日本よりレベルが低い!?アメリカの教育に、トランプ大統領のMAGAパワーは届くか?❶
アメリカの教育が素晴らしいというのは日本のメディア・専門家の幻想
日本4位、アメリカ18位で、1位はシンガポール(PISA)
各国の学力評価についてのベンチマークの1つにPISA(国際学力到達度調査)というものがあります。これは、OECD(経済協力開発機構)が15歳の学生を対象に3年ごとに実施している調査で、数学、読解力、科学の分野から評価します。日本のマスメディアや”教育評論家”が語る教育比較では「日本はダメ、アメリカは素晴らしい!」というのがお決まりですが、現実は、タイトルにもある通り、日本は4位でアメリカは18位。これは実際、日本とアメリカの両方で子育てしている人の多くが「でしょうね〜」と思うものだと思います。マスメディアでいうような教育を想像して、アメリカの小・中・高校に通わすと、”驚き”の連続です。
PISAのスコアの注目点:
アジア諸国・地域(上から、シンガポール、マカオ、台湾、日本、韓国、香港)が 上位 6 位を占めている(中国、インド、ロシアはランキング不参加)。
独自の教育モデルで注目されている北欧諸国は、ICTの導入をはじめ革新的な教育を謳うエストニアがトップで7位、フィンランド(13位)、デンマーク(17位)、スウエーデン(19位)、ラトビア(23位)、リトアニア(30位)、ノルウェー(33位)。
日本以外のG7では、カナダがトップの8位、イギリス(14位)、アメリカ(18位)、ドイツ(24位)、フランス(26位)、イタリア(29位)。
北欧も、日本メディアが絶賛する教育モデルを行っていたかと思いますが、日本が目指すべき教育モデルは、シンガポールの方ではないかと思います。
PISAは数学、読解力、科学の分野から評価したものなので、「クリエイティブな能力は北欧の方がー!」という専門家の人もいるかもしれませんが、数学(と言っても、13歳対象ですので、ほぼ算数の領域かと)と読解力というのは、成人が日常生活を送る上で必ず必要になってくる学力です。もちろん、アメリカは科学や医療等で、最先端技術を誇る国であり、そのレベルでの研究や教育は本当に素晴らしいものだと思います。ただし、その高い水準の教育が広く一般人にまで届くような政策がとられているのか?というと、また別問題。
実際、アメリカの成人の識字率を見てみると・・・
アメリカの成人の識字率:
・約21%が機能的非識字(英語の文書を読んで情報を比較したり推論したりするタスクが難しいレベル)
・約4%が深刻な非識字状態
識字能力の低い層の3分の1程度は、アメリカ以外の生まれ(移民)であるともされています。ということは、残りの3分の2程度の人々は、アメリカで教育を受けた(受ける機会があった)にも関わらず、識字能力が低いということ。クリエイティブな能力も重要ですが、識字能力が低けレバ、就職できる仕事が限られてくるからです。国としては、この層を限りなくゼロに近づけなければ、貧困や薬物、治安の問題の解決はできないのではないでしょうか。
ただ・・・識字能力の低い人が貧困エリアのことだけで、遠い世界のことかといえば、それもまた微妙な感じで。昔の同僚に、会話は問題なくできるのだけど、メールになると、何を言っているのかわからないという人がいました。たいした英語力のない外国人の私がアメリカ生まれ・育ちの彼の英語力についてあれこれ言うのも何なのですが・・・。他支店から同じ出張に来ていたその同僚と仲良くなった後、メールをもらったものの、何のトピックスなのかすらわからず・・・当然、まずは私自身の英語力を疑って幾つかの翻訳アプリを使ったものの、チンプンカンプン。急ぎの仕事だったらまずいと思い、別の同僚に「どうしてもわからない」と解説を頼むと、「僕もわからない」。??? アメリカ人同士で英文がわからないとか何の冗談?って思っていると、「こういうことってたまにあるよ。このメールがわからないのは、この英文のせいだから気にしないでいいよ」っと。そして、「急ぎの仕事のメールだったら?」の問いには、「重要な急ぎの用で、返事が来なければ、電話かけてくるでしょ?」と、実にシンプルなアメリカ人っぽい返事が戻ってきました。その後、同僚からメールや電話がかかってくることはなかったので、このメールが何だったかは永遠にわからないのですが、この出来事がわかならすぎて、その時に、アメリカでの識字率を調べてみたのでした。
セールスだから口頭でのコミュニケーションができたら困らないのかな?と思う反面、機能的識字のところに註釈されていた、”英語の文書を読んで情報を比較したり推論したりするタスクが難しいレベル”というのをみると、やはりこのまま放置して良い問題ではないように思います。一昔前に起こった、サブプライム・ローンの問題でも、機能的識字能力が低い人をターゲットにしたのだろうなという推測はできますし。
PISAランキングの傾向は、アメリカ国内の状況に似ている!?
PISAランキングでは、中南米ではメキシコの50位がトップで、アフリカ諸国はランキングに参加していません。個人的に注目したのがベトナムの34位。名目GDPでは37位のベトナムですがG7で7番目のイタリア(29位)はGDP9位ですので、教育に対する情熱を感じます。・・・というか、このランキングを見ていると、これはアメリカの人種別教育水準と似ているような気がして、平均的な学力テストの高さはアジア系、白人・・・の順です。これは人種によって能力がどうか?というものではなく、教育に対する考え方の違いが反映されているかと思います。
語り出すと長くなってしまうので、一言で言うなら、教育に対する期待値。長年人種により格差を強いられてきた黒人、ヒスパニックの人は、スタート時点が同じでない、教育による競争は、平等ではないと考える傾向にあるようです。学業でもスポーツでも良い教育を受けさせようと思うと、必ずお金が必要になってくるため、これはアメリカでは事実。だから、教育に対する期待値もアジア系に比べれば、低くなるようです。
一方、アジア系では、教育が貧困から救う手段、または、成功した人生を約束するツールになると考える人が多いといえます。アメリカ移民の多くが出身国の文化や習慣の影響を受け継ぐ傾向にありますから、出身国での教育に対する期待値の高さが移民先でも継承されているのがアジア系アメリカ人だと思います。
特に、北米では子どもの教育にかなり厳しく取り組む母親、”タイガーマム”も存在します。一般的には中国系の母親を指すのですが、テキサス州にはベトナム系の移民が多いこともあり、個人的には”タイガーマム”といえば、ベトナム系の教育ママたちの顔が浮かびます。
PISAのランキングで、シンガポールはもちろんのこと、中華系の国や地域、韓国、日本がランキングの上位に来るだろうなというのは、容易く想像がついたのですが、ベトナム34位というのはさすが!と言う気がしました。ベトナム系アメリカ人が教育に熱心なのは、本国でも教育熱心な人が多いということも影響しているのだろうなと。
余談になりますが、タイガーマムはネガティブな意味合いで使われることが多いです。にも関わらず、一度、子ども達に「ママはアジアンなのに、なぜタイガーマムじゃないの?」と、責められたことがあります。「『オラオラ、勉強せんかーい!』『成績下がったら、ゲーム機と携帯、取り上げるゾォ!』こんな感じがいいの?」と聞き返すと、「やっぱりいい」となりました。
アジア系の子どもたちは、ある程度子ども任せにしていても、成績上位であることがほとんどです。ただし、タイガーマムが狙っているのは、オールAなどではなく、首席になれるかどうか?くらいのポジション。首席クラスのアジア系の中では、”首席クラスではないけど、成績上位”というアジア系を「アジア系なのに、成績が悪い」と批判してくることもあるようで・・・。
”アメリカの教育は子どもの自主性を重んじた教育でーー”みたいな話も日本では語られていますが、アジア系アメリカ人コミュニティでは、良い面でも悪い面でも、学業における、アジア式競争過多社会があり、その競争で培われた学力の高さもあります。
同様に白人にとっても、学業における同様のプレッシャー、ーーただし、アジア系よりは少しプレッシャーが少ない”大学卒業が当たり前”というものーーがあるそうです。特に”白人男性で大卒でない層”は、自殺率が最も高い・・・と言われるほど、社会からのプレッシャーがかかるという話も聞いたことがあります。
念のためですが、ヒスパニック、黒人だから成績が悪いということはありません。当然のことながら、成績上位に、ヒスパニックや黒人学生もいます。一番大きいのは、教育に対する各家庭での考え方です。学業が子どもの成功につながると期待する両親であれば、人種関係なく、子どもは学業に熱心に取り組むようになるのではないかと思います。
以上が、データと個人的な体験からまとめた”アメリカの教育の現状”に対する私感です。次回は、教育庁がそもそもどんな機関なのか?ということを、調べたものをまとめてみたいと思います。