。実は今回の調査は、徐州市のレベルではダメだということで、一つレベルをあげた、江蘇省が調査を行なったという経緯がありました。