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起源説論争の教訓”権威主義こそ疑え”

【これまでの経緯】1年前に科学的根拠のない陰謀論として、徹底的に潰された、コロナの起源を研究所からの漏洩によるものではないか?とした説。「(疑惑のある)中国のラボでは生きたコウモリなんて存在しなかった」「実験室内で新型コロナウイルスと関連するウイルスは培養されておらず、言われているような実験室から流出するようなことは絶対にあり得ない」とし、「ラボの近所にある海鮮市場こそが発生源」とされてきました。研究所漏洩説を唱えようものなら、キャリアや信用を失うくらいの攻撃を受けてしまいそうな、そんな勢いでした。今年初めには、世界保健機関(WHO)主導の国際調査団が当該ラボを視察し、自然発生説を強調しています。
【ここ1月の動き】そんな研究所漏洩説の扱われ方が変わってきたのが、今年5月。それと同時に立場が危うくなってきたのが、コロナの権威として世界中から注目されてきたアメリカのアンソニー・ファウチ博士。6月はじめ、Sky News Australiaが疑惑のラボにコウモリがいる様子を写した映像を公開したことで、自然発生説の根拠とされていたWHO国際調査団の調査書や、同団の調査員を務めた非営利団体「エコヘルス・アライアンス」の代表であるピーター・ダザック博士の発言が真っ赤な嘘だったということが明らかになってしまいました。この辺りの事情は少し複雑なので改めてシェアさせて頂けたらと思います。

研究所漏洩説が正しかったと正式に証明するには、まだもう少し確固たる証拠が必要になるかと思いますが、自然発生説はもはや主張ことができない状況であると思います。なぜこんなことが起こってしまったのか?それについて考えていきたいと思います。

科学者はなぜ信じてしまったのか?

私は超文系です。コロナ関連の情報は、中国情勢をウォッチしている中で、自然と情報が集まっていきました。起源説に関して、そのような関心の持ち方をした者としては、科学者と言われる人たちが「研究所漏洩はあり得ない」という発言こそがあり得ないものでした。とは言え、親しい間柄でも、研究所漏洩説を唱えようものなら、陰謀論者扱いされかねない状況でしたから、モヤモヤした気持ちをリサーチする力に変え、科学者の観察をしてきました。

”人間”を知らない!?科学者

「自然発生説しかあり得ない」とする報道の中で、最も一番驚いたのが、「(疑惑の)研究所は、セーフティレベルが最高のBSL4( バイオ・セーフティレベル4)だから、漏洩なんてあり得ない」という科学者の発言でした。

安全を確保させるためのルールやプロトコールさえあれば、危険が防げるのか?

これは、「刑法があるのだから、罪を犯す人がいるはずがない」というのと同じではないでしょうか。この考え方でいくと、交通事故や院内感染も起きないでしょう。でも、現実には起こっています。

正しいとされることをしようと思っていても、ついウッカリしてしまうのが人間ではないでしょうか?「99%しっかりと管理していたが1%のウッカリで」というのは、どんな事故でもあり得ることです。このBSL4だから大丈夫説を唱えていた科学者に是非伺いたいのは、「あなたは人生で一度もウッカリ体験をしたことがないのですか?」。

話は飛びますが、マルクス主義の失敗の原因は「プランや思想は完璧だった。しかし、マルクスは人間を知らなかった」という説があります。働いても働かなくても同じリターンという世の中で、人は想定通りの行動(ベストを尽くしたり、一生懸命働くこと)を取らなかったというものです。BSL4絶対説の科学者の過ちも、マルクス主義の失敗と同じではないでしょうか。

科学者の方が権威主義!?

1年間の観察で、私の中にある科学者に対する仮説、それは「科学者の方が権威主義に陥りやすいのではないか?」ということです。

「パンデミック政策を決めるのに欠かせないPCR検査の使い方がおかしくないか?」ということを、知人に話したところ、「ちょっとメディカル業界に足突っ込んだからって、自分が科学者になったつもり?」というような批判を受けました。科学の権威、CDCがFDAが決めていることに対して、素人が何を言っているんだか?ということです。「パンデミックになって、医学の知識もない素人がSNSで好き勝手言っているのがうざい」と言っていた医師の友人もいました。

彼らに尋ねたいのは、私を含む科学の素人の発言が間違いだと言うなら、なぜ「〜いう点であなたの主張は間違っている」という指摘をしないのか? なぜ「誰々(権威や専門家)がこう言っている」と言う漠然とした理由しか反対理由を述べないのか?と言うことです。それは科学的な態度と言えるのでしょうか。

先日、アメリカの大手メディアの1つ、FOXの地方局に所属するテキサスのレポーター、アイボリー・ヘッカーが「メディアの中にある検閲」について暴露しました。その中に、主流から外れた治療法を推す医師のインタビューを提案した際の会話録音があったのですが、アシスタント・ニュース・ディレクターは「あなたは、最新のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスンをみてないの?」と一喝。同誌は、最も権威があるとされる医学誌の1つです。それに意義を唱えるなんてというお叱りです。

「現場の医師たちがこの治療法で効果が出ているとするものを、効果がないとした研究論文が出た、だからこそ、メディアとして取り上げ、議論する必要があるのではないか?」それが彼女の主張です。同じような疑問を持っていた人がいたんだなと。救われたような一方で、もしかしたら、黙って耐えてきた同じような立場の人がたくさんいるのではないかという気がしてきました。

権威のある医学雑誌で論文が掲載されるということは、科学者たちにとって、ものすごいことのようです。会社に対する信用を獲得したい時に、「JAMAやランセットでも取り上げておりまして〜」というと、耳を傾けてくれる科学者は多かったような印象があります。さらに、科学がわからない私にとって、このことがとてもツカエタのは、掲載された論文について、これ以上の質問を受けないということでした。一部の科学者にとって重要なのは、何が書かれてあるのか?ではなく、どこに書かれているのか?だからです。(あくまで一部の科学者のことです)

急激な科学の発展と、仕事の細分化が権威を必要とさせる

権威主義的な科学者を少しフォローすると、彼らをそうさせてしまうのは、急激すぎるテクノロジーの発展と仕事の細分化が一因のような気がします。

科学の追究にはお金がかかります。例えば、大規模なゲノム研究の実施を妨げていた要因は、解析にかかるコストでした。技術革新はコストダウンにも貢献します。「1回のゲノム解析に必要な費用は過去15年で30億ドルから1,000ドル以下にまで減少しており、今後5年でさらに10分の1になると予想されています」(World Economic Forum 「ゲノミクス革命:その発展は始まったばかり」より引用)コストダウンに成功すれば、予算的に可能になる研究ができ、成果到達までのスピードを上げることができます。ゲノム解析の技術革新は、予想を上回る速さだったと言います。

このような状況を受け、専門分野がより狭く、より高度になっています。特にアメリカは全般的に仕事の細分化が日本よりも細かくなっています。

事例1:ウェブサイトを作るにあたって、webデザイナーとweb開発者は完全に別の担当者が必要になりますし、アクセス数や商品販売を促進するためのページ遷移は、また別の担当者が必要です。さらに、SEO対策はまた別だと言います。デザイナーは単純に綺麗なデザインができるだけの人、開発者はコードがかけるだけの人。それでもその範囲で高度な技術があるから、食べていけるーーもしかすると、日本の平均相場よりも良い給料かもしれません。
事例2:CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)に、5Gについての社内レクチャーを依頼した時に、「自分は技術の専門家であり、5Gは専門ではない」と断られたことがあります。「5G時代に、例えば、カスタマーサービスがどのように変わるのか?マーケティングはどうあるべきか?それを検討するために知っておくべき、本当に基礎的なことのみで良いのですが」と粘ったものの、そのレベルでも自信がないとのことでした。
事例3:シリコンバレーで活躍するエンジニアが日本がシリコンバレーに勝てない理由の1つとして、日本人エンジニアが多くの言語に手を出しすぎていると指摘していた動画を見たことがあります。確かにアメリカの現在の求人状況を見ると、アメリカの会社で働くならそれは正しいと思います。(もちろん、それが正しいキャリア発展か?幸せな職業人生かと言えば、別の答えもあると思いますが。)

いずれにせよ、急激な科学発展や技術革新に対応するために、アメリカではより狭く、より深くが求められていると言えます。

このような中、「専門外のことで下手なことは言えない」と思っている人がいるのは不思議なことではありません。そのような人にとって、「各分野の専門家が正しいと認めたものしか掲載していません」という雑誌の存在は、とても使い勝手が良いものではないでしょうか? 正解はその雑誌の中にあるから、いちいち考え、判断する必要がないからです。関係のないことへの労力は、極力減らし、関係のある研究のみに集中するーーそれは、自分の中のリソース(考える力と時間)を経営判断に集中させるために、洋服はタートルネックの黒シャツとジーンズに統一した、スティーブ・ジョブスと同じ考えなのかもしれません。(散々批判してしまったので、一応はフォローを。長くなってしまったので、「権威を利用した科学者のプロパガンダ」は別のコラムにします。)


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